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自民党総裁選 原発、再エネが焦点に 4候補者は何を訴えた?

自民党総裁選 原発、再エネが焦点に 4候補者は何を訴えた?

2021年09月22日

自民党総裁選に立候補した4人は、2021年9月18日、日本記者クラブが主催する候補者討論会に臨み、脱炭素や脱原発などエネルギー・環境政策などについて論戦を交わした。その様は4者4様の様相を呈している。エネルギー政策について、候補者は何を訴えたのか、議論が興味深い推移をたどったこともあり、議論の流れにそって討論をまとめた。

河野氏「原子力から緩やかに離脱」、高市氏「むしろ原子力投資が必要」

候補者同士の論戦は、高市早苗前総務大臣による、河野太郎規制改革担当大臣に対する原発関連の質問からはじまった。河野大臣は原発ゼロの会所属で、原発反対派として知られているため、そこからメスを入れた格好だ。

高市氏は、「当面は原発を再稼働させるといっていたが、当面とはどれくらいの期間なのか? デジタル化の進展によって消費電力量が急増することが予測される中、基幹となるエネルギー政策とは何か」と問いかけた。

これに対し、河野氏は、「今の日本の原子力発電所の耐用年数は40年、運転延長しても60年だ。耐用年数が来たものは廃炉にしていく。したがって原子力は緩やかに減っていく。その間、やらなければいけないことは気候変動対策、カーボンニュートラルの実現だ。石炭・石油火力をなるべく早く止める。天然ガス火力もいつまでも続けることはできない。残された選択肢は、省エネと再生可能エネルギーであり、その足らざる部分は、原子力を再稼働して補っていく。これしか他に方法はないだろう」と回答。原発は再稼働させつつ、その中で脱炭素を推進し、まずは火力を低減させていく方針を示した。

この発言に対し、高市氏はむしろ、電力の安定供給に必要なのは原子力だと持論を展開した。「SMR、小型炉心炉を地下に立地する。その次の段階で、燃料が重水素とトリチウムなどで、高レベル放射性廃棄物を出さない核融合炉にしっかりと研究開発費を投入していくべきだ」と語った。そのうえで、「富岳に続く国家プロジェクトとして、小型商用核融合炉の開発を国家プロジェクトとしたい」と訴えた。

河野氏のエネルギー政策に関しては、野田聖子幹事長代理や岸田文雄前政調会長も疑問を呈した。

野田氏は「電力の安定供給を保証できないことはあってはならない。総理に就任したら、過去の発言どおり、速やかに脱原発を実行するのか」と質問した。

河野氏は「福島で原発事故が起こったとき、「お前の言ったとおり事故になったな」と言われたが、私はそんなことは一度も言ったことがない。私の主張は耐用年数が来たものは速やかに廃炉にする、緩やかに原子力から離脱するだけだ」と改めて原発政策を語った。

さらに「(2018年の)北海道胆振東部地震で大規模停電が起きたが、大きな発電所に依存していたら安定供給が可能かといえばそんなことはない。再エネのように広く拡散した発電能力を持つことが、いざというときの安定供給にもつながる」と述べた。

あくまでも耐用年数が来たものは廃炉するという方針を強調するとともに、再エネによる分散電源の活用が社会の強靭性強化につながるとの主張を展開した格好だ。

一方、野田氏は「エネルギーは安定供給が前提であり、その時代にあるものをしっかりと形に当てはめていくことが重要だ。日本の地熱発電の資源は世界3位で、他の国にお願いしなくても、自分の国にあるエネルギーだ。お金がかかるという理由で進まなかったが、ぜひ進めたい」と再エネ政策を語った。

野田氏の発言を受けた河野氏は、「これまで再エネを増やすことができなかったのは、原子力に重きをおこうという力が働いていたからだ。しかし、原発の発電コストが見直され、再エネのほうが安くなることが明確になった。原子力産業は先が見通せない。やはり、再エネ最優先の原則でしっかり伸ばすことが、日本経済の新しい産業の芽につながっていく」と反論、逆に野田氏に対し、「将来も原子力に頼るべきか」と問いかけた。

これに対し、野田氏は「私は現実主義者だ。安定供給がきちんと担保できるポートフォリオにすべきだ」と応じた。

岸田氏「核燃料サイクルを止めると外交問題に発展する」

核燃料サイクルも論点のひとつになっている。岸田氏は次のように語る。

「2050年カーボンニュートラルは、私も共有する。クリーンエネルギーを用意しなければならない。そして再エネ最優先である。また、クリーンエネルギーのひとつの選択肢として、原発の再稼働を認める。これら政策は私も同じだ。

しかし、問題はその先だ。原発の再稼働を認めた一方で、(河野氏は)核燃料サイクルを止める方針だ。核燃料サイクルを止めるとプルトニウムが積み上がってしまう。これは日米原子力協定をはじめとして、日本の外交問題に発展するのではないか」。

核燃料サイクルは原発から出る使用済み核燃料を再処理し、取り出したプルトニウムやウランを燃料として再利用する、日本の原子力政策の基本方針のひとつである。この基本方針をめぐり、河野氏は「プルトニウムを高速増殖炉で燃やす、これが何十年らいの日本の政策だったが、高速増殖炉もんじゅは、(たび重なるトラブルの発生を受け、2016年に)廃炉が正式に決まった。(方針転換する)時期に来ている」と述べた。

このほか、野田氏は2030年の温室効果ガス46%削減目標に触れ、「(実現に向けた取り組みは)緊急経済対策にもなる。具体的には洋上風力や水素ステーション、EVステーション、さらに海底直流ケーブル、こうしたものを公共事業として、補正予算で支援していく。(経済対策として)10年で20兆円にのぼるのではないか」とした。

4候補とも、菅政権が打ち出した脱炭素戦略を継承する考えだが、エネルギーの安定供給に向けて原子力政策をどうするのか。あるいは、再エネをどれだけ増やすか、については意見がわかれている。

Text:藤村朋弘)

ヘッダー写真:
外務省, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
切干大根, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
内閣官房内閣広報室, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
内閣官房内閣広報室, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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