エネルギー・環境分野においてイノベーションを加速させるためには、多様な人が集い、コラボレーションすることが重要である。それを担うのがコミュニティだ。2020年10月2日、エネルギーテック勉強会、Energy Tech Meetup、GreenTech Labs、そしてCIC Tokyoの4コミュニティは合同イベント「Power of Community〜エネルギーイノベーションを加速させるコミュニティとは」を開催した。この模様をレポートする。
持続可能な社会にはイノベーションが必要
2020年10月2日、エネルギー・環境分野においてイノベーションを起こし、スタートアップの組成を目指す、エネルギーテック勉強会、Energy Tech Meetup、GreenTech Labs、そしてCIC Tokyoは初の合同イベント「Power of Community〜エネルギーイノベーションを加速させるコミュニティとは」を開催した。
日本のエネルギー業界は今、分散化や脱炭素化、デジタル化など大きな変革の中にある。持続可能な社会の実現に向けたゴールと、現実との間には大きなギャップが存在し、そのギャップを埋めるためには、さまざまな分野でイノベーションを起こし、社会に実装していくことが必要である。
エネルギーテック勉強会や、Energy Tech Meetup、GreenTech Labs、そしてCIC Tokyoは、これまでエネルギー・環境分野におけるイノベーションの加速を目指し、多様な人が集い、コラボレーションし、そのイノベーションを育むコミュニティとして活動してきた。
今回のイベントは、同じ目標を掲げながら、これまでは、それぞれのコミュニティ内での活動がメインだった4コミュニティが、初めて合同開催したものである。
イベントでは、4コミュニティが、「どのようにしてentrepreneurs/intrapreneurs(起業家/企業内起業家)をサポートし、研究者や学生、政策立案者を巻き込み、イノベーションを起こしていけるのか」をテーマにそれぞれの取り組み事例を紹介していった。
4コミュニティの目指す方向性は共通項が多い
エネルギーテック勉強会は、20兆円という日本のエネルギーマーケットにおいて、テクノロジーとクリエイティビティを駆使して、イノベーションの創出にチャレンジすることに関心を持つ人たちのコミュニティである。シェアリングエネルギーとエナーバンクの共同主催として運営されており、2019年から活動を開始し、業界の基礎知識や、国内外のユースケースの紹介、最新技術など、エネルギーテックの全体像の理解と最前線の情報共有に重きを置き、さまざまなコラボレーションの創発に取り組んでいる。スタートアップを中心に、大企業や大学・研究機関、メディアなど所属を超えたさまざまな人たちが、お互いの知見をシェアし合い、イノベーションの創出を目指している。
Energy Tech Meetupは、日本の大学の留学生だったAmanda AhlさんとGrace Kaghoさんが中心となり、エネルギーイノベーションにはさまざまな専門分野の知識とイノベーションエコシステムが必要と考え、学生や企業、研究者など所属の垣根を超えて、自由に意見を交換できる場をつくるため、2019年9月に立ち上げた。1,500名以上が参加しているグローバルなコミュニティであり、拠点は東京のほか、ウィーン、ベルリン、アムステルダムにあるという。
GreenTech Labsは、2018年11月に設立されたグリーンテックに関する知見を共有し、情熱を持つ人たちの取り組みをサポートするコミュニティである。運営責任者である安岡充昭氏自身、東京電力パワーグリッドで海外の送配電事業の開発を行うシニアマネージャーとして業務を遂行する傍ら、「海外と比べスタートアップが少ない日本のエネルギー・環境業界において、より多くの日本発のスタートアップを創出したいとの思いから、コミュニティ内でのインタビュー記事を通して、熱意溢れるメンバーの発掘と発信を行っています」と述べる。56名が参加するコミュニティであるという。
日本最大級となるスタートアップの集積地の構築を目指すのが、CIC Tokyoである。
2020年10月1日には、200〜300社のスタートアップが高密度に集うイノベーション・コミュニティとして、虎ノ門ヒルズビジネスタワーに合計6,000m2の拠点をオープンした。目的のひとつが、日本最大の環境・エネルギークラスターの形成であり、そのエコシステム構築に向けて、今回の合同イベントに参加したという経緯がある。
