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AI+太陽光+電池で電気代が85%安くなった!―米NERLの最新実証実験

AI+太陽光+電池で電気代が85%安くなった!―米NERLの最新実証実験

2020/12/11

原子力発電も火力発電も使わず、環境に優しい太陽光発電と電池だけを使って最新のAI技術があたかも自動運転している車のように自ら判断して稼働、電気料金を9割近く値下げしつつ電気自動車を充電し、冷暖房も提供する-そんな夢のような脱炭素プロジェクトが米国で完成に向かっている。どのようなプロジェクトなのか、日本サスティナブル・エナジー株式会社の大野嘉久氏が紹介する。

日本では自由化でも電気代は大幅には下がらなかったが・・・・・

日本では2016年4月1日から電気の小売業への参入が全面自由化され、今では全ての消費者が電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになった。かつて地域に1社しかなかった電力会社はさまざまな業種からの新規参入によって大幅に増え、今では熾烈な価格競争が全国で展開されている。

とはいえ電気をつくるには天然ガスや石炭などの火力では多額の燃料費が、原子力では膨大な建設費と維持費とバックエンド費用がかかるため、いくら競争が激しくても値下げには限度がある。再生可能エネルギーは燃料費がかからないものの、現状では固定価格買取り制度(FIT)によって支えられている部分も大きく、電力価格の引き下げに大きく貢献しているとは言いがたい。

その結果、新旧電力会社の身を切るようなコスト削減にもかかわらず、今のところ日本の電力価格は自由化によって大幅な値下げが実現したとは言えない状況となっている。福島第一原発事故という想定外のコスト上昇要因はあったが、下の図を見る限りでは、仮になかったとしても日本が電力自由化によって20%とか30%も値下がりすることはなかったであろう。

日本における電気料金平均単価の推移


出典:資源エネルギー庁「日本のエネルギー 2019年度版 エネルギーの今を知る10の質問」

AI+屋根上PV+蓄電池で電気代85%削減!

ところが、米国国立再生可能エネルギー研究所(The National Renewable Energy Laboratory/NREL)はこのたび、屋上の太陽光発電パネルと蓄電池、そして人工知能(AI)などを組み合わせて電気料金が一般的な水準より85%も安くなる実証システムを完成させた。


米国コロラド州バサルト・ビスタ町マイクログリッドの参加家屋 出典:米NREL

コロラド州のバサルト・ビスタは人口4,170人、冬にスキー客でにぎわう山岳地帯にある町だが、地元の電力会社ホーリー・クロス・エナジー社は山々に点在する需要地に電力を送るために長い送電線を管理しなければならない。しかし2018年に発生した山火事によってバサルト・ビスタへの送電線の直下にある地帯にも延焼が及んだことで、電力需要が最も多くなる冬の停電リスクを顕在化させた。



米国コロラド州バサルト・ビスタ町マイクログリッドの参加家屋 出典:米NREL

NRELが高度配電管理システムを開発

そんな折、NRELのエネルギーシステム統合施設(Energy Systems Integration Facility/ESIF)が従来から研究していた高度配電管理システム(Advanced Distribution Management System/ADMS)の実証プラントを実施する場所を探しており、条件が良く地理的にも近いバサルト・ビスタ町が選ばれることとなった。


NRELの高度配電管理システム開発に取り組むエンジニア 出典:米NREL

このプログラミングで用いられるのはNODES(Network Optimized Distributed Energy Systems)というアルゴリズムであり、モデルとなった家では次のような工事が実施された。

  • いわゆるオール電化住宅とする
  • 温水器と従来の主要な暖房器具であったかまどを使わず、寒冷地向けヒートポンプに切り替える
  • リン酸鉄リチウムイオン蓄電池を設置
  • 8kW太陽光発電設備を自社の屋上に設置

参加する家庭はまず1軒から始まり、次に4軒まで拡大してマイクログリッドを形成、外部の電力系統とは家庭ごとではなくマイクログリッドが接続する形になる。そして最終的には27軒まで増やす計画であるが、それらの家では太陽光パネルで発電した電力を電池に貯め、電力をネットワークでシェアし、EV(電気自動車)にも充電する。

つまり全てのエネルギーをNRELのNODESアルゴリズムが自律的に、適宜分配してくれるわけだが、それで電気料金が標準より85%も安くなるというから驚きである。

また再生可能エネルギーだけでは信頼性の面で心配になるが、停電がないばかりか、NODESアルゴリズムによって外部系統が何らかの要因で停電となっても春から秋の間であれば太陽光発電と電池だけで数日間は暮らせるという(ただしバサルト・ビスタ町における電力需要ピークの冬は2時間しかもたない)。

NRELでは、このAIによる自律稼働を自動エネルギー系統(Autonomous Energy Grid/AEG)と名付けており、将来のエネルギー像と位置づけてNRELにおいて研究されている。


NRELの高度配電管理システム開発に取り組むエンジニア 出典:米NREL

NRELはバサルト・ビスタ町で実証しているNODESアルゴリズムを米国中に拡大できると考えており、最終的には国土の半分以上をカバーして4,000万人以上に安価で信頼性の高いエネルギーを提供できるという。

「再生可能エネルギーだけでOK」「電力価格が従来の15%」という夢のようなこのシステム、米国だけにとどめることなく、ぜひ世界中に広げてもらいたいものである。

大野嘉久
大野嘉久

経済産業省、NEDO、総合電機メーカー、石油化学品メーカーなどを経て国連・世界銀行のエネルギー組織GVEPの日本代表となったのち、日本サスティナブル・エナジー株式会社 代表取締役、認定NPO法人 ファーストアクセス( http://www.hydro-net.org/ )理事長、一般財団法人 日本エネルギー経済研究所元客員研究員。東大院卒。

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