菅総理がグリーン、デジタルについて道筋をつけられたと万感の思いを述べた一方、総裁選後の岸田氏のスピーチの中には、脱炭素の要素はなかった。
総裁選でかなり政策論をぶつけ合ったこともあり、ノーサイド、そして全員野球、こうした精神で頑張ると言った以外に、紹介したのはコロナ対策、そして年末まで数十兆円の経済対策をまとめる。その上で新しい資本主義、自由で開かれたインド太平洋の実現、少子化対策などを日本の未来に関わる重要な課題として列挙をした。自由で開かれたインド太平洋を入れたのは外務大臣時代の名残りであり、かつ得意分野ということもあるだろうが、やはりここで脱炭素要素を入れなかったことからも、当座、岸田氏にとっての優先順位は高くないということだろう。
総裁選直後に行われた記者会見でも同様なラインの説明であり、脱炭素には直接触れなかった。
先日の討論会においても、2050年カーボンニュートラルを掲げる中で、クリーンエネルギーのメニューを揃えていくことについて、その重要性は論をまたない、現在の流れについて逆らうというところは見せていないものの、電力の安定供給及びコストの論点が大事であるということも繰り返していた。
もちろん、これは今後の日本のエネルギーセクターを考えた上で、安定供給やコストが重要なのは当たり前である。しかし、その一方で、主張の展開の仕方から、当然、脱炭素はそれが実現できないという前提があって話をしているように見えるため、発想自体は、脱炭素を進めながら成長をするという、今の流れについて認識を持たれてないのではないか、と感じてしまう。
ちなみに昨年の総裁選出馬表明でも、また、今年の総裁選出馬表明のときにも脱炭素の説明については重きを置いておらず、数ある施策の中の1つに位置付けているに過ぎないという扱いであるため、ある種、一貫した岸田氏の考えと言えるかもしれない。
ただ、大きく何かを急に変えるようなタイプの方ではないので、いま公表されているエネルギー基本計画素案から岸田氏が何か大きな修正を加えるということはないと思われる。その点では、菅政権がここまでしっかり脱炭素の道筋を引いてきたということがかなり効いてくる。
一方で、決選投票に向けては高市氏陣営との共闘という形で約束が出来ていたので、高市氏が、エネルギー・脱炭素にも影響を及ぼしうるポストにはまると事情は変わる。高市氏は、明示しないまでも再エネ軽視、原子力重視の方向性であり、エネ基を修正する意向も示していたので、鉈が振るわれる可能性もある。もちろん、2位になった河野氏の配置も関係してくる論点であるため、この辺りは組閣がされてから改めて分析したい。
ただし、国際情勢はそれを待ってくれない。中国も追って解説するが、石炭火力の輸出支援停止を打ち出しており、アメリカとの交渉のバーターで、これから気候変動対策を打つ方向性を示す形になっており、中国を含めた国際社会は前進していく。こうした国際情勢に直面すると、岸田氏も考えが変わってくる可能性がある。特に日米首脳会談の後の変節は注目だ。
そこで最後に、岸田内閣が直面するであろうスケジュールと、それがどのような影響をもたらすのか、確認したい。
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