CIC Tokyoの名倉勝ディレクターは、「世界11都市、19拠点を持つCICは、アジア初拠点となるCIC Tokyoをオープンさせました。私たちは、日本市場だけではなく、世界につながるイノベーションの発信基地をつくり、社会や世界を変革させる起業家たちを支援し、グローバルなスタートアップの創出を目指していきます」と語った。
多様な人が集うことで、イノベーションは起こせる
続いて、4コミュニティによるパネルディスカッションに移り、「どのような課題感からコミュニティを立ち上げたのか?」「どうすれば日本のエネルギー分野においてイノベーションを起こすことができるのか?」といったテーマで意見が交換された。
まずコミュニティ形成の背景について、GreenTech Labsの安岡充昭氏は、「大手電力会社の中にいても、部門が違えば詳細まで知らない。エネルギー業界が大きすぎるがゆえ、制度や規制が複雑すぎるがゆえに、解決しなければいけない課題が解決できない。ソリューションが見つからないという問題点をずっと感じていました。私たち以外にも、自分が所属する会社の中にいるだけでは、将来のエネルギー業界をよりよくする課題を解決できない。そうした熱い思いを持った人がいるのではないかと思い、この仮説のもと、コミュニティを立ち上げました」と述べた。
次に「どうすれば日本のエネルギー分野においてイノベーションを起こすことができるのか?」。この問いについて、CIC Tokyoの名倉氏は、「これまでのエネルギー分野のコミュニティは、大企業と政府、あるいは大企業同士のつながりが非常に強かったと思います。こうした中で、スタートアップを中心としたプレイヤーが力を持ち、行政や大企業との距離を縮めていって、イノベーションを起こす。その経験値を蓄えていくことが必要だと思います」と語った。
またエネルギーテック勉強会のCo-Founderであり、エナーバンクの代表取締役である村中健一氏は、「今、まさに脱炭素という大きな流れの中で、業界が大きく動こうとしています。この流れはスタートアップによってチャレンジングであり、チャンスでもあります。変化のあるところに、いち早くスピード感を持って取りに行く。これがスタートアップのアプローチです。こうした中において、スピード感を持ったアプローチを否定するのではなく、アウトプットが出るところまで、走らせて欲しいと思います」と答えた。
続いて「イノベーションを起こすためには資金力も必要ではないか?」という問いに関して、CIC Tokyoの名倉氏は、「エネルギー系のスタートアップでは資金力が課題になることが多いのではないかと思います。どのように資金を供給していくのか。投資家を巻き込んだり、あるいは行政からのサポートも重要です。またエクイティをサポートするのか。あるいはブランドをサポートするのか。サポートにもさまざまな形があります。サポートを有機的に組み合わせて、お互いにWin-Winの関係性を構築することで、エネルギーイノベーションが達成できるのではないでしょうか」と語った。
エネルギーテック勉強会の藤瀬里紗運営ディレクターは、「イノベーションの鍵はコラボレーションだと思いますが、同質的な人たちが集まってもなかなかイノベーションは起きません。情熱を持ち、多様なバックグランドを持った人たちが、こうしたコミュニティをつくり、コミュニティ間でコラボしながら、交わることでイノベーションは加速していくのではないでしょうか」という言葉を送った。
日本のエネルギー・環境分野において、イノベーションは加速するのか? 4コミュニティの今後の動向に注目したい。
エネルギーテック勉強会
Peatix: https://peatix.com/group/6950834
Note: https://note.com/energytech
Energy Tech Meetup
Website: https://sites.google.com/view/etmjapan
GreenTech Labs
Website: https://greentechlabs.jp/
CIC Tokyo
Website: https://jp.cic.com/
(Text:藤村朋弘)