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BPとØrstedがグリーン水素の製造プロジェクトで合意

BPとØrstedがグリーン水素の製造プロジェクトで合意

EnergyShift編集部
2020年11月30日

石油会社にとって水素事業への参入は、脱炭素社会へと移行する中、事業戦略上きわめて重要なものとなっている。その水素の製造は、長期的には再生可能エネルギー、もしくはCCS(CO2回収貯留)をセットにした化石燃料由来のものとなる。英国石油メジャーのBPと世界的な風力発電企業のØrstedは、ドイツにおけるグリーン水素プロジェクトで合意した。

北海の洋上風力で製油所の水素をグリーンに

2020年11月10日、英国石油企業のBPとデンマークの風力発電企業Ørstedは、グリーン水素(再生可能エネルギー由来の水素)製造の工業用電解槽プロジェクトの開発に向けた基本合意書(LOI)に署名した。この基本合意書に沿って、2022年初頭には最終的な投資決定(FID)を行い、2024年までにプロジェクトが稼働する見込みだとしている。

プロジェクトでは、ドイツ北西部にあるBPのLingen製油所に、50MWの電気分解装置とその関連インフラを建設する。その動力源は、北海にあるØrstedの洋上風力発電所からの再エネだ。

製造された水素はこのLingen製油所で利用される。同製油所では水素が既に利用されているが、それは天然ガスベースの「グレー」水素だ。今回のプロジェクトで製造され、現在のグレーと置き換わる「グリーン」水素は、全体の20%に相当するという。

製造されるグリーン水素は、1時間あたり1トン、年間約9,000トンの量を見込んでいる。水素製造の動力源が天然ガスから再エネへ置き換わることにより、年間約8万トンのCO2排出量(ドイツでは約4万5千台分の自動車の排出量に相当)が削減される。

またBPとØrstedは、水素製造時の副産物である酸素と余剰熱についても持続可能な利用を検討するなど、電解システムの効率を最大化することについても、注力していく。

BPとØrstedは、エネルギー集約型産業に焦点を当てた革新的な低炭素技術のための最大規模の資金提供プログラムである「EUイノベーション基金」からの資金提供を申請している。

水素関連技術はBPの事業転換戦略に不可欠

BPのガス・低炭素担当上級副社長であるDev Sanyal氏は、「脱炭素化が進む世界のエネルギー需要を満たすために、水素が果たす役割はますます大きくなるでしょう。私たちは、この新しい産業で主導的な地位を築きたいと考えています。ØrstedとBPの協力により、今回のグリーン水素は、製油所での大幅な排出量削減を加速させ、大規模なグリーン水素製造とその後の展開を経験することができます。これは、ドイツや世界の水素経済の発展に重要な役割を果たすでしょう」と述べている。

Ørstedの洋上風力発電部門の上級副社長兼CEOであるMartin Neubert氏は、「製油所のような重工業は、その製造工程で大量の水素を使用しています。今後も水素は必要とされるが、現在の化石燃料由来の水素を再生可能エネルギーで製造された水素に置き換えることで、これらの産業のCO2排出量を大幅に削減することができます。再生可能水素は化石燃料由来の水素に対する価格競争力を持たなければなりません。そのために今回のようなプロジェクトが必要であり、これにより大規模な電気分解技術を実証し、洋上風力を利用した水素利用の実績を示すことができます」と語った。

今後数十年の間に、水素は、電力、工業、輸送分野、特に電化が困難または高額な分野の脱炭素化において、重要な役割を果たすことが期待されている。水素や炭素回収利用・貯蔵(CCUS)などの新技術の事業展開は、総合エネルギー企業への転換というBPの戦略にとって不可欠な要素だ。

Lingen製油所は、年間約500万トン(1日10万バレル)の原油を精製しており、2018年には、世界初となる石油精製所でのグリーン水素の試験を実施している。

BP Press Release "bp and Ørsted to create renewable hydrogen partnership in Germany" 2020.11.10

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