こうした事業構造の転換や新規事業の育成となる必要な人材が、「マネージャ」とは異なる、「リーダー」です。
このマネージャとリーダーは、一般的には同じ意味で使われますが、経営学においてはまったく別の役割、いやむしろ真逆の役割を持っています。
既存事業においては、きちんと利益を上げていくことが求められます。そのため、メンバーにはやるべきことをやることが求められますが、その結果として成功確率は99%となり、失敗は許されません。
こうした既存事業をきちんとやり遂げるのが「マネージャ」人材です。マネージャ人材が十分にいなければ、企業は足元の業績や利益をあげることはできません。
その一方で、新規事業とは、収益化に向け繰り返す「実験」ということができるでしょう。最初はそもそも何をすればいいのか分からないですし、成功するまではいわば「全部失敗」です。こうした試行錯誤の末にやり方がわかれば、それが「成果」となります。
こうした新規事業、また事業構造の転換をやりきる人材が「リーダー」人材です。
日本企業の多くは、既存事業ばかりを重視し、それを担うマネージャ人材が要職を占めるため、新規事業や事業構造の転換がなかなか実現できない、そもそも理解されないということが起こります。これは、常識や成功体験を捨てられないことと同様です。日本企業では新規事業は冷遇され、潰されがちであり、こうした傾向が日本企業の競争力の衰退にもつながっているといえるでしょう。
まさに変革の時代である今こそ、ビジョンを掲げ、組織を変革していくリーダー人材が求められているのです。
リーダーの役割は、「新たな地平に組織を導く」ということです。故ピーター・ドラッカーは「今日必要なのは、マネジメント能力基盤の上に、(リーダーとしての)企業家精神の新たな構造をつくる能力」だと提言しました。転換期にあっては、マネージャの役割からリーダーの役割に脱皮していく人材が必要になのです。
リーダーは、自分自身でゴールとなるビジョンを設定するのですが、それが正しいのかどうかは誰も教えてくれませんし、やってみるまでわかりません。確実な正解が見えない中で、腹を括ってビジョンを語り、実現する覚悟が必要なのです。
ビジョンとは、そもそもの目的であるミッションの実現に向けたゴールです。
例えばある企業において、地球温暖化防止がミッションだとしましょう。ミッション実現に向けて目指すべきゴールがビジョンです。
日本企業の衰退の大きな原因の一つに、視座の高いミッションを実現するためのビジョンを設定するリーダーの不在があります。
既存の方針から転換できない、硬直化したエネルギー企業があるとしたら、その会社にはリーダーという人材が欠けています。社長がリーダーの役割を果たしていない、ということでしょう。
これからの知識社会へのシフトが進む中で、デジタル・トランスフォーメーション(DX)に伴いモビリティやエネルギー産業の構造転換がさらに進みます。また、気候変動問題に対応するグリーン・トランスフォーメーション(GX)も進み、さらに社会価値創造に向けたサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)も進んでいきます。
そして、国連が想定するように、GXとSXが次の主要産業となり、このGXとSXをリードする企業が、大きく成長することでしょう。
日本の企業も、こうした未来の変化を理解し、事業構造を転換し新規事業を推進していく、あらたなチャレンジが必要です。そのためには、既存事業にしがみつかず、リーダーとして新しい自分たちの未来を拓いて行きましょう
知識社会・脱炭素社会で日本企業が生き残るのは、それしか道はないですし、腹をくくって進むことで、新しい道も拓けるはずなのです。
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