地熱拡大に向けた課題のひとつが開発リスクだ。
地熱は常に資源がないなどの掘削失敗リスクを伴う。JOGMECによると、初期調査段階でも数百メートルから2,000メートル程度の坑井掘削を行う必要があり、掘削コストは数千万円から数億円にのぼる。また、開発の初期段階における掘削成功率は3割程度にとどまる。掘削失敗が重なると、資源があっても事業化できない事態にも陥る。開発リスクを低減させるためにも、JOGMECが担う資源調査は重要度が増している。
開発リードタイムの短縮も不可欠だ。日本地熱協会は、規制関係は内閣府規制改革タスクフォースにおける議論に沿って、関係省庁で対応が進むが、実効性があるものになるかどうかは、注視が必要だという。
また、地熱は山間部が多く、立地条件上厳しいため、国の助成拡大も欠かせない。
10月29日に開かれた調達価格等算定委員会では、「地熱発電は掘ってみないとわからないというところがあり、投資リスクが非常に大きい。ある意味、博打だ」といった意見があがった。
松村敏弘東京大学社会科学研究所教授は、「地熱は固定価格買い取り制度(FIT)の支援だけでは限界なのではないか。FITは開発が成功したときに、収益を底上げすることは可能だが、開発が失敗したら収益はゼロ。つまり、リスクを減らすことができない制度だ。FIT以外の支援政策に移行する局面を迎えたのではないか」と発言した。
地熱は天候や昼夜を問わず、発電できる重要な電源だ。しかも、日本は世界第3位の資源国でもある。だが、過去10年の状況が示すとおり、開発リスクの低減に向けた新たな支援がなければ、2030年度目標の達成は危うい。日本の地熱の勝負はあと9年で決まるのかもしれない。
(Research:本橋恵一)
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