デンマークから学ぶバイオマスのポジショニングとは | EnergyShift編集部

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デンマークから学ぶバイオマスのポジショニングとは

デンマークから学ぶバイオマスのポジショニングとは

2020/04/30
ブックマーク
2020/04/30
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デンマークの目指すエネルギーの未来

新型コロナウイルス感染症によって、在宅ワークが進む中、せっかくだから普段会えないメンバーで情報交換会をやろうということになり、今回は、デンマークの再生可能エネルギーに関わるメンバーとのオンライン座談会の時間を持つことができました。日本のバイオマスについても、示唆に富む話題もありましたので報告します。

デンマークは、2019年に政権交代が起こり、同年12月に新しい気候変動に関する法律が提案されました。これは、2030年までにCO2排出量を1990年比70%削減、2050年までにゼロエミッションにまで持っていくというもので、非常に野心的な政策です。
デンマーク大使館勤務の田中いずみさんによれば、「70%削減のうち、政府によって60%は想定されていますが残りの10%については主要13業種の業界団体トップが集まって議論されました」とのこと。

デンマークはよく知られているように、地域熱供給が非常に普及(2019年:人口の65%に供給)しています。バイオマス源の多くは木質バイオマスではありますが、農業大国であるデンマークでは日本と違って麦ワラで、大小様々なボイラーで燃焼させたり、あるいは中型の天然ガスコジェネ(コジェネレーション:熱電併給、デンマークは天然ガスが採掘されています)施設を利用しています。

地域熱供給の60%程度(2017年)が再エネで、その大半がバイオマスとのこと。これまでも新しいエネルギー政策が施行される度に地域熱供給が大きな役割を果たしてきており、今回も期待されています。

出典:Euroheat & Power

石炭による熱源も10%ほど残っていますが、田中さんによると「これをまずはフェードアウトさせることも決められており、2030年までにエネルギー全体における再エネ比率を55%、電気については100%以上に、そして地域熱供給の熱源は90%が非化石由来にしていく」とのこと。

ワラについては、「熱供給だけでなく、最近ではバイオガスプラントでのガス製造にも使われています。ガスは、貯蔵しやすく、また電化しにくい大型モビリティのグリーン化にもつなげやすいためです」という話題も紹介いただきました。

一方、「熱供給においてはバイオマスが不利な状況が見えてきた」そうです。

これは、電力市場の普及に関係があります。デンマークでは電力市場の多様化が進んでいて、ダイナミック・プライシングも実行されているということ。これによって、単価の高い時を見計らってガスコジェネを稼働させ、送電網に売電した上で、余剰熱をお湯として貯めて地域熱供給に提供する。単価の安い時には、電気を購入してヒートポンプでお湯をつくる。このように制御が容易なヒートポンプ技術とのパッケージに、バイオマス熱供給が押されはじめているとのこと。

日本でも東京、大阪をはじめ大都市圏に電気やガスを利用した大きな地域熱供給システムがありますが、田中さんによれば、「日本では電力市場の多様化は発展途上であり、既存の熱供給事業において電力価格を見ながら熱を生産したり、熱を貯めたりするという取り組みはほとんどない」そうです。ダイナミック・プライシングのない日本では、すぐに同じような状況は訪れないにしろ、こうした違いは興味深いものでした。

日本のバイオマスの未来

ここまでの議論を聞いていた高橋叶さん(森のエネルギー研究所)からは、「日本でのバイオマス熱利用は本当に悩みますね」という声。

現在の日本のバイオマス市場は、①FIT(固定価格買取制度)による大型発電が投資先のメインであり、②自治体や民間企業による直接燃焼ボイラー導入も進んでいます。

欧州ではFIT単価が下がったりFIP(Feed In Premium:プレミアム買取制度)に移行したりするなど、日本のFITよりも相対的に条件が悪く、日本市場に注目しているバイオマスコジェネの欧州メーカーがあるのも事実。

ただ、今後FITの条件が下がった場合はどうでしょうか。
デンマークの様子を聞けば、燃料仕入れなどランニングコストのかかるバイオマスが、限界費用の小さい太陽光や風力に対して、長期的にどのように対峙するかは非常に難しい問題です。
バイオマスは、そのエネルギーを最も活かすには熱利用が重要ですが、電力市場の自由化がもっと進めば、発電事業者のバイオマスへの参入は激しさを増すでしょう。そこからコジェネを使って余剰熱(お湯として貯めておくことは必須)が出てくるのは当然の帰結ですから、わざわざ熱だけのためにバイオマス燃料を投入して、こうした余剰熱よりも安価に熱供給する、というのは至難の技になりそうだというのが高橋さんや筆者の見立てです。

では、長期的にバイオマスの生き残るポジショニングとは何か。

ポイントは他の再エネにできない、という目線。たとえば産業用熱(蒸気製造)だったり、家庭の熱の自給用だったりが考えられます。そもそも林業・林産業を充実させることも重要です。足元の市場環境と、将来的なポジショニングを両睨みしながら、今できるベストウェイを実践し続けていきましょう。

井筒 耕平
井筒 耕平

1975年生。愛知県出身、神戸市在住。環境エネルギー政策研究所、備前グリーンエネルギー株式会社、美作市地域おこし協力隊を経て、2012年株式会社sonraku代表取締役就任。博士(環境学)。神戸大学非常勤講師。 岡山県西粟倉村で「あわくら温泉元湯」とバイオマス事業、香川県豊島で「mamma」を運営しながら、再エネ、地方創生、人材育成などの分野で企画やコンサルティングを行う。共著に「エネルギーの世界を変える。22人の仕事(学芸出版社)」「持続可能な生き方をデザインしよう(明石書店)」などがある

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