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日本は「電費」で勝負!? 世界をリードできる技術力と可能性を秘めた日本企業とは

日本は「電費」で勝負!? 世界をリードできる技術力と可能性を秘めた日本企業とは

2022年01月20日

2021年12月14日、トヨタ自動車が2030年にバッテリーEV(BEV)の世界販売を従来の200万台目標から350万台に大幅に引き上げるという発表が飛び込んできた。特にレクサスブランドは2030年に全てのラインナップをBEVで取り揃え、欧州・北米・中国では販売の全てをBEVにシフトすることを宣言した。

トヨタの会見でストロングポイントとしてあげたのは「電費」だった。筆者も日本得意のすり合わせ技術がEVになっても生きてくるのは「電費」、つまりエネルギー効率の分野だと考えている。そこで、その分野の技術の草分け的存在である伝説の技術者が立ち上げた日本最小(かもしれない)EV専用自動車メーカーにも目を向けてみたい。

筆者がこのベンチャーに注目する理由は、ふたつ理由がある。ひとつは、バッテリーマネジメントというコア技術をしっかり保持していること、そしてもうひとつはコア技術が活きる商用車市場にリソースをフォーカスしていることである。

技術者でもあり、EVモーターズ・ジャパン(EV Motors Japan)の代表を務める佐藤裕之氏に話をおうかがいした。

EV Motors Japanを起業するに至った経緯

佐藤裕之氏:私は製鉄会社の関連企業で、製鉄所設備である電力で動く圧延機の部門に技術者として所属していました。そこで圧延機の減速に大きな発熱を伴い工場火災の原因にもなりかねない抵抗器式発電ブレーキに対して、発熱が少なく、省エネルギーな電力回生ブレーキ方式による減速機を導入するモーター制御システムでブレイクスルーを果たしました。

1980年代後半からはこの技術をサンヨー(当時)やソニーのリチウムイオン電池工場に応用して、リチウムイオン電池の活性化工程の充放電装置を作り上げました。リチウムイオン電池は物理的に製造したのちに、科学的に活性化させるために充放電の工程が必須です。ここに我々が開発した発熱が極めて少ない回生方式充放電電源とリチウムイオン電池の充放電装置を用いることで、安全で、良質かつ、生産のための電力を低く抑えた電池工場が可能になるのです。

2009年に分社させた株式会社ソフトエナジーコントロールズを設立してからは、日本はもとより、中国、韓国、台湾、アメリカ、ヨーロッパなど各国のリチウムイオン電池工場に採用されています。

2019年からはこれまでの技術蓄積のリチウムイオン電池の充放電制御技術をコアとした、商用EVソリューションを実現する株式会社EV Motors Japanを設立しました。


株式会社EV Motors Japan 代表取締役CTO 佐藤裕之氏

日本で発明されたリチウムイオン電池の黎明期から、もっともエネルギーロスが少ない充放電制御を追求してきた佐藤さんだから、リチウムイオン電池の特性を最大限活かしたもっともエネルギー効率に長けたEVをつくることができるということか。商用EVに特化している理由は?

佐藤氏:我々が開発するのは特定のバッテリーに特化させた、バッテリーマネジメントシステム、インバーター、そしてモーターです。とくにバッテリーマネジメントユニットはインバーターを直接高速制御することで極めてなめらかにバッテリーへの負荷をコントロールいたします。なめらかな発進、加減速の特性はそのまま商用車にもとめられる性能でもあり、低電費・長寿命なEV Motors Japanの強みはビジネスユーザーに訴えることができると考えています。


自社開発のモーター制御システムにより、EV従来の課題であったバッテリーの長寿命化と低電費を実現。また、高耐久な軽量フレームを採用し、車体の軽量化をすることで、長距離航続が可能となった。EVモーターズ・ジャパンでは、性能+コスト優位性を併せた量産型商用EVの展開を、国内外問わずグローバルに行っていくと言う。

車両はどこで生産しているのか。

佐藤氏:日本の規格にあった専用ボディを中国のアモイにある工場で生産してもらっています。中国と違い、日本のバスは20年間使われるため、骨格をステンレスでつくり、外板はCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を用いることで耐久性と軽量化を両立させています。

バッテリーは、今はCATL製を現地で調達し、自社開発のBMU(バッテリーマネジメントユニット)やインバーターは日本で製造してブラックボックス化したうえでアモイに送り車両に組み込みます。今後は東芝の電池を使ったモデルも用意する計画です。

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三浦和也
三浦和也

⽇本最⼤級のクルマ情報サイト「レスポンス」編集⼈、社⻑室⻑ アスキーにてWEBメディア編集を経て、1999年に⾃動⾞ニュースサイト「オートアスキー」(現レスポンス)を⽴ち上げ。2000年にはiモードでユーザー同⼠の実燃費を計測する「e燃費」を⽴ち上げる。IRIコマースアンドテクノロジー(現イード)に事業移管後は「レスポンス」の編集⻑と兼任でメディア事業本部⻑として、メディアプラットフォームの構築に尽⼒。2媒体から40媒体以上に増やす(現在は68媒体)。2015年にイードマザーズ上場。2017年からはレスポンス編集⼈、社⻑室⻑として次世代モビリティアクセラレーター「iid 5G Mobility」を開始。既存⾃動⾞産業へのコンサルティングと新規モビリティベンチャーへの投資や協業を両⾯で⾏い、CASE/MaaS時代のモビリティを加速させる⽴場。最後のマイカーはプリウスPHV。現在はカーシェアやレンタカーを利⽤するカーライフ。

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