EV(電気自動車)の普及率は低いとはいえ、それなりの歴史もできてきた。EVの中古車も販売されるようになってきたということだ。そうした中、2006年に発売が開始され、すでに生産が終了している三菱自工のi-MiEVは、中古市場では人気があるという。モータージャーナリストである大田中秀一氏が、あくまで自動車としてのEV(FCV)にこだわってみた試乗レポート、今回はi-MiEV“M”についてお届けする。
シリーズ:EVにややロングに乗ってみた
EV5台(バッテリーEV4台・FCEV1台)に試乗しながらEVへの興味が増してきたある日、音声SNSとして今年始まったClubhouseでEV好きの人たちが集まる部屋の存在を知りました。
それを聴いてふと思ったのです。
「そうだ中古EVはおもしろいかもしれない」
Clubhouseを聴きながら、中古EVについて検索してみるとけっこうヒット。その中でもi-MiEVが目に付きました。じっくり見ると複数台の在庫がある販売店が岐阜県土岐市にあったので、出張のついでに知人の会社が所有するテスラ・モデル3を借りて、乗りに行きました。
i-MiEVには大きく分けて以下のモデルがあります。細かい仕様変更や価格変更はあるもののこれだけ知れば充分でしょう。
試乗したのは2015年(平成27年)式のMタイプ。前述の通り10.5kWhの東芝製SCiB電池を搭載したベースグレードです。走行5万キロで117万円でした。
試乗は、街中→カーブが続くちょっとした登り坂区間往復→街中という、通常の試乗プラスアルファという感じのルートでした。走り出しも特に感じるものはありませんでしたし、登り区間でのパワー感もさほどでもなく、ハンドリングも眠い感じでした。特に感激も発見もなく試乗は終りました。
感激はなかったもののEVへの興味が減退することはありませんでした。他県からの来場者にも関わらず親切にしてくれたし、他府県でも納車してくれるとのことだったので買う時にはまたこようと思いました。
i-MiEVはじっと見ることさえ初めてだったのでセールス氏にいろいろ訊いてみました。内容を簡単に紹介します。
①中古車では“M”が人気
カタログ値ではJC08モードで“G”が180キロ、”M“が120キロ走行可能となっています。
航続距離の観点だと“G”なのですが、SCiBの方がサイクル寿命に優れ容量低下が少ないことから中古では”M“を指定する人が多いそうです。
並んでいた個体の電池容量測定結果はどれも107%となっており、新車時の容量を維持していることが示されていました。
対して“G”の方は、過去の実績ではだいたい100キロを割り込むくらいの容量になっている個体が多かったとのことです。
②買う人は何らかのこだわりがある
以下のような感じでした。
岐阜の人は名古屋にクルマで通勤する人が多く、i-MiEVの航続距離では足りないため、市内移動用と割り切って100キロも走れば充分と考えている。でも劣化は気にするので“M”を選びたいということのようです。
③たまたま
新築の家を建てるときに「200VのEV充電コンセント付けといたよ」というケース、「数万円ほどだから付けとこうか?」と新築するときに工務店から言われるケースがけっこうあり、それがきっかけで「じゃあせっかくだからEV買ってみようか」という動機で買いにくる人がちょこちょこいるそうです。
こうして話を聞いてみるといろいろ興味深い。
今後も機会を作って中古EVを見に行こうと思います。まずはi-MiEVのLEJ製電池搭載モデルかな、と思いました。ということで、次回も引き続き、i-MiEVです。
(取材・写真・文:大田中秀一)
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