英国で急成長しているオクトパスエナジーは、2021年2月に日本法人が設立されていた。そして今年2月にグリーン100%メニューを含む料金メニューを発表し、本格的に小売ビジネスを日本で始めた。日本展開の戦略とオクトパスエナジーの特徴、料金の狙いについて、オクトパスエナジー日本CEOの中村 肇氏に聞いた(2回)。
■オクトパスエナジーの日本と英国の関係、そして日本戦略は。
中村 英オクトパスエナジーは、イギリスで成功したビジネスを世界に広げようとしています。その流れの中で日本での展開を考えており、昨年、東京ガスといっしょにジョイントベンチャー(JV)を組んで、できるだけはやく日本でのオクトパスブランドを立ち上げようと合意しました。
英オクトパスエナジーのグローバル戦略として、単にクラーケンテクノロジー(後編にて説明記載)を広めるだけではなく、各国企業と組んで行うという戦略がありました。そこで、日本で当時、東京ガスが新電力として多くの数*をとっていたこともあり、パートナーとして東京ガスを選びました。一方、東京ガスもオクトパスエナジーには注目していたので、うまくまとまりました。
その後立ち上げの準備に追われ、今年の1月に日本での料金メニューができ、本格的に小売事業を立ち上げたという状況です。
*2021年4月で世界300万件
■欧州で展開しているように、クラーケンシステムのみの展開ではなく、オクトパスエナジーというブランドを日本で立ち上げられました。
中村 英オクトパスエナジーは非常に再エネへの移行、環境ドリブンなことをやろうとしています。一方、東京ガスを含む電力会社は、既存ビジネスの延長を、電力自由化というコンテクストだけでやっていた。そのため、新しい会社では新しい価値観を訴求したほうがいいという風に考えたのです。
JVではあるが、オクトパスエナジーというブランドを日本で展開して新しい環境価値やエネルギー体験をユーザーに訴求することがいいだろうというのが、両会社の判断としてありました。
オクトパスエナジー日本CEO 中村肇氏
■日本に進出するにあたって課題は?
中村 ひとつは制度の問題があります。例えば、エネルギー供給構造高度化法。非化石証書の売買や、FIPや再エネ賦課金という制度があるという違いがある。一般的には日本の電力料金は燃料費調整制度や、従量料金が使用量帯に沿って変わる、しかもだんだん値上がりしていくという特殊な形態があります。
これらは既存の電力会社がつくってきた基準です。当然、そういう制度に慣れたお客様を意識しながら料金体系をつくっていかなければならない。そこが日本の特徴です。
実はスイッチングや送配電(グリッド)会社に託送料金を払うというような、大きな枠組みとしての制度は、日本とイギリス、あるいは(オクトパスエナジーを展開している)オーストラリアでも、あまり違いがないのです。クラーケンはもともとイギリスの制度でつくられているプラットフォームですが、8割から9割くらいは日本でも使える、という感じになっています。歴史的な背景では日本の制度はイギリスを参考に制度化した部分も多く、それが功を奏したともいえます。
日本でのJVを立ち上げてから、最初のプロダクトをつくっているのですが、本格的にシステムをカスタマイズしたのはここ2〜3ヶ月。それでベースとなる開発はある程度完了したと言えるでしょう。
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