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アメリカの再エネビジネス、 太陽光とバッテリーの関係から見えるもの

アメリカの再エネビジネス、 太陽光とバッテリーの関係から見えるもの

アメリカの再エネビジネス、
太陽光とバッテリーの関係から見えるもの
アメリカ再エネ最前線レポート
阪口幸雄クリーンエネルギー研究所代表に聞く

クリーンエネルギー研究所代表・阪口幸雄氏によるアメリカエネルギー革命の分析、その後編をお届けする。
阪口氏はシリコンバレーでクリーンエネルギーや環境技術を長年研究している専門家。

今回は、再エネ100%に本気で挑むカリフォルニア州やハワイ州の太陽光発電・バッテリーマーケットの動向とともに、マイクログリッド社会の到来を予測する。

「SAKAGUCHI model」で再エネビジネスを解析すると

アメリカの太陽光発電とバッテリーマーケットは、規模やコスト、制度がまったく違う。それぞれ電力会社向け、C&I(Commercial &Industrial)向け、一般家庭向け、3つのビジネスモデルに分けて考える必要があります。このような複雑なアメリカ市場を解析するために、私が作成したのが「SAKAGUCHI model」と呼ぶマトリックスです。

まず電力会社向けの再エネビジネスです。

独立系発電業者(IPP)と、送配電専門業者(ユーティリティ)。電力会社向けのビジネスモデルは、この2つの傾向にはっきりと分かれてきました。

たとえばカリフォルニア州では、IPPはモハべ砂漠のようなところにメガソーラーをつくります。非常に日照時間が長いため、安定した電源になりますが、やはり天候によって発電量はアップダウンするし、昼夜調整をしなければならない。そのため、メガバッテリーを変電所に設置します。これは、1ヶ所あたり100MW/400MWhのような巨大なバッテリーになります。1度、電力会社を通過して、変電所などに設置されたバッテリーで発電量の調整(シワ取り)をし、フラットな電力にしてから、需要家に供給するというタイプです。

一方、ハワイ州では最初から太陽光発電の隣にバッテリーを併設する。発電所でフラットにした電力を電力会社に送るモデルなんです。どちらを選択するかは、州政府の判断によって分かれます。ハワイではこの太陽光発電 +バッテリー併設モデルが今、中心になっています。

ハワイ島やオワフ島、マウイ島でもそうです。さらに、日没後に太陽光発電が止まっても4時間は電力を放出できるようなバッテリーを併設しなければ、電力会社が電力を買取らない傾向が進んでいます。IPPと電力会社との間で締結するPPA(Power Purchase Agreement:電力販売契約)は、4時間分の電力を充放電できるバッテリー併設型太陽光発電が中心です。

このPPA価格ですが、いま、8〜10セント/kWhという、画期的なプロジェクトが出始めました。LNG火力発電が5/kWhです。太陽光発電単体だとLNG火力に対抗できる5セント/kWhまで低下しましたが、太陽光発電+バッテリーでも10セント/kWhの世界がきたわけです。バッテリーのコストダウンが進んでいます。

今後、太陽光発電 +バッテリーの価格は、2025年には8セント/kWh、2030年に6セント/kWh、2035年には4セント/kWhまでコストダウンが進むと予想しています。

電気料金の値上げが止まらない 悲鳴あげる一般家庭がバッテリーを導入

次に一般家庭を考えてみましょう。カリフォルニア州では、一般家庭は20セント/kWhで電気を買っています。

一方、ハワイ州では、太陽光発電中心の再エネ増加によって、電気料金の上昇が予測されています。オワフ島では2017年から2026年の10年間に25セント/kWhから36セント/kWhへ、44%増加すると見込まれています。ハワイ島は30セント/kWhから、2026年には43セント/kWhまで上昇すると予想され、一般家庭向けの電気料金の上昇が止まらない。

「電力会社から買う電力量をなんとか減らし、電気料金を安くしたい」という一般家庭のニーズがカリフォルニアでもハワイでも急速に高まり、一般家庭においても太陽光発電 +バッテリーの導入が進んでいるのです。

全米でのバッテリー導入量は、2017年の215MWから2018年には338MWに増加しました。2019年には600MWに達すると言われており、さらに2023年には2017年の17倍、3.9GWまで拡大する予測もあります。

一般家庭向けは2017年後半から急速に増え、カリフォルニア州だけでも約3,000軒の住宅にバッテリーが導入されました。新築住宅に太陽光発電設置が義務化される2020年以降、家庭用バッテリーはさらに導入が進むでしょう。

カリフォルニアでマーケットシェア70%超を握ったのがテスラでした。しかし、テスラはいまバッテリー製造が追いつかず、供給をストップしています。テスラ製バッテリーには家庭向け13.5kWhと産業向け200kWhの2種類がありますが、200kWhはオーダー時に100%前払いのうえで、出荷は1年後、といった状況で評判はガタ落ちです。その間隙をぬって、急速にシェアを伸ばしているのがLG化学です。

2020年はマイクログリッド元年

産業用(C&I)の電力ビジネスでは、前編でも触れたデマンドチャージによるペナルティ増加から、できるだけ電気料金を減らしたい。また大手企業ならRE100に加盟して企業価値をあげたいという思惑があります。さらに自然災害による停電から企業活動を守るために、太陽光発電 +バッテリー導入をさらに進化させ、マイクログリッド化に向かっています。

元データ東電HD「数表でみる東京電力」

アメリカでも気候変動リスクが顕著になり、とくに東海岸ではハリケーンによって毎年、深刻なダメージを受けています。1度でも巨大ハリケーンに襲われると、1週間くらい平気で電力が止まってしまいます。レジリエンシー(強靭性)というものを金銭化することは非常に難しいですが、自然災害が起きても、復旧までの数日間、なんとか企業活動を継続させたい。
こうしたことから、アメリカではいま、マイクログリッドが大きなトレンドになっています。

