複合機メーカーのコニカミノルタは、カーボンゼロの一歩先を行くカーボンマイナスを目指している。2期続けて最終赤字の後、2022年3月期は黒字化を予想する中で、同社の脱炭素に対する取り組みと予想PER約15倍に留まる株価の行方が注目される。
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脱炭素社会を見据え、カーボンゼロを目指す、という企業目標は比較的目にする機会は多い。しかし複合機メーカーのコニカミノルタ<4902>は、カーボンゼロの一歩先を行くカーボンマイナスを目指している。当初は2050年のカーボンマイナスを目指していたが、2020年7月に2030年への前倒しを行った。
同社の掲げるカーボンマイナスは、自社だけでなく顧客やサプライヤーへもCO2の排出量削減を求める内容だ。最終的な目標の2030年に自社でCO2の60%削減(2005年比、▲80万トン)を目指すのに加え、顧客やサプライヤーに対しても同量の▲80万トンのCO2削減を求めている。
コニカミノルタはカーボンマイナスを目指すために、①自社、②調達先、③顧客の3者を対象とする取り組みを行っている。
まず① 自社の取り組みとしては、調達先を多く抱える組み立て系の工場においてデジタルマニュファクチャリングを進めることで、現場での生産性向上とサプライヤーも含めた最適な生産計画によりエネルギー効率を高める。また調達先に同社のCO2削減のためのノウハウ提供や削減策の検討・支援も行う。尚、既に中国生産2拠点及び欧州の販社43拠点で再生可能エネルギー100%を達成している
次に② 調達先との取り組みとしては、今まで専門家が直接赴き行っていたエネルギー診断活動をデジタル化することで、効率的により多くの調達先の環境活動を支援する。また再生可能エネルギーについては、導入ノウハウの提供や連携導入により、調達先の再エネ化を支援する。
最後に③ 顧客との取り組みについては、デジタルによるオンデマンド印刷のソリューション提供による生産プロセスの改革、紙や場所にとらわれない働き方改革を進めるデジタルワークプレイス等、顧客のDXを促す製品やサービスの提供を行い、顧客のビジネス支援と業務効率化による環境負荷の低減に寄与する。
同社が有するCO2削減のノウハウを取引先工場などに供与することで、取引先のコスト削減による利益率向上と同社の調達コストの削減など、経済的なメリットが享受できることもカーボンマイナスの取り組みの特徴だ。
売上高 | 営業利益 | 当期利益 | |
2019年3月期 | 1兆591億円 | 624億円 | 417億円 |
2020年3月期 | 9,961億円 | 82億円 | ▲30億円 |
2021年3月期 | 8,633億円 | ▲162億円 | ▲152億円 |
2022年3月期(予想) | 9,400億円 | 360億円 | 190億円 |
※IFRSを採用、当期利益は親会社の所有者に帰属する当期利益
コニカミノルタの2021年3月期の国内売上比率は約20%に留まる。しかし世界的な新型コロナウイルス問題の影響から、2020年3月期と2021年3月期は当期利益ベースで2期続けて赤字となった。
2022年3月期は3期ぶりに営業利益及び当期利益の両者が黒字化する予想だ。そして2022年3月期の黒字復帰後は、新規事業として取り組む遺伝子検査などのヘルスケア事業の成長を背景に、成長路線を進むことができるのか注目される。
コニカミノルタの株価は3月から600円を前後する状態が続いている。2020年1月のコロナショック発生前は700円台を前後しており、コロナショック後300円を割れた株価は大きな上昇を見せたが、コロナショック前の株価水準には戻していない。
株価の予想PERは約15倍であり、東証1部平均の16倍(2021年6月2日終値)とほぼ同水準である。尚、2020年3月期~2021年3月期は最終利益が赤字であり予想PER算出が出来ない。算出可能な2019年半ばまで予想PERは平均すると14~15倍で推移していた。予想PERの観点では、現状の株価水準は過去に比べ若干高い程度に留まっている。
複合機メーカーのコニカミノルタは、水素関連などの直接的な脱炭素銘柄ではない。しかしカーボンゼロの一歩先を行くカーボンマイナスを2030年に目指しており、脱炭素に向け意欲的な取り組みを行う企業だ。
業績面ではコロナ禍の中で2020年3月期と2021年3月期は2期続けて最終赤字となったが、2022年3月期は黒字化の予想だ。また株価は予想PERの観点からは過去に比べ若干高い水準ではあるものの、株式市場から脱炭素の評価がなされている状態ではない。
コニカミノルタの脱炭素の取り組みが株式市場から評価され、予想PER約15倍の株価水準が上昇することになるのか、今後の同社のカーボンマイナスの取り組みと株価の行方が注目される。
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