楽天でんき、新規申し込み一時停止へ 新電力に迫る淘汰の波 倒産・撤退に追い込まれる新電力もではじめる 国と各社の対応続報 | EnergyShift

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楽天でんき、新規申し込み一時停止へ 新電力に迫る淘汰の波 倒産・撤退に追い込まれる新電力もではじめる 国と各社の対応続報

楽天でんき、新規申し込み一時停止へ 新電力に迫る淘汰の波 倒産・撤退に追い込まれる新電力もではじめる 国と各社の対応続報

EnergyShift編集部
2021/01/27

シリーズ 2021年電力ひっ迫

楽天でんきは2021年1月26日、新規申し込みを一時停止すると発表した。異例の高騰が続いた日本卸電力取引所(JEPX)のスポット価格の影響を受けての措置だ。歯愛メディカルは、歯科医院などに電力を販売してきた子会社のワンレクトホールディングスの株式を譲渡。秋田県「かづのパワー」は2月に事業を休止するなど、新電力に淘汰の波がきている。

月間約1億kWh供給する楽天でんき、新規申し込みを一時停止 再開は未定

年初からの報道の通り、全国的な電力需給のひっ迫によるJEPXのスポット価格の高騰が、新電力に大きな影響を与えている。

楽天でんき(運営会社・楽天モバイル)は2021年1月26日、一般家庭向けに提供する「楽天でんき」、法人向け「楽天でんきBusiness」、さらに家庭向けに電気とセットでガスを供給する「楽天ガス」の新規申し込みを一時停止すると発表した。消費者向けのサービスメニューすべてで新規を受け付けない事態になっている。プレスリリースでは、いずれも電力需要の高まりによる市場状況の変化を受けたものとしている。

楽天でんきは、2018年11月からサービスを開始。直近の電力需要実績によると、2020年9月単月における一般家庭および法人向け供給量は9,000万kWhを超えており、約700社いる新電力の中でも、TOP10に入る実績をあげていた。

しかし、JEPXのスポット価格が今年1月に入り連日最高値を更新。1月13日には24時間平均が過去最高の154.57円/kWhをつける。1月15日には一時251.0円/kWhを記録していた。

日本の家庭向け電気料金は27.6円/kWh(2019年平均)である。楽天モバイルがJEPXからどれだけ調達していたか現時点では不明だが、200円/kWhを超える電気を27円台で販売していたら、1月単月だけでも億単位の赤字を被ってしまう。

その結果、楽天でんきは、新規申し込みの一時停止を余儀なくされた。同社によると、契約済みのサービスについてはこれまで通り供給を続けるが、新規申し込みの再開は未定。

グリーンピープルズパワーは4,000万円の緊急増資

卸価格の異例の高騰は、楽天モバイル以外にも、自社電源を持たない新電力に大きな影響を与えている。

再生可能エネルギー100%の電気供給を目指す、グリーンピープルズパワーは1月18日、「日本卸電力取引所(JEPX)の市場価格高騰について〜当社は、電気料金を値上げしません〜」と題したリリースを発表

同社はJEPXの市場価格に連動するFIT電気を調達・供給してきたが、今回の事態について、「今まで8円/kWh前後で仕入れていた電気が、何の前触れもなく突然30倍になって(一般顧客に)請求される。まさに、危機的な状況です。しかし、グリーンピープルズパワーは電気料金を値上げしません。緊急増資などの資金調達で乗り切ることを決めました」とし、「4,000万円の緊急増資」の実施を発表した。

歯愛メディカル、電力小売り子会社を株式譲渡
秋田地域新電力「かづのパワー」は事業自体を休止

歯科材料を販売する歯愛メディカルは1月22日、北陸エリアで歯科医院などに電力を販売する子会社、「ワンレクトホールディングス(HD)」との資本業務提携の解消、および株式譲渡を発表した

歯愛メディカルが60%出資するワンレクトHDは、傘下に石川電力と福井電力を持ち、2020年9月単月で合計約150万kWhを供給していた。しかし、ワンレクトHDの直近決算(2019年12月期)を見ると、売上高900万円、純利益は300万円の赤字と厳しい経営実態が読み取れる。

石川電力は2019年12月決算が売上高3億1,600万円、純利益は2,200百万円と黒字転換していたが、福井電力は2019年12月決算の売上高が900百万円、純利益は3期連続の赤字となっていた。

厳しい経営環境が続く中、今回の卸電力価格の急騰が引き金となり、歯愛メディカルは株式譲渡を決断した模様だ。歯愛メディカルは、電力子会社である株式会社Ciエナジーの設立を今年1月5日に発表し、株価も上昇していた。

秋田県鹿角市などが出資する地域新電力である「かづのパワー」は、卸価格の高騰により採算がとれなくなったとして、2月14日で事業を休止する。

新電力56社が、経産大臣に長期高騰に対する要望書を提出

1月18日にはLooopやみんな電力など新電力56社が、梶山弘志経済産業大臣宛に、「卸電力市場の取引価格の長期高騰に対する対応要望」を提出。新電力を取り巻く事業環境の厳しさが浮き彫りになった。

要望書では「市場価格を形成している各種情報公開の強化」、「市場価格が高騰した期間における、インバランス等による一般送配電事業者の想定外利得の合理的還元」の2つを求めている。

特に「インバランス単価については、遡及的な見直し、または託送料金の減額等での合理的な還元」を求めている。さらに続けて、「遡及的に見直す場合は、高騰した単価でも約定し、供給力確保義務履行を務めた事業者が、インバランスを中心に補給を受けた事業者よりも経済的に不利にならないような還元を強く求め」ている。

経産省の対策でスポット価格は落ち着くも、消費者は不安を抱える

こうした事態に対し、経済産業省資源エネルギー庁は1月15日、需給ひっ迫時のインバランス料金の上限価格を200円/kWhとする措置を緊急的に導入。この特例措置によって、スポット価格は落ち着きを取り戻しているが、さらなる救済措置が実施されるかどうかはまだ不透明だ。

経産省は一般消費者保護に向け、1月26日「「市場連動型」の電力料金プランを契約されている消費者の皆様へ」と題した注意喚起を促すリリースを発表した。しかし消費者の不安は治まりそうにない。

市場連動型料金プランを契約する件数は約80万件とされており、このまま契約を継続すれば1月の電気料金が前月比10倍にまで高騰するという予想もある。

そのため、経産省では「電力契約を切り替えるためには、新しく契約をしたい小売電気事業者に電話やインターネットで申し込みをすればよく、現在契約中の小売電気事業者に連絡をすることは必須ではない」とアナウンスしている。

すでに市場連動型プランを契約する一般消費者の間では、電力会社の切り替えの動きが加速している。

倒産・撤退に追い込まれる新電力たち

新電力も消費者保護に動き始めた。

自然電力は30,000円を上限として電気料金を値引きし、さらに事業運営費をゼロにする取り組みを進めている。こうした電気料金の値引きは、市場連動型プランを提供する多くの新電力が実施している。

しかし、新電力の大半は資本が薄い。卸電力価格の高騰を自社で吸収したうえ、さらに電気料金の値引きを続ければ、資本はもたないだろう。しかも顧客の離脱まで続いており、撤退・倒産に追い込まれる新電力が多数出ても不思議ではない。

700社にのぼる日本の新電力に、淘汰の波が迫っている。

参照
2021年電力ひっ迫(続報)1月の電気料金が10倍に!? 市場連動型契約の80万件はどこへ 2021.1.14

(Text:藤村朋弘)


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