次世代スマートメーターの導入にあたって、他にも検討すべきことがある。
1つは、セキュリティだ。スマートメーターはIoT機器であり、データを集積して扱う以上、サイバー攻撃のリスクや誤作動のリスクが存在する。その結果、電力の供給に支障が生じることや、あるいは事故につながる恐れもある。また、データ漏洩の対策も必要だ。そのため、以下の4つを標準対策要件として新たに盛り込んでいる。
また、今後の方向性としては、日本電気協会が主体となり、「スマートメーターセキュリティガイドライン」の改訂を行うことなどが示された。
仕様の統一も、取りまとめ案に示されている。現行のスマートメーターは旧一般電気事業者が個別に仕様を決めたため、エリアによって仕様が異なっているのが実情だ。大きく分けても、関西電力送配電と九州電力送配電が採用している、計量部と通信部が分かれたセパレート型に対し、他社は一体型を採用している。しかし、調達コストの削減やサプライチェーンの相互代替性のため、送配電事業者10社で仕様を統一する方針であることが示されている。システムについても仕様が統一され、API(Application Programming Interface)による連携やダウンロードなどを可能にするとしている。
今後は、2025年度からの導入開始に向けて、詳細仕様の検討などが進められる。前述のように、地域特性を考慮しつつも通信等についてはなるべく仕様を統一し、将来ニーズに対応した柔軟性の高い設計仕様にもしていくということだ。
現行のスマートメーターについては、導入時からさまざまなトラブルがあった。それは、メーターそのものの問題だけではなく、旧一般電気事業者側の問題も含めてだ。
仕様の統一もさることながら、一部の電力会社には「電力量が図れればいい」という考えがあり、十分な性能が盛り込まれていなかったのではないか、という見方もされている。その結果、リアルタイムに近いデータが十分に取得できず、エネルギーマネジメントシステムへの適用も限られたものとなっていた。
また、早急な導入を進めようとした結果、取り付け工事の人員が不足し、杜撰な工事が散見されたことも見逃せない。
取りまとめ案には明確には示されていないが、スマートメーターのデータを多様なサービスに利用していくことも、今後の課題となっている。これまで、東京電力パワーグリッドが中心となって研究組合のグリッドデータバンク・ラボを設立、さまざまな取組みを進めてきたことをはじめ、さまざまな実証が行われてきた。例えば、高齢者見守りサービスや、宅配便の再配達の低減などへの利用だ。しかし、サービス化はまだまだ途上といったところだ。スマートメーターの性能の向上により、どのようなサービスが可能となるのかは、今後期待したいところだ。
とはいえ、取りまとめ案に示されたように、次世代スマートメーターに対する最大の期待は、再エネの導入拡大や省エネ・CO2排出削減など、電力システムの柔軟性を引き上げることだ。2030年代早期に導入を完了させる方針だが、それを待つことなく、温室効果ガス排出量46%削減に資するものにしていく必要があるだろう。
エネルギーの最新記事