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経産省、鉄鋼業脱炭素へロードマップ公開 日本製鉄、JFE、神戸製鋼は新技術に期待し、独自の挑戦

2021年11月02日

日本製鉄はCOURSE50の実機化のほか、電力事業でもクリーンエネルギーに注力

現状、国内で高炉を持つ鉄鋼会社は日本製鉄、JFEホールディングス、神戸製鋼所の3社である。国内のCO2排出量削減に向けては、上記3社とも、すでに取り組みを始めている。

まず、日本製鉄は「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050~ゼロカーボン・スチールへの挑戦~」として、2030年にCO2を30%削減(2013年比)することを目標に掲げている。COURSE50にも、日本鉄鋼連盟の中核企業として参画しており、2050年度にはカーボンニュートラルの実現を目指す姿勢だ。

2030年のCO2削減に向けては、現行の高炉・転炉プロセスでのCOURSE50の実機化や、既存プロセスの低炭素化、効率生産体制の構築などを行う。2050年に向けては、電炉の大型化や高性能化、Super-COURSEによる水素還元製鉄、CCUSなどの導入を予定しているという。

また、日本製鉄で特筆すべきは2001年にスタートさせ、2006年に新日鐵エンジニアリング(現:日鉄エンジニアリング)として分離させた電気事業。自社の発電所による販売電力量は約6億kWhにのぼる。その特徴は、廃棄物発電、バイオマス発電、地熱発電など脱炭素につながる発電を行っている点だ。さらには洋上風力発電と、蓄電池による電力安定化にも取り組んでいくという。

JFEは脱炭素に向け、素早い組織改革で対応

次にJFEホールディングスだが、5月7日に第7次中期経営計画(2021年度~2024年度)を発表した際には、2024年度末の鉄鋼業のCO2排出量について、2013年度比で18%削減を目指すとした。また、2050年に向けては「JFEグループ環境経営ビジョン2050」とし、カーボンニュートラル実現を目指している。

そのうえで7月1日には、「カーボンリサイクル開発部」と「グリーン原料室」を設置するなど、カーボンニュートラルに向けて組織改編の面から積極的だ。カーボンリサイクル開発部では、高炉排ガス中のCO2をメタン化し、還元剤として高炉に吹き込む「カーボンリサイクル高炉」とCCUメタノール合成の技術開発等を進めていく。

「グリーン原料室」は、水素での製鉄に適した原料の開発および、CO2削減に資する外部鉄源の確保に動く組織だ。さらには、10月1日にもスクラップなどの鉄源を溶解する新プロセスの研究開発に向けた「新溶解プロセス開発部」を新設。これら組織の上位に「カーボンニュートラル推進会議」を置いて、各プロジェクトを効率的に進めていくとしている。

また、グループ全体での取り組みとしては洋上風力発電事業への期待も大きい。風車の素材となる鋼材の提供はもちろん、基盤部分を作るエンジニアリング部門、洋上風力の装置を作るための造船技術など、グループ内で供給網を構築することができるとしている。


引用:JFEスチール株式会社

神戸製鋼は還元鉄の利用でCO2排出量20%減を実証

最後に神戸製鋼だが、国内鉄鋼3社のうち最も製鉄事業の規模が小さい代わりに、建機事業や電力事業など事業の多角化を進めているのが特徴だ。課題として挙げられるのは、製鉄事業に加え、電力事業でも石炭燃料に頼っている点だろう。

そうした状況下にあって、神戸製鋼は2月16日に「KOBELCOグループの製鉄工程におけるCO2低減ソリューション」を発表。その中で、高炉工程でのCO2排出量を2013年比で約20%削減した実証結果を公表している。実証は、神戸製鋼がアメリカに持つ100%子会社ミドレックス社が有する直接還元製鉄法を用いて行われた。

天然ガス(CH4)を改質した還元ガスで鉄鉱石を直接還元して造る還元鉄(HBI)の大量投入が本実証の特徴であった。HBIは水素の比率が高く、CO2発生量が低い。生産性を落とさずに運用できる点からも注目されており、大量に投入しすぎると炉内が不安定になる危険があるため、投入バランスを鑑みながら操業技術を向上させていく見込みだ。

一方で、電力事業においては、既存の神戸発電所1・2号機に加え今後稼働予定の3・4号機のいずれも石炭火力発電所であり、同社の電力事業は脱炭素化の影響を受けることが必至だ。今後はエンジニアリング事業部門との連携で下水汚泥、食品残渣などのバイオ燃料の混焼、アンモニア混焼などを行い、CO2削減への取り組みを強化するとしている。

神戸発電所においては、アンモニアの混焼率拡大を進め、最終的には専焼へ挑戦していく予定であるとともに、真岡発電所におけるガス火力発電では、高効率GTCCによる低CO2発電の安定操業を継続する見通しだ。

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高橋洋行
高橋洋行

2021年10月よりEnergyShift編集部に所属。過去に中高年向け健康雑誌や教育業界誌の編纂に携わる。現在は、エネルギー業界の動向をつかむため、日々奮闘中。

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