これまで人類が構築した最大の宇宙構築物といえば、高度約400キロメートルで運用されている国際宇宙ステーション(ISS)がある。しかし、その大きさは幅約100メートル、質量約340トン。ISSはロケットやスペースシャトルを何度も打ち上げて、部品を輸送し、宇宙飛行士によるロボットアーム操作などにより、軌道上において有人で組み立てることで完成した。
だが、高度3万6,000キロメートルの軌道に100万kWもの宇宙に浮かぶ発電所をつくるとなると、質量は数万トンにも及ぶ。1日100トン級の大量輸送が必要なうえ、いったん部品をロケットで低軌道に打ち上げて組み立て、その後、3万6,000キロメートルまで移動させることが想定されている。低軌道への打ち上げは最低でも数百回必要になる見込みだ。日本エネルギー経済研究所の試算によると、100万kWのシステム構築コストは2兆3,600億円にのぼるという。さらに低軌道から3万6,000キロメートルまでどうやって運ぶのか、この軌道間輸送についての研究もまだまだ途上だ。
また1機100億円とされるH2Aロケットで打ち上げれば、それだけで数兆円を超えてしまう。コスト数十分の1程度の超低価格ロケット開発も欠かせない。
もうひとつの技術課題がマイクロ波による長距離送電だ。そもそもマイクロ波で送電できるのだろうか?
マイクロ波とは波長0.1ミリメートルから10センチメートル、周波数でいうと0.1〜100GHzの電波である。FM放送や地上波・衛星テレビの電波であり、電子レンジも電気をマイクロ波に変換して食べ物に当てて温めている。
光はものすごく周波数が細い電波であるため見ることができる。だから、可視光線と呼ばれている。それに対し、電波というのは目に見えない光になる。つまり、光もマイクロ波も同じ電磁波であり、太陽光発電は光のエネルギーを電気に変換するというもの。ということはマイクロ波のエネルギーも当然、電気に変えることができるわけだ。
宇宙太陽光発電もこのマイクロ波に変換して送る研究が進んでいる。経済産業省から委託を受けたJAXA(宇宙航空研究開発機構)や電機メーカーなどはまずは地上において、マイクロ波をいかに精度よく長距離間送れるか実証実験をおこなっており、約500メートル先に10kWの電力を送ることに成功している。とはいえ、3万6,000キロメートルに対してまだ500メートル、垂直方向だとさらに短くなってしまう。また送れた電力は10kWと100万kWにはまだほど遠い。
ただ、実際に電気を送れるということは証明できており、その意味では研究開発は進んでいるといえる。
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