家庭エネルギーの IoTで、電力消費最適化と再生可能エネルギーの拡大へ / Nature 塩出晴海氏 | EnergyShift

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家庭エネルギーの IoTで、電力消費最適化と再生可能エネルギーの拡大へ / Nature 塩出晴海氏

家庭エネルギーの IoTで、電力消費最適化と再生可能エネルギーの拡大へ / Nature 塩出晴海氏

EnergyShift編集部
2020/11/24

家庭の電力消費を適切にコントロールすることができれば、新たな調整力が生まれ、社会的には再生可能エネルギーのさらなる拡大、消費者にとっては電気料金の削減につながる。そのために期待されているのがエネルギーIoTだ。代表的な機器である、家庭向けスマートリモコンやHEMS(住宅エネルギー管理システム)をNature Remoシリーズで提供する、Nature株式会社の塩出晴海代表取締役社長に、エネルギービジネスに参入したきっかけと今後の展望を聞いた。

インドネシア石炭火力きっかけに、クリーンエネルギーへのシフト目指す

―創業の背景をお伺いします。

塩出晴海氏:私は広島県の向島という瀬戸内海に浮かぶ島で育ち、父が事業を経営するのを見ながら育ったので、いつかは自分の事業を始めたいと思っていました。父は、僕が小学5年生のときに3Dのレーシングゲームを自社開発しました。毎日遅くまで作業をする父の姿や、最初は真っ暗だったゲーム画面に車が現れたり音が入っていったりする様子を見て、すごくおもしろいと感じました。

家にあった古いコンピューターでインベーダーゲームをつくったら新しいパソコンを買ってくれるというので、試行錯誤してなんとかゲームをつくり上げました。プログラミングのおもしろさに触れたのは、このときでした。

大学、大学院とコンピューター関係の勉強を続けました。大学時代に、コンピューターサイエンスに長けた米ウィスコンシン大学に交換留学しました。そこでの授業のレベルの高さに驚き、日本にいてはダメだと思い、インドでのインターンを経て、コンピューターネットワーク分野に秀でたスウェーデンの大学院に進学しました。

Nature株式会社 塩出晴海 代表取締役社長

―ビジネスの世界にはどうやって入ったのでしょうか?

塩出氏:大学と大学院の6年間で、国内外のコンピューターサイエンスを集中的に勉強できたので、そろそろ事業を勉強したいと思い、三井物産に就職しました。“自然”という自分の人生で選んだテーマに合致し、自分がビジネスマンとしての旬を迎える35~45歳のときに、大きなポテンシャルを開花させている市場はクリーンエネルギーだと考え、異動を希望しました。

石炭火力発電の担当になり、東京電力らとインドネシアで石炭発電所を開発しました。このときに見た、炭鉱の光景が非常にショッキングで、電気は多くの犠牲の上に成り立っていることに気づかされました。そして、同時期に東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故が起こったのです。

この出来事をきっかけに、クリーンエネルギーだけで成り立つ世界を実現したいと思い、Natureを立ち上げました。三井物産を退社し、ハーバード・ビジネス・スクールに留学した3ヶ月後、2014年12月のことでした。

―「Naure」という社名の由来は何でしょう?

塩出氏:自分の人生をかけたいテーマを考えたとき、辿りついた答えが「自分の感性に合った事業がしたい」「世の中に大きなインパクトを与えるビジネスがしたい」という2つでした。

真っ先に浮かんだのは、大学卒業後の3ヶ月間で広島から沖縄まで父とヨットでセーリングをした体験でした。沖縄から奄美大島の加計呂麻島に向けてオーバーナイトで進んでいるとき、見渡す限り360度の大海原の中、ひとりデッキにいると思わず高揚感を感じたのです。
この瞬間、人間も自然の一部だと実感しました。近代化された現代では、人工のものに囲まれていますが、本来の人間は動物です。本能や遺伝子のレベルで自然と一緒にありたいと願っているのではないでしょうか。向島で育った僕の原風景にはいつも自然があり、自分の感性の源はまさにここだと思いました。

しかし現代社会は、人間の本能に反するあり方になっています。産業革命を契機に、大量生産・大量消費が経済を動かしています。これは工業製品も電気も同じです。現代社会の構図は、その歯車が大きくなりすぎて誰にも止められない状態だといえます。

今はまさに、このパラダイムを変えられる時代の節目です。パラダイムシフトのいちばんのトリガーが、これまでの発想を転換する新しいビジネスです。技術によって消費を拡大するのではなく、利用率を上げることでビジネスを生み出すUberやAirbnbなどです。この流れは、今後電力の世界でも大きな意味を持ちます。

電力の需要サイドにはIoTが入るチャンスがある

―Natureのスマートリモコン開発のきっかけをお伺いします。

塩出氏:電気の需要側にはIoTが入るチャンスがあると考えており、電気の需要側を動かせるビジネスをハーバードに行って考え始めました。

幸運だったのは、アマゾンEchoとの出会いです。当時のアマゾンはEコマースの会社というイメージで、米国でさえ誰も今のアマゾンEchoのようなスマートスピーカー分野が伸びるとは考えていませんでした。しかし、私はたまたまアマゾンへ就職する友人に勧められ、半信半疑でアマゾンEchoを買ってみたのです。家電も制御できるスイッチも一緒に購入したところ、その便利さに感動しました。

