レポート:市民の力でソーラーシェアリング「あつぎ市民発電所」 | EnergyShift

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レポート:市民の力でソーラーシェアリング「あつぎ市民発電所」

レポート:市民の力でソーラーシェアリング「あつぎ市民発電所」

EnergyShift編集部
2020/03/31

市民が出資して発電事業を行う、いわゆる市民発電所は全国的な取り組みとなっています。事業として地域でお金を循環させると同時に、気候変動を防止したい市民の想いが形になったものです。 2020年1月11日、神奈川県厚木市では、「あつぎ市民発電所1号機」の通電式が行われました。農地を利用した、ソーラーシェアリング型の市民発電所ですが、それゆえのユニークな取り組みも行われています。

遮光率4段階のユニークなソーラーシェアリング

発電所があるのは、厚木市の中心部から北東にある飯山という地域。副理事長である落合清春さんが運営する落合農園の畑にあります。
発電出力は19.8kWの、小さな発電所です。発電した電気はFITにより、18円/kWhで売電されますが、販売先は特定卸供給契約により、みんな電力に売電されています。

この発電所がユニークなのは、4段階の遮光率になっていること。南側は32%ですが、最も北側では62%となっています。

作物は主にサツマイモを予定しており、その他にサトイモ、ジャガイモ、落花生をローテーションで作り、北端はミョウガを栽培するということです。これにより、遮光率による生育の違いなどを試験することができるということです。
また、農業の六次産業化にも取り組み、サツマイモの粉末を使ったお菓子の開発なども行うということです。

落合さんによると、ソーラーシェアリングにすると、夏は日差しが緩和され、多少の雨でも農作業がしやすいということでした。 将来は営農集団をつくり、後継者を育て、FITと同様に20年間の営農が可能な体制をつくりたいということです。

ソーラーシェアリング型の設備

きっかけはチュルノブイリ

発電事業を行うのは、一般社団法人あつぎ市民発電所。設立発起人の一人である遠藤睦子理事長が、エネルギーに取り組むきっかけとなったのは、チェルノブイリや福島県の原発事故だったといいます。 それ以前からも、環境問題には関心があったのですが、本格的に取り組むことにしたのは、退職後の2016年でした。市民発電所に関わってきたNPO法人やそのメンバーなどから教えを受け、2018年に一般社団法人あつぎ市民発電所を立ち上げました。

市民の出資による資金をもとに発電事業を行い、売電収入から返還していく、というしくみです。同時に講演会などの市民活動を行うにあたっては、会員からの会費を活用し、地域と連携したまちづくりを目指すということです。

市民の想いで拡大する再エネ

通電式の日、午前中の設備見学会のあとは昼食。オーガニックカフェ「晴れ屋」さんの植物性食材100%のお弁当をいただいたあとは、厚木市文化会館で設備説明と記念講演会が行われました。

市民エネルギーちば株式会社の代表取締役である東光弘さんの記念講演では、昨年の台風による停電時に、ソーラーシェアリングの電気を無料充電所として地域の方々に使ってもらった経験を通じて、メディアとしての電気ということが話されました。2030年にはご近所電力として、送電線に依存しない地域電力網を考えているということです。

鴨川自然王国主宰で歌手でもあるYaeさん(加藤登紀子さんの次女)は、日本の里山を伝えていきたいということでした。最近は野生動物が畑を荒らすので、狩猟免許を取得し、捕まえたイノシシは鍋にしたということです。最後に素敵な歌を2曲、披露してくれました。

Yaeさん

なぜ脱原発がドイツでできて日本でできないのか。それを問うたドキュメンタリー映画「モルゲン、明日」の監督である坂田雅子さんは、各地の市民活動をつなげ、点を面にしていくことを提案しました。坂田さんの次の映画は、かつて核実験が行われた島を含み、現在は海面上昇に直面する、マーシャル諸島のドキュメンタリーです。

通電式には、主催者の予想を超える多くの参加者がありました。そこには、市民の強い想いが感じられます。
事業用太陽光発電がFITの対象から外れる方向にある中、これからの市民発電所には課題は多いことでしょう。それでも、再エネ社会を目指すはっきりした意思があれば、非FITやPPA、あるいは今回のようなソーラーシェアリングのような形で拡大してくのではないでしょうか。

左から、竹村英明さん(市民電力連絡会理事長)、遠藤睦子さん(あつぎ市民発電所理事長)、落合清春さん(あつぎ市民発電所副理事長、落合農園主)

(Photo:岩田勇介、Text:本橋恵一)