台湾のソーラーシェアリングの現在:「農電共生」、「漁電共生」と「畜電共生」 | EnergyShift

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台湾のソーラーシェアリングの現在:「農電共生」、「漁電共生」と「畜電共生」

台湾のソーラーシェアリングの現在:「農電共生」、「漁電共生」と「畜電共生」

2021/03/16

台湾でも日本と同様に、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)が注目されている。ただし日本と異なり、漁業や畜産業におけるソーラーシェアリングも視野に入っている。とはいえ、発電事業の現場にはまだまだ課題が多い。JETRO・アジア経済研究所研究員で東アジアのエネルギー問題の専門家、台湾在住の鄭 方婷(チェン・ファンティン)氏が具体的な事例をもとに紹介する。

「ソーラーシェアリング」の推進背景

前回の連載では、台湾の全体的な太陽光発電政策から、発電のタイプ別分類、「小光電」と呼ばれる小規模太陽光発電事業の実態と懸念、またそれに対して行政院農業委員会が実施した強力な規制について紹介した。今回は、土地の転用等に対する新たな解決策として模索される「ソーラーシェアリング」について掘り下げる。

「ソーラーシェアリング」とは、広義では農林漁牧生産地における太陽光発電事業との両立を指す。例えば農地の上に太陽光発電設備を設置するといったように、ひとつの土地を二階建てで活用することで農家の収益安定化を目指すビジネスモデルであり、農地だけでなく、水産・家畜・家禽等の養殖場にも積極的な導入が計画されている。

前回の連載で触れたように、農業と両立しない小規模太陽光発電事業(小光電)では、農地からの土地用途変更が不要な点に乗じた乱開発が問題となっている(写真1)。中でも多いのが、「農家が農業を放棄し、土地ブローカー経由で太陽光発電開発業者に農地を貸出すことで、農業の収益より10倍も高い賃料を手に入れる」という類の事例である。マスメディアを先頭に、農業の持続可能な生産や生態・環境保護に関心のある団体や個人による強い批判を受け、2020年7月、ついに行政院農業委員会が小光電の開発を禁止する事態に発展した。

写真1 苗栗県内にある「小光電」発電施設。乱開発・景観破壊などが懸念される。

苗栗県内にある「小光電」発電施設。乱開発・景観破壊などが懸念される。
出典:陳喬琪撮影。

既に小光電拡大を見込んで膨大な投資をしてきた太陽光発電事業者はこの決定に対し猛反発しているが、小光電の開発規制が厳しくなるにつれ、陸上タイプ地面型開発案件への入札に慎重になっている。また再エネ拡大の主軸となる陸上地面型の導入ペースが鈍化したことで、政府は国の所有地を整理し事業者に貸し出す体制を急ぎ整えようとするなど対策に追われている。今後政府は、農地保護だけでなく太陽光発電業者との信頼関係の修復にも注力していく必要がある。

一方で、新規に土地が必要な小光電に対し、既に別の用途で使用中のスペースを活用する「ソーラーシェアリング」はリスクが低い。ソーラーシェアリングを細かく分類すると、陸上の農地では「農電共生」、養殖池では「漁電共生」、家畜舎では「畜電共生」といった様々なスタイルがある。

「農電共生」の推進状況と課題

ソーラーシェアリングの中で最も普及しているのが、田畑の上方に太陽光パネルを設置する農電共生(写真2)である。

写真2 苗栗県における、ある農電共生の予定地


出典:陳喬琪撮影。

とはいえ現実には、農業と太陽光発電を両立させるという建前とは裏腹に、収益が太陽光発電に大きく偏る場合も多い。例えば手のかからないシイタケの栽培キットを発電パネルの下に置いておくだけで農電共生としてカウントされるケースもあるなど、小光電と同様、農耕作放棄につながることが強く懸念されている。

農業委員会は小光電の規制の際、農電共生に対しても厳格な措置をとったことから、その後農電共生の推進は事実上止まっている。現在は、公的機関・試験センターによる実証を通じて農電共生の主旨に一致する農作物や営農スタイルを特定し、農業委員会の審査を経て開発を可能にするという方向で調整中である。

一方、農業委員会が農電共生に厳しい立場を崩さないことから、経済部は漁電共生を積極的に推進するようになった。

「漁電共生」の推進状況と課題

漁電共生は、養殖池の水面に直接パネルを浮かべるか、陸上タイプのように水面上方に屋根を立て、パネルを設置して発電する形態であり、政府は今後重点的に推進していく方針である(写真3)。

写真3 ハマグリ養殖実験の様子(雲林県・台西試験場)

