世界3位のポテンシャルを持つ日本の地熱発電 普及が進まない事情とは | EnergyShift

脱炭素を面白く

EnergyShift(エナジーシフト)
EnergyShift(エナジーシフト)

世界3位のポテンシャルを持つ日本の地熱発電 普及が進まない事情とは

2021年11月12日

世界で盛り上がる地熱発電とは

地熱発電は地中から150度を超す熱水を取り出して、この蒸気でタービンを回し発電する。脱炭素の潮流を受け、世界でも電力の安定供給が可能な地熱開発が盛り上がっている。IRENA(国際再生可能エネルギー機関)によると、2020年末での導入量は1,400万kWを超え、この10年で4割増加した。

地熱発電にはシングルフラッシュ、バイナリー、高温岩体の3種類がある。

一般的な地熱発電として、日本でもっとも多く導入されているのがシングルフラッシュだ。

深さ数キロメートルにある火山帯に地下水が染み込んでいくと、地下水はマグマ溜まりで高温に熱され、この熱水を取り出し、蒸気でタービンを回して発電するのが、シングルフラッシュ方式である。もっともシンプルな方式として、日本最大の地熱発電所、九州電力の八丁原地熱発電所(出力5万5,000kW×2)も同方式を採用している。


出典:経済産業省

また、国内で23年ぶりとなる大規模地熱として2019年に稼働したJパワーの山葵沢地熱発電所(出力4万6,199kW)もある。

だが、シングルフラッシュには課題もある。それがスケールと呼ばれる熱水を輸送するパイプに沈着する物質だ。地下水には二酸化ケイ素や炭酸カルシウムなどが含まれており、これら物質がパイプに沈着し続けると目詰まりを起こし、熱水輸送を低下させてしまう。スケールによって輸送量が著しく低下すると、新たな生産井を掘削しなければならない。


Jパワーの山葵沢地熱発電所(秋田県)
出典:Jパワー

温泉熱を利用したバイナリー発電

2つ目が100度前後の温泉熱を利用し発電するバイナリー発電。ただ100度では温度が低くタービンを回せないため、非常に気化しやすい代替フロンなどの熱媒を使うことで、蒸気をつくり、タービンを回すしくみとなっている。ただし、代替フロンも温室効果ガスの1種であるため、回収・冷却して液体に戻し、再び温泉熱で気化するという循環システムが導入されている。蒸発、冷却と2つの熱サイクルがあることから、バイナリー発電と呼ばれている。

比較的、小規模地熱が多いバイナリーだが、北海道函館市で6,500kWの地熱開発がオリックスによって進められている。


出典:日本地熱協会

海外ではスタートアップの進出も・・・次ページ

藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

エネルギーの最新記事