豊田中央研究所、実用サイズの太陽電池セルでギ酸をつくりだす「人工光合成」で、7.2%の変換効率を実現 | EnergyShift

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豊田中央研究所、実用サイズの太陽電池セルでギ酸をつくりだす「人工光合成」で、7.2%の変換効率を実現

豊田中央研究所、実用サイズの太陽電池セルでギ酸をつくりだす「人工光合成」で、7.2%の変換効率を実現

EnergyShift編集部
2021年04月22日

トヨタグループの豊田中央研究所は、太陽光発電と二酸化炭素から化学物質をつくることのできる「人工光合成」技術で、太陽光変換効率を従来の4.6%から7.2%にすることに成功した。

人工光合成とは

光合成とは、太陽光のエネルギーを用い、光触媒などで水を酸素と水素に分解する明反応と、生成された水素と二酸化炭素から有価物質(糖など)をつくる暗反応のふたつを指す。

人工光合成はこの自然の光合成の反応を、人工的につくりだすことで、夢の技術とされ、古くからさまざまな研究がおこなわれてきた。

太陽光エネルギーを使って水から酸素や水素を作り出す(変換する)明反応の技術では、主に光触媒の研究が進んでおり、そのメカニズム解明も進んでいる。吸収する太陽光エネルギーも従来の紫外線だけでなく、可視光線までを吸収できるようになりつつある。

エネルギー変換効率で7.2%を達成

今回の研究は、暗反応の研究になる。つまり、水素(水素イオン)と二酸化炭素を、有価物質にする技術だ。

豊田中研の発表によると、太陽光発電のセルを用いて発電した電子を電極に送り、水溶液中の二酸化炭素と電極の層に塗布した人工的に開発した分子触媒とを反応させ、ギ酸をつくる研究を従来よりおこなっていた。

太陽光からのエネルギー変換効率は2015年に1.5cm角の装置で4.6%を達成。今回は、より大きなセルを用いた装置で、高効率化を図り、世界最高の7.2%に達したという。

これまでは電極での反応が高くなりにくく、電極の積層化や電極同士の距離を調整して大型化・高効率に成功したという。

豊田中研は日本経済新聞の取材に「2030年頃には実用化に向けた技術基盤を確立したい」とコメントした。


人工光合成の基本原理(左)と、今回開発した装置(右)

脱炭素へ向け進む人工光合成研究

人工光合成については東芝も二酸化炭素からメタノールを製造する実証実験を2018年からおこなっている。また、二酸化炭素から一酸化炭素へ直接変換するP2Cという技術は人工光合成技術よりも処理速度が450倍速いものも開発している。

NEDOは2020年5月、紫外線領域ではあるが、世界で初めて量子収率(光子の利用効率)約100%の光触媒を開発したと発表。これは水を水素と酸素に分解する粉末状の半導体光触媒だ。

二酸化炭素から有価物質、または燃料を開発する「夢の技術」である人工光合成は、近いうちに夢ではなくなるかもしれない。

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