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導入ポテンシャル世界5位 眠れる水力大国、日本 清水建設、リコー、ヒューリックなどが参入、それでも小水力発電が増えない理由とは

2022年01月12日

清水建設、北陸電力、ヒューリック、参入企業もじわりと増加

政府も小水力の導入を後押ししようと、FIT制度で他の再エネより有利な価格で買い取ることを保証している。事業用太陽光発電の多くは入札制度に移行し、買い取り価格が10円台まで低下する中、小水力は2023年度まで200kW以上1,000kW未満は1kWhあたり29円、200kW未満なら34円で買い取ることが決定済みだ。

高いFIT価格に、簡単な発電原理、そして適地さえあれば誰でもつくれることから、小水力への参入企業はじわじわと増えつつある。

清水建設は2019年1月に本格参入し、総工費約16億円を投じ、富山県内に960kWの小水力発電施設を建設、2021年5月に稼働させた。年間約1.8億円の売電収入を見込む。同社は10数ヶ所で開発に取り組み、2030年までに総発電能力1万kW、総売り上げ20億円の事業体制を構築すると表明している。

北陸電力グループも2021年5月、水資源が豊富な富山県に400kWの小水力発電所を建設すると発表。投資額は約9億円で、2024年6月の稼働を予定する。

不動産ディベロッパーのヒューリックは群馬県に建設していた発電出力199kWの小水力発電施設を2021年5月に稼働させた。同社は2030年の脱炭素を目指し、14ヶ所の開発目標を掲げる。

小水力で過疎地のインフラを再構築する取り組みも

水資源は地域のものとして、地域が主体となって開発する事例も出てきている。

少子高齢化によって過疎化が進む地方において、上下水道の維持や道路の除雪、農業用水路の管理など、インフラ維持はますます難しくなっていく。だが、地域の水資源を活用して発電し、その売電収入からインフラを維持・管理費用をまかなう。そんな取り組みがはじまりつつある。

100世帯あまりが住む富山県朝日町笹川地区は、簡易水道が老朽化しており、水道施設を更新するための費用、約3億円が確保できず、数年後には水道水が使用不可になる可能性があるという。そこで地元の建設会社、深松組はすみれ地域信託と組み、笹川に199kWの小水力発電施設を建設。発電所の所有・運営に信託を活用して発電事業の継続性を保ちながら、3億円を捻出しようと取り組みを進めている。発電施設は2023年6月に稼働する見込みだ。

水道施設そのものに小水力発電を導入する機運も高まりつつある。その1社がリコーだ。

2015年時点の環境省と厚生労働省の合同調査によると、水道施設の小水力導入ポテンシャルは全国で1万9,000kWあるという。しかし、小水力を導入した水道施設はわずか2.7%にとどまる。リコーは水道設備の有効活用を目指し、山梨県大月市と上野大原市が運営する「東部地域広域水道企業団」の協力のもと、2021年6月に上下道施設を利用したマイクロ水力発電を開始した。同社は水道施設を利用したマイクロ水力の普及を全国大で目指す

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藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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