■今回発表した、個人向け料金メニューの特徴は。
中村 今回はまず、一般家庭向けの、いわゆるアンペア契約といわれている料金メニューをつくりました。この基本的なプランは、従来の電力会社と同じ、基本料金プラス三段階の従量料金になっており、電力使用量や使用パターンに関わらず、メリットが出るような料金メニューです。
今回、私たちがこだわったのは実質再エネ100%のグリーンプランです。これはスタンダードプランよりも料金が安くなっており、環境にこだわる、興味ある方にぜひオクトパスエナジーを選んでいただきたいと思ったのです。
電力自由化だけのコンテクストでやると、価格面の訴求だけになることが非常に多く、価格以外は興味がなくなる。そのせいもあり、メニューの選択肢が少なかったというのが今までの日本の状況です。
一方、再エネはヨーロッパで進んでいますが、環境コンシャスなユーザーに対して安いグリーン料金メニューが出てくると、ヨーロッパの市民でも相乗効果で広がりが生まれるのです。
日本も、グリーン料金メニューがどんどん増えると市民への広がりもでてくるのではないか。出血大サービスではないが、グリーン電力をまずはみなさんに使っていただきたい。そういうことを考えての料金体系です。
■電源構成比はどうなっていますか。
中村 調達元が東京ガスメインでもあるので、電源構成比はこのようになります(図)。これらの電源に対し100%非化石証書をつけていく。日本の電事法では、「実質再エネ」という表現になります。
今後は電源のトラッキングも付加した相対契約を増やしていくと、電源構成比も変えられることも考えられるのですが、まだ先の話です。電源構成がどうであっても再エネ証書は必須なので100%カバーするという風にして提供しています。
もともとどんな電源でも非化石価値(環境価値)は全部はぎ取られている。電源構成は、市場から調達する電気であれば、市場における電源構成比の平均構成比でださないといけない。
相対でとればもちろん相対ですが、相対の相手がさらに別の電力会社から調達する場合は、その電力会社の平均電源構成比になる。要するに、いまの日本の制度では、ひとつひとつの電源ごとの取引はあまりできないのです。
もともと再エネしか持っていない、小さい事業者と直接相対でとれればそこだけ再エネピュア、100%になりますが、そうはしていません。今後、再エネを含む電源種別が、よりユーザーの関心になってくれば、今度はひとつひとつの電源ごとに取引ができる社会制度基盤をつくらないといけなくなってくるでしょう。
私たちは発電会社と相対取引をするか市場から取引するか、ふたつしかない。電源構成比は発電会社の平均電源構成か、市場の平均電源構成、このパターンしかない。そこは英オクトパスエナジーと大きく違うところです。
■イギリスのエネルギー危機、LNG危機と日本での戦略は関係があるでしょうか。
中村 一般的に電気料金は、電源そのものの価格と非化石価値のプレミアムの部分との合計。電源そのものの価格は、たしかにLNGや石油の価格がグローバルに上昇したりすると全体的にあがる。これはイギリスでもあがっているし、日本でもあがっていく要素を持っている。今のしくみでは、電源そのものの価格は、一定の範囲内でお客様に負担いただくような形で転嫁するしくみになっている。そこは私たちも変えていない。
一方、非化石価値に対するプレミアは、日本でも非化石市場が立ち上がってきているので、そこで調達していくことになる。他の企業も同じ調達価格になるが、そのコストは我々のテックなどの企業努力で下げ、なるべくお客様に転嫁したくないと思っている。もちろん、市況にも因ります。
いまは非化石価値証書もまだたくさん買える状況なので、まずはそこから調達し、テックで吸収する。日本でも、将来的には証書も足りなくなるので、いつかは吸収できなくなるということもあるかもしれない。ただ、今は環境にいいものを自分たちでがんばってお客様に届けたい。
イギリスのような企業向けの料金メニューも、時期はまだ決まっていませんが、なるべくはやくはじめたいですね。
(後編に続く)
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