なぜEV議論はおこるのか EVサバイバー 第1回 | EnergyShift

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なぜEV議論はおこるのか ♯01 EVサバイバー

なぜEV議論はおこるのか EVサバイバー 第1回

2021/06/24

国内最⼤級のクルマ情報サイト「レスポンス」編集⼈三浦和也の見た、驚愕の予兆。
脱炭素とEV(電気自動車)に揺れる自動車業界のパラダイムシフトを連載で伝えていく。

自動車業界は100年に一度の大変革の時代に入った。次の100年も自動車メーカーがモビリティ社会の主役を張れる保障はどこにもない。「勝つか負けるか」ではなく、まさに「生きるか死ぬか」という瀬戸際の戦いが始まっている(トヨタ自動車社長 豊田章男氏)

 

エナジーシフトの読者の皆様、はじめまして。
このたびEV(電気自動車)に関するコラムを執筆連載させていただくことになった三浦和也です。
レスポンスという自動車ニュースメディアの編集長を経て、現在は編集人の立場でモビリティに関する新規事業開発やモビリティに関するコンサルティングなども行っています。

私のキャラクターというか立ち位置は、自動車業界にとっては自分たちのことを理解してくれてITが分かる人として、IT業界では自動車業界に詳しい人、と捉えていただき、その境界線に住んでいる認識です。今回、エナジーシフトさんに声をかけていただいて苦手な執筆を始めてみようと思ったのは、これからはエネルギー分野の事情やトレンドを知らなければ自動車の解にも、ITの解にもたどり着けないと考えたからです。

本コラムのテーマはEV、そしてタイトルは「EVサバイバー」です。

2021年の年初、オンライン開催されたCES(毎年1月、米ラスベガスで開かれるアメリカ家電協会主催の展示会:コンシューマエレクトロニクスショー)を取材していて、気がついたのです。

テスラ一強のアメリカ市場では、先行したはずの日産リーフも、最大シェアのGMが投入したボルトEVも新興テスラに破れた結果、サイバーギミック満載のプレミアムカーとして出直しを迫られていたのです。ヨーロピアンプレミアムのメルセデス・ベンツまでも、(子供じみた!?)デジタル装備満載の専用シリーズ(EQ)を用意してテスラの一人勝ちを阻止する決意を滲ましています。

そう、アメリカのEV市場のサバイバルは、GAFAに代表されるハイテク業界のビジネスマンをターゲットにしたサイバーカー市場を舞台にしています。

欧州市場の主役は若者です。
とくに北欧やドイツなど気候変動に危機感を持つ若者が仲間を動かし、親を説得して投票行動を通じて各国政府およびEU政府に早急な対策を求めました。
しかし私には、欧州の大人たちが世論に従うふりをしながら、実際は過去の戦略ミスを大慌てで上書きしているように見えてなりません。

欧州自動車産業を追い詰めたもの

みなさんはディーゼル不正事件(ディーゼルゲート)を覚えていますでしょうか。
たった数年前の2015年に起きた、クリーンを売りにして販売していたディーゼル車が、実は特殊なソフトウェアを用いて検査をすり抜けて実際は規制値の30-40倍ものNOx(窒素酸化物)を発生させていたという事件です。

当初VWの問題とされていましたが、その後の捜査でアウディ、ポルシェのVWグループ企業のみならず、ダイムラー(ベンツ)、BMW、FCA、オペル、ボッシュも罰金に応じ、スズキや三菱自工にも捜査は及んでいます。まだ捜査や裁判は続いているとされています。

環境に良いと言われてせっせとディーゼル車を買っていた欧州市民と、それを支えた政府の怒り、パワートレーンの長期ビジョンが崩れ去った欧州自動車メーカーと、それでも主要産業である自動車産業を失うわけにはいかない欧州が、気候変動という大きなテーマの一部のようにみせかけてEVへのシフトを強調しているというのがここ最近の実態です。
欧州のサバイバルはディーゼル不正で壊滅的打撃を受けた欧州自動車産業そのものなのです。

さて、我らが日本の自動車はどうでしょう。彼らを追い込んだ直接の原因はおそらく日本車の躍進です。しかしディーゼル不正が海の向こうのことと思うなかれ、日本でも2016年に三菱自工、日産、スズキがカタログ燃費値の不正事件を起こしています。

ここまで不正リストに出てこなかった、トヨタやホンダのハイブリッドカーが他社を追い込んだという見方もあるでしょうが、彼らも追い込まれるように今の技術や生産体制を確立してきたというのが実態です。何から? そう、環境規制からです。

さらに過酷になる脱炭素という環境規制

これまでの自動車環境規制は2軸、CO2とNOxです。内燃機関のエンジン車においてCO2、つまり高い燃費性能とNOx排出を低く抑えること、しかも規制値は年々厳しくなるなか、ライバルより低コストで実現せねば嗜好品としてのクルマの魅力に振り分けるコストが減ってしまいます。
巨大企業およびその協力会社が生き残るためならば、塀の中に落ちることも厭わない。

自動車はそのようにしてサバイブしてきたのです。

今回はあえて触れませんでしたが、気候変動時代の自動車産業の主役にしてニューカマーは中国です。
過去20年間、日欧米3極に対して、巨大市場として成長を与えてくれた中国は、次の20年間で4極めもしくは1強3弱の立場を狙っています。

このコラムではEVシフトを題材に、エネルギーシフトとモビリティーシフト、そしてIT業界からフロンティアと目されている”自動車”というプロダクトとその本質である”移動”について、皆さんの議論の題材となるような素材を提供してゆきたいと考えています。

しばらくの間、どうぞよろしくお願いいたします。

三浦和也
三浦和也

⽇本最⼤級のクルマ情報サイト「レスポンス」編集⼈、社⻑室⻑ アスキーにてWEBメディア編集を経て、1999年に⾃動⾞ニュースサイト「オートアスキー」(現レスポンス)を⽴ち上げ。2000年にはiモードでユーザー同⼠の実燃費を計測する「e燃費」を⽴ち上げる。IRIコマースアンドテクノロジー(現イード)に事業移管後は「レスポンス」の編集⻑と兼任でメディア事業本部⻑として、メディアプラットフォームの構築に尽⼒。2媒体から40媒体以上に増やす(現在は68媒体)。2015年にイードマザーズ上場。2017年からはレスポンス編集⼈、社⻑室⻑として次世代モビリティアクセラレーター「iid 5G Mobility」を開始。既存⾃動⾞産業へのコンサルティングと新規モビリティベンチャーへの投資や協業を両⾯で⾏い、CASE/MaaS時代のモビリティを加速させる⽴場。最後のマイカーはプリウスPHV。現在はカーシェアやレンタカーを利⽤するカーライフ。

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