今冬の電力需給のひっ迫よる電力価格の高騰によって、大手電力会社10社の送配電部門の収益が370億円から460億円拡大する見込みだ。経済産業省はこの過剰な余剰収支を電気代削減の原資に回すことを決めた。
2020年12月から2021年1月にかけて、電力需給のひっ迫による電力価格の高騰が、新電力と呼ばれる小売電気事業者の経営に大きな影響を与える中、大手電力10社の送配電部門に過剰な余剰収益が発生することがわかり、問題視されていた。
新電力のほとんどは卸売市場から電力を調達しているが、市場価格が1ヶ月にわたり、最大10倍以上まで高騰したうえ、卸売市場から調達できない状態が続いた。
市場から調達できなかった新電力は、大手電力会社に市場より高い価格、「インバランス料金」を支払って、足りない電力を調達しなければならない。このインバランス料金も高騰し、1kWhあたり7円程度だった金額が最大511円を記録してしまう。
新電力などの小売電気事業者は高騰したインバランス料金を大手電力会社に支払わなければならないが、大手電力が手にする収益が、10社合計で累積370億円から460億円にのぼると試算されていた。
この余剰収支の取り扱いについて、経済産業省では大手電力会社の利益とはせず、新電力の救済にあてるか、それとも電気代の削減原資にするか、検討を進めてきた。
4月20日に開催した審議会において、電気の需要家すべてが負担している送配電網の維持・管理費に使われる託送料金の引き下げ原資に回す方針が示された。すなわち、電気料金の値下げだ。
電力高騰によって、すでに倒産する新電力が出ている中、経済産業省では新電力救済策のひとつとして、インバランス料金の分割支払いを認めている。この分割払いの導入によって、大手電力会社がインバランス料金を手にするまでに1年程度がかかる予想だ。
さらに倒産新電力が発生しており、約200億円が回収できず、焦げつく可能性がある。約200億円の焦げつきを考慮しても、大手電力10社の2016年度からのインバランス収支累積は370億円から460億円の黒字となる。
経済産業省では、最大460億円の黒字を使って、いつ、どのように、どれだけ託送料金を引き下げるのか、今後、具体策を決める方針だ。
また、今回のような事態を防止するため、2021年度より特例として、インバランス料金の上限を前日までに需給ひっ迫が予想される場合は1kWhあたり80円、全国的にひっ迫した場合は200円とするセーフティネットの導入も決めた。
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