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テスラのソーラールーフは住宅のスタンダードになるか

テスラのソーラールーフは住宅のスタンダードになるか

2020/01/29

テスラの目指す未来社会はEV車だけではない。EV、蓄電池であるPowerwall、そして屋根上太陽光発電のSolargrass Roof。この3つのエコシステムをテスラ一社で作り上げようというのが大きな目標なのだ。エコシステムの一角を担うSolargrass Roof(Solargrassルーフ)の戦略について、ロサンゼルス在住の土方細秩子氏が紹介する。

テスラのソーラールーフ第3世代の狙い

2019年10月、テスラは自社で開発を進めてきたソーラールーフの第3世代「Solargrass Roof」を発表。すでに米国内の数カ所で設置が始まっていることを明らかにした。ソーラールーフとは従来の屋根に設置するソーラーパネルとは異なり、屋根そのものにソーラー発電機能を持たせたものだ。

テスラのSolargrass Roofウェブサイト(US)

テスラが最初にソーラールーフのコンセプトを発表したのは2016年。翌17年から1,000ドルのデポジットで第1世代ソーラールーフの予約販売を開始、同社では「2018年分まで完売状態」としていた。しかし実際には設置の難しさなど課題があり、販売は思うように進んでいなかった。

第3世代のソーラールーフは過去の経験からジョイント部分などを改良し、「簡単に設置できる」デザインとなり、価格も第1世代と比較して大幅に安くなった。テスラによると米国の一般的な家屋の場合、平均的な設置コストは3万5,000ドル程度になる、という。同社のウェブサイトでは自宅の郵便番号を入力することで1平方スクエアあたりの設置コストが計算できるサービスを提供している。

従来のソーラーパネルの設置コストも下がっている。業界アナリストの試算では、現在アメリカにおける家庭用ソーラーパネルの平均コストは1ワットあたり2ドル99セント前後で、一般的な家屋の屋根に6キロワットのものを設置するコストは約1万2,500ドル前後になるという。これは2018年比で2%下落しており、この傾向は今後も続くとみられている。

それでもテスラ社CEOイーロン・マスク氏は強気だ。第3世代発表後のコメントとして「今後数カ月でソーラールーフの設置件数は週に1,000件を超える。ソーラールーフは爆発的に成長し、将来的には週に1万件の設置を目指している」と語った。その理由として、米国では年間500万件の新築住宅の建設、及び屋根の交換が行われており、それらが発電できる屋根であるソーラールーフに置き換わることにより、市場は拡大し続けるためだという。

確かに屋根の張替えとソーラーパネルの設置を合わせた価格よりもソーラルーフは安いかもしれない。しかし住宅の耐用年数を考えると、簡単に取り外しができるパネルと比べると屋根そのものがソーラー発電であるルーフは交換が大変な作業になる。現在のソーラー発電の寿命が20-30年と言われていることから、ルーフの設置にどれだけの人々が興味を持つのかは未知数だ。

ソーラーパネル発火の影響

もう一つの懸念は、テスラが買収し、傘下に収めたソーラーシティによる発火事故とそれによる訴訟だ。2019年8月には小売り大手のウォルマートが「ソーラーシティのソーラーシステムにより屋根から発火し、店舗や倉庫火災につながった」と同社を訴えた(2019年11月に和解)。

ウォルマートはソーラーシティによるソーラー事業に早くから投資していた企業の一つで、全米240店舗の屋根にパネルを設置。ところが2012年以降、7件の火災が報告された。これによりウォルマートは(ソーラーシティを吸収合併した)テスラに対し、全店舗からのパネル除去と損害賠償を求めていた。

ソーラー発電に関するウェブサイトを運営するソーラー・レビュー社によると、一般的なソーラーパネルの発火事故報告件数は0.05%とごく僅かだが、テスラのウォルマートのケースは2.9%と格段に多い。そもそもソーラーシティによるパネル設置は2016年初めには3ヵ月期ごとに200MWを超えていたが、2018年以降は100MWを下回るなど不調だった。これにより事業は縮小され、サービスにも不備があったと指摘されていた。

2016年Q4にテスラはソーラーシティ社を買収 出典:テスラ

新しいソーラールーフはテスラのエコシステムを作り上げるか

テスラではソーラーパネル事業をテコ入れするため、安価でのパネルレンタルを計画するなど、新しいアイデアも提供していた。しかしウォルマート火災が大きく報道されたことで、テスラ株が4%下落するなど、ソーラー事業は同社のお荷物とまで言われていた。

新しいソーラールーフはこうしたマイナス要素を断ち切り、テスラのソーラー事業に、利益をもたらすのか。

テスラがホームバッテリーシステムであるパワーウォールを日本でも99万円で発売開始したことがニュースとなったが、テスラが目指しているのはソーラー発電、EV、パワーウォールを合わせた総合的な家庭用エコシステムだ。

ソーラー発電で得た電力をパワーウォールに蓄電し、家庭に必要な電力をセルフ供給する。電力はEVにも蓄えることができ、相互に電力を補い合うことで、グリッドからの供給ゼロの自家発電を目指す。赤字体質と言われながらテスラが傘下のソーラーシティの存続にこだわるのは自社でこうしたエコシステムを完結させるためにはソーラー発電が必須であるためだ。

もちろん、テスラが目指すのは家庭用だけではない。南カリフォルニアに電力を供給するサザン・カリフォルニア・エディソン(Southern California Edison)はテスラと提携し、ロサンゼルスに大掛かりなバッテリーパークを建設した。太陽熱や風力などのエコ発電から得られる余剰電力を蓄電し、ピーク時の供給不足に備えるというシステムだ。

テスラは火災の起きたウォルマートにもパネルとは別にパワーウォールを提供しており、このように企業向けの大掛かりなエコシステムにも進出している。

様々な批判はあっても、一社で完結したグリーンエネルギーとそれを有効に利用するエコシステムを提供しているのはテスラのみ。米国政府、特にカリフォルニア州ではグリーンエネルギーを推奨しており、ソーラー発電に対する政府からの補助金も得られる。

テスラの車を初めとするEVオーナーはソーラー発電やパワーウォールに、より関心を持つ確率が高い、という統計もある。テスラのモデル3が数十万台規模で売れている現在、ソーラールーフがヒット商品になる可能性も十分にある。

2019年第3四半期に黒字を計上してウォールストリートを驚かせたテスラだが、今後のソーラールーフの売れ行き次第では常に黒字を計上できる企業に大化けすることも十分に考えられる。

土方細秩子
土方細秩子

京都出身、同志社大卒、その後ロータリー奨学生としてボストン大学大学院留学、同大学コミュニケーション学科で修士号取得。パリに3年間居住後ロサンゼルスに本拠地を置き、自動車、IT、政治、社会などについての動向について複数のメディアに寄稿。

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