2020年8月13日、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビに拠点を置く再生可能エネルギー開発企業のマスダール(Masder)は、アメリカの再生可能エネルギー事業への戦略的投資を行うことを発表した。同社にとっては、アメリカへの2番目の戦略的投資となるという。
8件合計1.6GWの再生可能エネルギー
2020年8月13日、Masderは、アメリカの電力会社EDF Renewables North Americaとの間で、8件合計1.6GWの再生可能エネルギー事業に関する株式の50%を取得することを発表した。
事業が行われる地点は、カリフォルニア州、ネブラスカ州、テキサス州にわたっており、風力発電、太陽光発電、蓄電池のプロジェクトが含まれる。
風力発電はネブラスカ州とテキサス州の計3ヶ所、815MWのプロジェクトとなる。いずれも現在建設中で、2020年第4四半期には運転を開始する予定。
また、太陽光発電はカリフォルニア州の計5ヶ所、システム容量で689MWに75MWのリチウムイオン蓄電池を併設したプロジェクト。うち4ヶ所については、同じく2020年第4四半期に運転を開始する。残り1ヶ所も2021年に運転開始の予定だ。
太陽光発電はいずれも水平短軸追跡技術を採用しており、設備利用率を高めたものとなっている。発電した電力は、電力会社をはじめ、電力アグリゲーターなどに向けて、長期契約に基づいて販売される予定。
Masderによると、今回のプロジェクトを通じて、約2,000名の雇用の創出と、年間300万トンのCO2削減になるという。
MasderのCEOであるMohamed Jameel Al Ramahi氏は米国について、設置済み再生可能エネルギー発電の容量の点で、世界第二位とした上で、「再生可能エネルギーポートフォリオのさらなる成長と多様化の大きな余地がある。この画期的な取引を通じて、EDF再生可能エネルギーとのグローバルパートナーシップをさらに強化することで、プレゼンスを拡大できることをうれしく思う」と述べている。
なお、北米での最初の案件は、2019年1月に発表された、米国テキサス州とニューメキシコ州のそれぞれ149MW、29.9MWの風力発電である。
再生可能エネルギーで存在感を強める中東マネー
Masderは、Mubadala Investmentの子会社として2006年に設立された再生可能エネルギーの開発・運営を行う企業で、持続可能な未来都市Masder Cityの運営も行っている。UAEをはじめ、先進国・途上国を含め、およそ30ヶ国に拠点を持ち、太陽光発電と風力発電を合わせ、およそ45億ドルの投資を行っており、関わっている案件の発電容量は5GWに達するという。
今回のEDFとのコラボレーションの背景には、すでにMasderとEDFとの間で中東および北アフリカでコラボレーションしてきた経験がある。
気候変動問題の深刻化にともなって、中東産油国は経済の石油依存脱却を進めているが、Masderはそうした動きを象徴する企業のひとつだといえる。また、近年石油生産を増加させてきた米国において、中東の企業が再生可能エネルギーに投資し、その存在感を強めているという点も、エネルギーの脱炭素を象徴する一面だといえよう。
(Text:本橋恵一)
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