水素やアンモニアは、火力発電のタービンなど多くの既存設備をそのまま利用できるため、脱炭素化への投資を削減できると期待されている。ただし、水素は液体になる温度(沸点)がマイナス253度と低いため輸送や貯蔵が難しいうえ、燃焼速度がLNGよりも速いため燃焼炎が機械内部に入り込むバックファイア(逆火現象)や、NOx(窒素酸化物)が発生するという課題がある。この燃えやすい水素の燃焼をタービンの中で制御する技術で世界をリードするのが重工大手3社だ。
水素タービン開発で先行するのが三菱重工である。
同社は2018年、LNGに30%の水素を混ぜて燃焼させる混焼技術を完成させた。2020年からは、100%水素だけで燃焼させる専焼発電の技術開発を本格化させており、2025年に水素30%混焼タービンの商用化とともに、100%水素専焼タービン技術も確立する計画だ。2021年6月には、2030年ごろをめどに100%水素だけを使う大規模タービンを商用化すると表明した。
2030年に水素だけを燃やす大型ガスタービンの商用化を目指している
出典:三菱重工業
1,650度の高温で水素を燃やし、世界最高水準となる約64%の発電効率を目指す。またNOxなどの発生抑制に向け、「マルチクラスター」と呼ばれる水素噴射技術も搭載する。
オランダのマグナム発電所(LNG焚き)を水素焚きに転換するプロジェクトに参画し、2025年ごろに世界初となる大型水素専焼発電の商用運転を計画している。また、アメリカ・ユタ州において計画される再エネ電力からグリーン水素をつくり、地下に貯蔵して発電する大型水素発電プロジェクトでガスタービンを受注した。同プロジェクトでは、2025年に水素混焼率30%で運転開始し、2045年に100%水素専焼運転を目指している。
脱炭素を勝機とし、三菱重工は水素タービンを国内外に売り込むとともに、水素製造時などに欠かせないCO2を回収し、貯留したり、資源として利用するCCUS技術の事業化も進めることで、2030年度までに3,000億円を稼ぐ計画だ。
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