五洋建設 海洋土木大手、洋上風力開発で脱炭素 -シリーズ・脱炭素企業を分析する(11) | EnergyShift

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五洋建設 海洋土木大手、洋上風力開発で脱炭素 -シリーズ・脱炭素企業を分析する(11)

五洋建設 海洋土木大手、洋上風力開発で脱炭素 -シリーズ・脱炭素企業を分析する(11)

「脱炭素企業分析」シリーズ、第11回は、洋上風力発電の建設にこれから取り組もうとし、海洋事業で強みを発揮している準大手建設会社の五洋建設を分析する。戦前の港湾工事をルーツに持つ同社は、現在は大型SEP船の建造も進めており、今後、洋上風力発電の建設に不可欠な会社になろうとしている。

エナシフTV「脱炭素企業分析」シリーズ

2020年秋に急上昇した五洋建設、現在の株価と業績は?

2021年7月までの半年間だけを見ると、下降傾向だが、これは2020年秋に急上昇した反動だろう。現在の株価も2019年の底値の1.5倍あるので、この辺りの数値で推移していくと思われる。

2018年4月にも一度大きく上昇し、ピークになっているが、昨年秋の上昇はそれを上回った。海洋土木の日本最大手として、将来の洋上風力建設がどのくらい市場で織り込まれているのか、気になるところだ。

受注高と売上高を見てみると、売上高は2019年度5,738億円、2020年度4,710億円で、200億円ほど当初の見込みより低いのだが、これはコロナの影響と思われる。

一方、経常利益だが、こちらは2019年度325億円、2020年度305億円となっている。売上高ほどは下がらなかったということだ。

2021年度予測では、売上高4,910億円、さらに2022年度予測では売上高6,050億円としており、コロナ明けから大きく成長していくことを織り込んでいるようだ。

五洋建設の事業ポートフォリオだが、国内土木、国内建築、海外事業の3つの柱があり、それぞれの売上高が3分の1ずつと考えていい。2021年度に入ってからは、国内土木のみが順調である一方、海外事業は2017年度より低下しており、この辺りが株価を下落させた要因ではないかと思われる。

五洋建設はスエズ運河改修工事も手がける 

1896年、広島県で水野組創設、海軍工事を中心に港湾土木をてがけたのが発祥となる。戦後に入り、1946年には港湾土木の柱として会社復興。1950年には、株式会社水野組として法人化される。

エポックとなる事業としては、1961年に受注したスエズ運河改修工事がある。後に1975年からのスエズ運河増深拡幅工事も行っている。1964年には東証一部上場し、1967年には商号を五洋建設に商号変更した。他によく知られている工事としては、羽田空港D滑走路建築外工事や広島市民球場新築工事、東京港海の森トンネル工事がある。

再生可能エネルギー関連では、2002年には北海道瀬棚港洋上風力発電の建設に取り組んでいる。この経験が、現在の洋上風力事業につながっている。

中期経営計画~洋上風力への挑戦

では、五洋建設は今後、どのような展開を目指していくのだろうか。

中期経営計画では、真のグローバル・ゼネラルコントラクターを目指すことをスローガンとして掲げている。4つの項目が示されているが、ESG重視の経営ということだともいえるだろう。環境も人権も守っていくことが世界標準だという認識だ。

加えて、社内外の連携によって、新しいことに取り組んでいくということも示されている。

こうした取組みを踏まえ、世界と戦っていくという姿勢を見せているということだが、その主戦場は、洋上風力が想定されている。中期経営計画の収支の中にこそ入ってこないが、その準備を着々と進めようということだ。

これまでの取組みも示されている。2019年には、SEP船1,600トン吊りの建造を決定している。写真は完成予想図だが、このSEP船を活用し、国内外で洋上風力の工事を展開していくということだ。

また、この船の建造にあたっての資金調達で、グリーンボンド100億円を発行したことも注目すべきポイントだ。

洋上風力以外のCO2排出削減事業はどうなる?

事業としては、洋上風力に力を入れていく方向だが、他の分野での脱炭素についてはどのように考えているのだろうか。

事業所や工事現場から排出されるCO2については、2019年度までの数字を見ると順調に削減されている。こうした努力は評価すべきだが、多くの会社にとっては、製品やサービスを通じて排出されるCO2の削減が、より大きなものだ。サプライチェーンなどとあわせ、スコープ3といわれている分野の排出量となる。

こうした視点から見ると、建設会社においては、自分たちが作ったインフラや建物がどれだけCO2を削減していくのか、その点を追求することが、もっとも大切なことだろう。洋上風力はそれに合致したものだが、他にも取り組むべき分野がある。その1つが、ZEB(ゼロエネルギービルディング)だ。このように、洋上風力以外の建築物に対しても、ライフサイクルを通じてCO2の排出を削減していく取り組みが不可欠だし、会社としてももっと積極的に打ち出していいものだ。

まだまだこうした部分は、五洋建設には不足していると感じるし、その点こそが課題ではないだろうか。

会社としていかに脱炭素を目指していくか

短期的には、コロナの影響で受注が停滞気味だったように、経済状況に左右される経営が続くことになる。しかし、長期的には、しっかりしたビジョンを持って取り組んでいくことが重要だ。そうした中、洋上風力発電と、海外事業と国内土木、国内建築の部門間連携による推進が、今後は重要な取組みとなってくるだろう。

一方、会社としていかに脱炭素を目指すかは、もっと深く考える必要がある。現状としては洋上風力一本足しか見えていない。そうではなく、会社として脱炭素に向かうというメッセージをもっと出していくべきではないだろうか。

とはいえ、社内の多様性や働き方改革などを打ち出すこともできており、これがSDGsにもつながっていく。こうした取組みの延長として、会社としての環境対策はもっと先進的にできるだろうし、できることもたくさんある。そうした期待を前提として、五洋建設の脱炭素への取り組みには、今後も注目したい。

(Text:MASA)

「脱炭素企業分析」シリーズ バックナンバー 

もとさん(本橋恵一)
もとさん(本橋恵一)

環境エネルギージャーナリスト エネルギー専門誌「エネルギーフォーラム」記者として、電力自由化、原子力、気候変動、再生可能エネルギー、エネルギー政策などを取材。 その後フリーランスとして活動した後、現在はEnergy Shift編集マネージャー。 著書に「電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本」(秀和システム)など https://www.shuwasystem.co.jp/book/9784798059020.html