そこで、家庭用のエアコンを操作できるスマートリモコンの開発を始めました。民生用電力は、電力需要全体の30%を占める大きなマーケットです。エアコンはそのピーク需要の半分以上を占めます。そうして開発したのが2017年10月に発売したスマートリモコン「Nature Remo」です。

スマートスピーカーと連携できるデバイスが当時はまだ少なかったことから、多くのメディアで取り上げていただきました。日本でのグーグルホームやアマゾンEchoのローンチタイミングと重なったことも、好調の要因だったと思います。

「Nature Remo」は1万3,000円で販売を開始しましたが、安いモデルがほしいといったご要望を反映し「Nature Remo mini」というラインナップを増やし、販売は堅調に伸びていて、今年の9月にシリーズ累計で20万台も突破しました。

Nature Remo

―家庭のエネルギーマネジメントによって再生可能エネルギーの拡大を目指すということですね。

塩出氏:Natureのビジョンは「自然との共生をテクノロジーでドライブする」です。2019年12月に発売した「Nature Remo E」は、蓄電池や太陽光システム、スマートメーターと連携でき、家庭のエネマネを通して再生可能エネルギーの有効活用を目指します。2020年4月には、よりシンプルに電気の見える化を実現する「Nature Remo E lite」も発売しました。もちろん、スマートハウスを実現する通信プロトコルECHONET Liteと連携可能です。

「Nature Remo E」シリーズは、湯河原にある当社の実験施設「スマートエナジーラボ」で開発しました。スマートメーターのBルートから、リアルタイムでデータを取得します。工事不要で、WiFiにつなげばすぐに使えるところが、他社にないポイントです。電気の消費量をトリガーにした家電操作も、追加機能として実装しました。例えば、電気の消費が200Wを超えたらエアコンの温度を下げるなど、実用的な機能を拡張させています。

Nature Remo E 利用イメージ

個人レベルで電気を融通する仕組みをIoTで提供する

―気候変動対策や再エネの拡大に対し、Natureは具体的にどのように関与していくのでしょうか?

塩出氏:Natureが究極にやりたいことは、再エネだけで運用できる世界の実現です。それには既存の電力のあり方やシステムのスペック、需要家のマインドセットも変えていかないといけません。数年後にすぐに実現できるというものではないと考えています。

重要なのは、個人レベルで電気を融通できる仕組み、そしてそれと組み合わせた再エネの仕組みです。今後はそれがキーになります。そうした仕組みの構築と、構築に至るまでの道筋をどうやってつけていくかが当社の役割です。

P2Pネットワークがすでに始まり、電力システムにも変化が訪れています。そこで肝になるのは制御です。当社がIoTでコンシューマー向けビジネスに切り込むことの、マーケットへのインパクトは大きいと思います。

次のステップは、当社の制御技術を使った調整力の創出に関する新規事業です。当社のビジョンである再エネだけでエネルギーをまかなうことの実現に向けたプラットフォームの提供を進めていく考えです。

―関西電力の実証事業に参画していますね。

塩出氏:関西電力とのVPP実証事業において「はぴeみる電」と連携し、家電制御サービス「はぴリモ+」という取組みをしています。また、ハンファQセルズジャパンに「Nature Remo E」を取り扱っていただいています。

当社が目指すビジョンは大きく、達成にはいろいろなパートナーの協力が必要です。ビジョンに共感いただけるなら、ぜひ一緒に活動していきたいと思っています。

ただ、日本におけるVPP事業は制度設計上、まだ採算性の獲れるビジネスではありません。VPP事業はあくまで通過点として、最終的にはP2Pによるプラットフォームの構築をめざしています。そのための1つのコンポーネントがVPPだと捉えています。

―先日の容量市場の高値約定については、ビジネスチャンスがあると見ていますか?

塩出氏:現在の容量市場では、年度の需要ピークのタイミングでkWの配分が決定します。今後は、このピークをどう抑えていくかが課題です。これまで培ってきたIoTの技術を活用し、ピーク需要をコントロールできる時代がやってきたと思っています。

―今後の事業展開についてお聞かせください。

塩出氏:足元では「Nature Remo」の販売台数をいかに伸ばせるかにフォーカスしています。「Nature Remo」が普及すれば、自社でコントロールできるデバイスが増えます。パートナーと組みながら、電力の新しい世界をつくっていきたいと思っていますし、来年からどんどんアグレッシブにやっていくつもりです。
10年後のNatureの姿として断言できるのは、電力の枠を超えたビジネスを展開していることです。私たちのミッションは「自然との共生をテクノロジーでドライブする」であり、これは電力だけの問題ではありません。できることは、まだたくさんあると思っています。

(Interview:本橋恵一、鶴田さおり、Text:山下幸恵、Photo:関野竜吉)

プロフィール

塩出 晴海

塩出 晴海

Nature株式会社代表取締役CEO
13才の頃、インベーダーゲームを自作。2008年にスウェーデン王立工科大学でComputer Scienceの修士課程を修了、その後3ヶ月間洋上生活を体験。三井物産に入社し、途上国での電力事業投資・開発等を経験。2016年ハーバード・ビジネス・スクールでMBA課程を修了。ハーバード大在学中にNatureを創業。

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