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JR、夢の超電導技術で電力ロスをなくした世界最長のケーブルを開発 国際送電網も未来には実現?

2022年01月25日

超電導技術が進化すればどんなことが可能になる?

超電導技術は、必要な電力を鉄道に供給する鉄道き電系以外にも、発電所から送電する際の電力ケーブルやリニアモーターカーや高速道路などの交通系、風力発電機での登用など様々な分野での応用が期待されている。また、都市環境においては大量の送電を可能にするだけでなく、送電網の敷設時の土木工事の工数を減らすことができる点も魅力とされている。
日本では鉄道総研の他にも昭和電線HDや古河電工などが超電導技術に乗り出している。

国立研究開発法人の科学技術振興機構によると、2016年時点の情報で日本では約5%の電力がロスされており、その総電気量は年間約458.07億kWhにも上るという。これは、一般家庭約10万600世帯分に相当する。その後2018年に国際エネルギー機関(IEA)が発表したデータから日本エネルギー経済研究所が算出したデータでも、日本の送配電ロス率は4.3%と試算されている。
脱炭素に向かう世界的な潮流の中で、送電ロスの削減は諸外国でも課題となっており、フランスでは6.8%、英国では8.0%もの送配電ロスが生まれている状況だ。


東京電力サービスエリア内の送配電ロス率。2015年度以前は当社供給需要のみの送配電ロス率。 出典:東京電力ホールディングス

送電ロスをゼロにすることは、そのまま省エネにもつながっていくが、もう一つ、脱炭素の観点から超電導技術は注目を集めている。
それは電力の長距離送電が可能になるという点だ。

まず、超電導は直流の電力を送るのにも適しているため、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーとの相性が良い。直流の電力というのは、+と-が一定している電気で、これを家庭で使うときや、電力会社の送電線に戻すときには、+とーが一定の周波数で入れ替わっている交流に変換する必要がある。
超電導技術、さらには長距離送電自体がこの直流の電力を流すのに適しているため、都市部から離れたところに設置された再エネ発電所の電力を全国にロスなく送ることができ、国内における再エネの割合向上に寄与するだろう。

さらに、超電導技術が進化すれば、国内の枠を超えて海外からの送電も可能となる。もちろん、地球規模の送電を可能とするにはまだまだ技術革新が必要となるが、これが可能となれば再エネ発電所の課題である昼夜、天候による不安定さも解消されるだろう

自然エネルギー財団は、仮に日本が国際送電網を作るならば、直接繋ぐ相手は隣国である韓国とロシア、さらに将来的には、韓国を通じて、中国、モンゴルもその対象になりうると述べている。
それぞれの最短距離を調べれば、北海道の宗谷岬からロシアのサハリンまでの距離は約43km、福岡市から韓国のプサン市までの距離は約200kmとなり、580kmあるオランダ―ノルウェー間の海底送電線よりも短く、実現性を備えている。
既に、韓国と中国は国際連携のプロジェクトを推進しており、モンゴルと中国も送電線でつながれている。モンゴルは2021年3月に日揮HDが蓄電システム併設型の太陽光発電設備建築プロジェクトを受注しているなど、再エネポテンシャルに富んだ国だ。特に、ゴビ砂漠のポテンシャルは風力資源が946TWh/年、太陽光資源が4,777TWh/年と想定されている。

無論、再三述べることとなるが、国際送電を超電導によってなしえるには、まだまだ技術革新が必要で時間がかかる。それ以外に、国際関係上の問題もあるだろう。
しかし、そこへ進むための試金石として今回の鉄道総研の1.5kmの超電導送電線が現れた。今後の進歩に期待していきたいところだ。

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高橋洋行
高橋洋行

2021年10月よりEnergyShift編集部に所属。過去に中高年向け健康雑誌や教育業界誌の編纂に携わる。現在は、エネルギー業界の動向をつかむため、日々奮闘中。

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