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日本の車産業の負の序章か 中国EVが日本の商用車市場に攻勢

2021年10月15日

今回のニュースが日本の車産業に示す、より深刻な問題とは

今回、日経なども「中国が商用EV対日輸出」という切り口で報道し、日本に競合がいないことを問題にした。

確かに、単品でみれば、日本のEV市場における競争力がないことを示す事案として問題視していい論点だと思う。商用EV戦線においても日本メーカーはもっと奮起をしてほしい。

ただ、それ以上に問題なのが、今回の事案が車製造の水平分業化を進めることにつながる、という論点だ。

元々、内燃機関車に比べて部品の点数も低く、また内燃機関車やハイブリッド車に比べて構造も単純だとされるEVは、水平分業をしやすいのではないかと指摘されてきた。

こうした点に注目をして、例えば日本企業でいえば日本電産などがモータ領域で世界シェアを取るべく焦点を絞って戦い、色々な企業にモータなどを売りにいっている。その中には、台湾の精密機械メーカー大手の鴻海精密工業なども含まれている。鴻海などはまさに、このEVの水平分業化の中でチャンスをうかがっている企業だ。

ちなみに、先述した佐川急便が導入するEVについては、日本電産がトラクションモータとインバーターを納入することが決まっている。

すでに足音を立てて、EVの水平分業の影は忍び寄っている。

これが起きるとどうなるか。伝統的な車企業が行っている垂直統合モデルとどちらがよりバリューを出せるのかという話になるのだが、水平分業で力をつけたOEM企業が出てくると、車の電動化は何もハードだけではないため、グーグルやアップル、中国でいえば百度などのIT系企業の参画を許すことになる。システムはそうしたIT企業が作り、そしてハードはOEMが担当するという格好だ。

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前田雄大
前田雄大

YouTubeチャンネルはこちら→ https://www.youtube.com/channel/UCpRy1jSzRpfPuW3-50SxQIg 講演・出演依頼はこちら→ https://energy-shift.com/contact 2007年外務省入省。入省後、開発協力、原子力、官房業務等を経験した後、2017年から2019年までの間に気候変動を担当し、G20大阪サミットにおける気候変動部分の首脳宣言の起草、各国調整を担い、宣言の採択に大きく貢献。また、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略をはじめとする各種国家戦略の調整も担当。 こうした外交の現場を通じ、国際的な気候変動・エネルギーに関するダイナミズムを実感するとともに、日本がその潮流に置いていかれるのではないかとの危機感から、自らの手で日本のエネルギーシフトを実現すべく、afterFIT社へ入社。また、日本経済研究センターと日本経済新聞社が共同で立ち上げた中堅・若手世代による政策提言機関である富士山会合ヤング・フォーラムのフェローとしても現在活動中。 プライベートでは、アメリカ留学時代にはアメリカを深く知るべく米国50州すべてを踏破する行動派。座右の銘は「おもしろくこともなき世をおもしろく」。週末は群馬県の自宅(ルーフトップはもちろん太陽光)で有機栽培に勤しんでいる自然派でもある。学生時代は東京大学warriorsのディフェンスラインマンとして甲子園ボウル出場を目指して日々邁進。その時は夢叶わずも、いまは、afterFITから日本社会を下支えるべく邁進し、今度こそ渾身のタッチダウンを決めると意気込んでいる。

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