実用化に向けて先行するのがアメリカだ。
2007年創業のニュースケール・パワー社は、2029年にも1号機が運転開始すると言われている。すでに、米国原子力規制委員会(NRC)の型式認証を取得済みであり、あとは建設するだけの状況になっている。同社は、出力7.7万kWのモジュール炉を最大12基並べて運転する計画で、合計出力100万kW弱と、大型原子炉に近い出力規模となる。緊急時には原子炉全体をプールに沈めるため、非常用電源がなくても炉心を冷やせるという。
そしてもうひとつの特徴が、負荷追従運転で再エネの変動に合わせた出力調整が可能である点だ。ニュースケール社の原子炉は、再エネが多くの電力を発電しているときは発電量を絞り、再エネの発電量が落ちてきたときには、出力の増加ができる。出力調整が可能という特徴はかなりのメリットになるだろう。
また、同社には米国エネルギー省が4億ドル(約450億円)を出資するほか、日揮ホールディングス(0.4億ドル)とIHI(0.2億ドル)も出資し、原子炉格納容器など中核部材の開発や建設工程の管理などで協力体制を組んでいる。
出典:経済産業省
日本企業も開発を進めている。
その1社、日立製作所はGEとの合弁会社(GE日立ニュークリア・エナジー)で、SMRであるBWRX-300を開発中だ。
出力30万kWとなるBWRX-300のひとつの特徴が「沸騰水型軽水炉(BWR)」だという点である。沸騰水型は事故を起こした福島第一原発と同じ形式であるものの、従来の沸騰水型よりも非常に構造を単純化することにより、コストを削減し、大規模事故の発生リスクを回避しているという。
GEと日立は2028年ごろの実用化を目指して、NRCには安全審査項目に関する技術レポートなどを提出済みだが、まだ型式認定はおりていない。またカナダでの建設も視野に入れて、カナダ原子力安全委員会でも並行して審査がはじまっており、アメリカではなく、カナダで先に運転開始するのではないかと見られている。
出典:日立製作所
GEと日立は、PRISM(Power Reactor Innovative Small Module)と呼ばれるSMRも開発している。
PRISMは原子炉の冷却に水ではなく、ナトリウムを使った原子炉になる。ナトリウムを冷却材に使用し、ナトリウムを循環させることで高温のナトリウムをつくり、その熱いナトリウムからお湯をつくり、原子炉を回すタイプだ。そのため「高速炉」とも呼ばれ、従来の原子炉と比べて廃棄物の有害度が低く、量も少ない。また、使用ずみ核燃料から取り出されるプルトニウムを燃料として使えるといった特徴を持つ。
米国エネルギー省は、PRISMをベースとした出力30万kWの多目的試験炉(VTR)をアイダホ国立研究所に建設し、2030年までに運転開始をする計画だ。
出典:GE
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