CO2排出量の算定サービス業において、いち早く取り組んできたのは、なんといってもNTTグループだ。NTTデータは、2012年11月に、日通総合研究所とともに「スコープ3 物流CO2排出量算定および削減効果評価指標策定コンサルティング」のサービスを開始している。さらに報道によれば、同社は今年1月から、脱炭素化の支援事業を本格化していくという。サプライチェーン全体のCO2排出量の算定は元より、削減や情報開示に至るまで包括的に対応するとして、製造業や流通・小売業などに売り込む予定だ。
また、昨年12月8日には、同じグループの系列であるNTTロジスコが物流領域におけるCO2排出量の算出と削減シミュレーションの提供を開始した。輸配送及び、倉庫内での活動について、入出荷量や輸送重量等の必要データを収集し、CO2排出量を算出・可視化する手筈となっている。
またもう一社、デジタル業界から参戦しているのは日本IBMだ。同社はデジタルを活用して、トレーサビリティー(原材料の調達から生産、そして消費または廃棄まで追跡可能な状態にすること)やCO2排出量の可視化などのサービスを行う。さらに優先的に実施すべきテーマを見極めて仕組み作りを行うサービスも提供。自社で実践してきたノウハウや国内外の先進事例も踏まえながら、顧客のサステナブルな経営を形創っていくとしている。
また、同種のサービスを行う大企業としては日立製作所も挙げられる。同社は、企業の脱炭素経営を支援する、環境情報管理「EcoAssist-Enterprise」の新メニュー「CO2算定支援サービス」を2021年4月に発表。
ESG投資指標として活用されるCDP回答やSBTi(2℃目標達成に向け意欲的な目標を設定する企業を認定する国際イニシアティブ)認証取得など、非財務情報の開示を支援するシステムとコンサルティングサービスが一体となった温室効果ガス(GHG)排出量の算定支援サービスとして話題を呼んだ。
これに対して、その年の11月に提携を結び、自社のコンサルティングサービスを充実させたのが三菱UFJ銀行(以下、MUFJ)だ。同行は顧客企業1,600社に対するコンサル事業の一環で同サービスの提供も行うことを発表。日立の技術を発端に、CO2排出量算定サービスによる二次的ビジネスが行われることとなった。
MUFJのようにCO2排出量の算定サービス業を行うと表明しつつも、根幹の算定機能については他社と連携している企業も増えている。
2021年9月には関西電力が排出量算出・可視化クラウドサービス「zeroboard」を展開する株式会社ゼロボードとの協業を発表した。協業は、関西電力の顧客の電力・ガス使用量データをzeroboardに連携し、CO2排出量の算定を簡略化する形で行われる。さらにそこから、関西電力のソリューションサービスを採択した場合、どれだけCO2の排出を削減できるかシミュレーションできる機能も追加するので、企業間での連携が顧客の脱炭素化を後押しする形となる。
ゼロボードは他にも岩谷産業や岩手銀行と協業したり、横浜銀行・伊藤忠エネクスとの三社協業を行ったりしている。そうした業績の中にはMUFJとの協業もある。
MUFJがゼロボードとの連携を発表したのは、日立製作所との協業を発表したのと同時期である昨年11月のこと。CO2排出量データやサプライチェーンデータに基づく金融ソリューションを開発することを目的としており、顧客企業へzeroboardの提供によるCO2排出量算出支援を行っていくことも表明している。
ゼロボードと同様のビジネスを展開している企業としては、デロイトトーマツと連携しているウェイストボックスも挙げられる。デロイトトーマツは2021年9月7日に脱炭素経営を推進する企業向けにサプライチェーン全体のCO2排出量算定から、排出権調達も含めたサステナビリティ経営の推進までを包括的に支援するサービスを行うことを発表。「サプライヤー別・製品別の排出量及び再エネ・環境価値調達量の見える化」「GHG排出量集計の正確性向上に係る助言」などを実施・強化していくとした。
そしてこれらのサービスの根幹を担うのが、ウェイストボックスだ。同社は50社を超えるサプライチェーンのCO2算出支援の実績を誇るのみならず、環境価値の創出・取引についても10年以上の経験を積んできた。
このように、もはやCO2排出量の算定サービスを採用すること自体は珍しいものではなくなっており、その算定技術をどのようなビジネスに応用していくか、というところにフェーズは移行しつつある。
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