世界で注目を集めている小型原子炉は、本当に脱炭素の選択肢になるのか | EnergyShift

脱炭素を面白く

EnergyShift(エナジーシフト)
EnergyShift(エナジーシフト)

世界で注目を集めている小型原子炉は、本当に脱炭素の選択肢になるのか

2021年10月28日

三菱重工は小型化と一体化で大規模事故のリスクを回避

日立が開発するなら、三菱重工もやらない手はない。

三菱重工が開発するSMRは、3万kWから30万kW級のもので、原子炉内でつくった約300℃と高温かつ高圧の水から蒸気をつくり、原子炉を回すしくみとなる。

概念設計はすでに終了しており、蒸気をつくる熱交換器などの主要機器を原子炉容器内に入れ、一体化させることで、非常にシンプルな小型原子炉が開発できるとしている。

この原子炉が実用化されると、離島や船舶の電源に応用することが可能になる。


出典:三菱重工

三菱重工はヘリウムガスを冷却材に使う高温ガス炉(HTTR:High Temperature engineering Test Reactor)の開発も進めている。ヘリウムを使うことで、高圧の水よりも高い熱を効率よく取り出すことができるという特徴がある。実用化にはまだ時間がかかるが、1,000℃の高温ヘリウムを得ることができれば、発電効率が上昇し、さらにこの熱源を使って、効率よく水素をつくることができると期待されている。


出典:三菱重工

冷却にナトリウムを使った原子炉の開発も進む

アメリカにはビル・ゲイツが設立した原子力開発ベンチャーのテラパワー社もある。

テラパワーは「Natrium」という名の原子炉を開発中だ。その名前の通り、先述したPRISMと同じく、ナトリウムを冷却材に使う。このNatriumの高速炉技術はGE日立が開発している。中国とも協力協定を結んでおり、2021年6月には、アメリカのワイオミング州にある石炭火力跡地で、実証を行うと発表した。


出典:テラパワー

マイクロ原子炉(MMR:Micro Modular Reactor)の開発を目指すのが、アメリカのウルトラ・セーフ・ニュークリア社だ。親会社はカナダの企業であり、出力5,000kWのマイクロ原子炉(MMR)をつくり、複数基並べて発電させようと、実証を進める計画だ。20年間発電し、20年後、発電が終わったら、撤去し、新たなモジュールに交換するしくみで、核不拡散に資するものになるという。

イギリスのロース・ロイスは1950年代から原子力潜水艦における原子炉の設計・製造をおこなってきた。その実績からSMRに参入し、「Rolls-Royce SMR」という名の原子炉の開発を進めている。出力規模が44万kW〜47万kWと他社原子炉より大きいのだが、2030年代に初号機を運転開始させ、2035年には10基程度の運転開始を目指している。同社はさらに、2016年にUK SMRコンソーシアムを立ち上げ、Assystem、Atkins、Jacobs、NNL、Nuclear AMRCなどさまざまな企業と開発を進めている。

SMRが抱える課題とは・・・次ページ

藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

エネルギーの最新記事