C&Iは自分たちの施設の中に太陽光発電 +バッテリーや自家発電を導入するわけですが、通常は他系統のグリッドシステムにつながっており、99.9%はそちら側(他系統側)の電力を使います。しかし、もしグリッドがダウンしたとき、数日間はサバイブできるよう、自社施設でアイランド化(孤島化)するわけです。

日本にはまだ「安全はタダ」という信仰が残っていますが、アメリカでは西部劇の時代から「自分の身は自分で守り、そのコストは自分で払う」という文化があります。マイクログリッドはまさにこの文化に則っているのでしょう。

アメリカでは電気料金を減らし、かつ、グリッドへの依存度を下げるため、太陽光発電 +バッテリーを進化させたマイクログリッドがさらに増加するでしょう。2018年3.6GWだったマイクログリッドは、2023年には7.1GWへ2倍の成長が期待されています。

そのアセットは、誰が所有するのか。エンドユーザーによる自己所有から、イニシャルコストや保有リスクを一気に低減させるため、「第3者所有モデル」が急速に増えています。「2020年はマイクログリッド元年になる」、私はそう予測しています。

注目を集める「グリッドエッジ」

アメリカでは電力網と需要家側に導入されたデバイス(太陽光発電、バッテリーやスマートメータなど)とが接続される部分、Grid Edge(グリッドエッジ) をどううまくコントロールするか、注目が集まっています。

分散電源が増え、電気の流れがいままでの一方向から双方向になり、しかも、逆潮流が複雑になっていく。電力会社は、電気がいまどちらの方向から流れてきているのか見失いつつあるわけです。一歩間違えれば、大規模停電のトリガーになってしまいかねません。

ミリ秒単位の計測データをすべて電力会社に送られても、膨大なデータを即座に処理し、需給調整をすることは難しい。そこで、たとえば住宅用太陽光発電などは出なりで逆潮流するのではなく、電圧が120V±5%を超えそうになると、自律的に出力を抑制する。あるいは周波数が60㎐から逸脱する前に、自律的に出力抑制できるような、スマートインバータを導入してもらう、という考え方が主流になりつつあります。スマートインバータは全米で導入が必須となると私は考えます。

送配電網の管理と電力の最適化をグリッドエッジの部分で実施しようというわけです。つまり、グリッドエッジが安全装置になります。

再エネ100%を達成するということは、分散化がさらに進むことを意味します。このグリッドエッジをコントロールできるかが、将来、再エネをどれだけ導入できるかを決定づけるのです。

疲弊する3大電力会社

電力会社にとって、履行義務を負うRPS(Renewable Portfolio Standard:再生可能エネルギー利用基準制度)を導き出す式があります。

化石燃料を使った電源からの購入量をAMWh、クリーンな発電所からの購入電力量をBMWh、一般家庭なり、商業施設などに販売した電力量をCMWhとすると、分母がC、分子がBとなります。電力会社がRPSをあげたければ、大型太陽光発電からの購入電力量Bを増やすか、一般家庭や商業施設などに売る販売量Cを減らす、またはその両方になります。

そのため、カリフォルニア州の大手電力3社は、Bを増やしながらCを下げる努力もし、一般家庭なり企業に太陽光発電やバッテリーの導入を促しているわけです。

自家消費量が増えるということは販売電力量の減少、つまり、売り上げの減少をもたらし、電力会社の経営を圧迫しつつあるということです。

3大電力会社の最大手、PG&Eは同社の高圧送電線のスパークによって起こったとされる大規模山火事の補償に耐えきれず、2019年1月、経営破たんしました*。

なぜ、送電線から火花が飛んだのか。建設から30年、40年経過し老朽化した送配電網をアップデートしなかったからです。じゃあ、なぜアップデートしなかったのか。しなかったというよりも、できなかった。

いままでカリフォルニア州のGDPが増えるに従って、消費電力量も増加してきました。電力会社は増え続ける消費電力を供給するため、州外から約30%の電力を購入し、それに伴い州外を結ぶ送電網を構築してきました。

カリフォルニア州の総電力量は300TWhです。電力会社にすれば、この300TWh×20セント/kWh=650兆ドルしか原資がない。家庭用の20セントで計算してもこの金額なので、家庭用よりも安い産業用を計算に入れるともっと少なくなります。この原資のなかから、州外や大型太陽光発電などから電気を調達したり、送配電網のアップデートをしなければならない。原資に占める割合は、発電コストが60%、配電コストが30%、送電コストが10%と言われています。新たに送配電網をつくったり、老朽化した送配電網をアップデートするには、10%ではまったく足りないのです。

不足金額を回収するために、電気料金を値上げしてしまうと、消費者は自己防衛をするため、太陽光発電 +バッテリーが導入され、ますます販売電力量が減少してしまう。

このように、州政府の政策によって手足をもがれたと言ってもいい電力会社がどこまで再エネ100%達成についていけるのか。誰もわかりません。再エネと電力会社の動向はまだ目が離せませんね。

*参考 https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-25/PLV1JZ6KLVR601
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-02-28/PNNART6S972801

プロフィール

阪口幸雄(さかぐち・ゆきお)

クリーンエネルギー研究所代表。シリコンバレーに20年以上在住し、アメリカのクリーンエネルギーと日本のビジネスへの影響にフォーカスしたリサーチ、コンサルティングを手がける。専門分野はブロックチェーン、エネルギー貯蔵、発送電分離、デマンドレスポンス、分散電源管理、太陽光発電など。日本の大手エネルギー企業、政府機関、大学などのアドバイザーを多数務める。


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