ハマグリ養殖実験の様子(雲林県・台西試験場)出典:行政院農業委員会水産試験所。

農業委員会が水産試験所で行った実証実験によると、漁電共生によって、太陽光パネルの断熱効果による環境温度の安定化や、大雨等の際に雨水の流入を抑制して養殖池の塩分が安定化する等のメリットがあることがわかっている。

また最新の規定では、パネル設置後も養殖生産量の7割を維持できる場合、漁電共生の「専門区」が設置でき、その開発案は農業委員会の審査を通れば実行可能となる。一方で、経済部と農業委員会は共同で「先行区」を設置することができる。先行区とは、農業委員会の審査なしで開発可能な事業区域であり、現在台湾中南部の西海岸部では、嘉義で876.16ha(ヘクタール)、台南で1,750.13haが既に設定されており、今後は高雄・屏東で1,289ha、彰化・雲林で1,345haと拡大が続く予定である。

ただ、漁電共生にも深刻な懸念点が浮上している。嘉義・台南ではハマグリの養殖業が盛んだが、露天の養殖池に太陽光パネルを設置すると、日光が遮蔽され水中の藻類が増殖しにくくなることで、これを主食とするハマグリの生育に不利になることがわかってきたのである。農業委員会の水産試験所による実験では、ハマグリ一個当たりの販売基準20グラムに対し、太陽光パネルの設置により6.5グラム程度にしか育たないという結果が出たことで、改善策が探られている。

しかし、名産のハマグリ養殖に対するマイナスな影響にも関わらず、同地域の先行区には農業委員会の審査なしで開発できるというメリットに太陽光発電業者が殺到している。発電業者は先行区の地主に割高な賃料を払って発電事業を展開するが、同じくハマグリ養殖業者もこれまで地主に賃料を払って養殖業を営んできたという場合が多い。一部の地主は地元の主要産業の一つであるハマグリ養殖の衰退を懸念しており、産業保護の立場から発電業者との賃貸契約を解約するケースも出ている。

この事態を受けて政府は、太陽光開発業者、研究機関、養殖業者による三者間連携を奨励し、天候に影響されにくい屋内型水産養殖場へのパネル設置拡充も視野に、漁業の生産を優先しながら漁電共生を進める方針である。

「畜電共生」の推進状況と課題

豚肉、鶏肉、鶏卵などの消費が多い台湾では、養豚場・養鶏場に屋上型の太陽光発電システムを導入し、畜電共生による増収を狙う畜産業者も少なくない。屋上型故に農業委員会による審査は必要ないが、課題もある。

一つは、既存のグリッド(発送電網)がない、または容量が足りないことである。グリッド・変電所などの設置権限は台湾電力公司(Taipower)にあり、一定の条件を満たさなければ拡充または新規設置されない。畜産業者が単体で電力を生産する場合、グリッド環境を改めて整える必要があり、長い年月と大きなコストがかかる。こうしたインフラ環境の問題は、ソーラーシェアリングだけでなく再生可能エネルギー開発全体に関わる課題である。

また、建物の耐重性能にも課題がある。多くの養豚・養鶏場は、屋根だけでなく建物自体の老朽化によって太陽光パネルの設置には向いておらず、パネルを設置するには建物全体の改修・改築工事まで必要となる。他にも、再生可能エネルギーに対する理解不足から、行政や業者が設置の誘致を行っても畜産業者が屋根の提供を拒む例もあり、説得に大きな労力・時間が費やされるといった問題も起こっている。

次回の連載に向けて

平坦で開けた土地に乏しい台湾だが、2025年再生可能エネルギー20%の達成には太陽光発電の導入を急がなくてはならず、様々な打開策が検討されている。今回は、「農電」、「漁電」、「畜電」というソーラーシェアリングの各モデルについて紹介したが、それぞれまだ問題も多い。

近年、再生可能エネルギー、とりわけ太陽光発電が導入できるかどうかを総合的に評価するシステムが開発され、「エコロジカル・チェック&検証」(Ecological check and verification;中国語では『生態検核』)、台湾では特に「環境と社会検核メカニズム」とも呼ばれている。次回はこれについて詳述する予定である。

鄭方婷
鄭方婷

国立台湾大学政治学部卒業。東京大学博士学位取得(法学・学術)。東京大学東洋文化研究所研究補佐を経てJETRO・アジア経済研究所。現在は国立台湾大学にて客員研究員として海外駐在している。主な著書に「重複レジームと気候変動交渉:米中対立から協調、そして「パリ協定」へ」(現代図書)「The Strategic Partnerships on Climate Change in Asia-Pacific Context: Dynamics of Sino-U.S. Cooperation,」(Springer)など。 https://www.ide.go.jp/Japanese/Researchers/cheng_fangting.html

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