2021年6月9日、CDPと国連グローバル・コンパクトは、SBTi(Science Based Targets initiative)において、G7諸国の企業の気候変動対策についてのレポートを公表した。これによると、主要企業の気候変動対策は目標として不十分であり、2050年平均気温上昇を1.5℃未満にするどころか、2℃を超えるレベルにあるという。
地球の平均気温の上昇を1.5℃未満に抑えるためには、2030年までに温室効果ガスの排出量を半減させ、2050年までにはゼロにする必要がある。そのために、パリ協定に基づいて、国や企業は気候変動対策を推進する必要がある。
実際に温室効果ガスを削減していくためには、主要企業の積極的な取り組みは不可欠だ。そしてG7諸国はその中でも大きな責任を背負っているといえる。2030年に世界の温室効果ガス排出を半減させるためには、G7諸国には今の取組みをさらに超える削減目標が必要になるということだ。そして、2050年カーボンゼロを目指すためには、2030年までの中期的な取り組みが重要となる。
こうした視点から、今回のレポート「TAKING THE TEMPERATURE Assessing and Scaling-up Climate Ambition in The G7 Business Sector(温度を測定する-気候変動に対するG7企業の野心の評価と拡大)」がまとめられた。
G7諸国の責任が大きい背景には、2020年にCDPを通じて情報を開示した企業の温室効果ガス排出削減目標のうち、64%がG7に本社を置いているということがある。また、分析にあたっては、G7各国の株式インデックスに含まれる企業を対象にしたが、こうした企業が市場に大きな影響を与える可能性があるからだ。
分析結果は次のような内容だ。G7のインデックスに含まれる上場企業のうち、気候変動対策の目標を公開しているのは38%にとどまっているという。しかもその目標の50%しか、パリ協定の目標達成のレベルに達していないということだ。
さらに、今後についても、4分の3の企業が、1.5℃未満に対応するための行動すら起こしていない。特に深刻なのは、自社の事業所での温室効果ガスだけではなく、サプライチェーンでの温室効果ガスの排出削減(スコープ3)に対する野心度が低いということだ。
分析結果によると、現在の取り組みによる温室効果ガス排出削減と1.5℃に必要な温室効果ガス排出削減との間には、2030年の時点で20Gtから23Gtものギャップが生じることになるという。
TAKING THE TEMPERATURE Assessing and Scaling-up Climate Ambition in The G7 Business Sector より
企業が1.5℃に対応した信頼できる目標を設定していくためには、次の点が必要だという。
さらにレポートでは、SBTに対応した気候変動対策として、4つのブレイクスルーを提言している。
今回のレポートの公表にあたって、SBTのブログにおいて、SBTi理事会の議長であるLila Karbassi氏と運営委員会メンバーであるAlberto Carillo Pineda氏は連名で、次のように書いている。
「公的部門と民間部門の関係者がそれぞれの野心を一致させ、科学に基づいた目標を使用して短期および長期の目標を設定できれば、各国は収益性の高い持続可能な未来を切り開くことができるでしょう。この使命を達成するために今、野心的な行動が必要な分野があります。金融機関、バリューチェーンの関与、SBTの資本へのアクセスの拡大、政府と企業の間の野心ループの促進、民間部門の行動と政府の正のフィードバックサイクルは互いに補強し合います。G7 閣僚と米国政府による最近の行動は野心を示していますが、政府はより明確にする必要があります。
政策立案者が規制力を活用し、すべての業界と国で科学に基づく目標の採用を奨励すれば、株価指数とそこを流れる資本は、パリ協定の1.5°Cの目標に沿ったものになる可能性があります」。
(Text:本橋恵一)
SBT:TAKING THE TEMPERATURE Assessing and Scaling-up Climate Ambition in The G7 Business Sector
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