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「天然ガス在庫不足も需給逼迫も関係がない」電力の市場価格高騰、真の原因は 新電力からの発言

「天然ガス在庫不足も需給逼迫も関係がない」電力の市場価格高騰、真の原因は 新電力からの発言

2021/02/12

シリーズ 2021年電力ひっ迫

2020年末から2021年1月にかけての、卸電力市場の価格高騰は、とりわけ自社発電所をほとんど持たない新電力に大きな被害を与えた。そうした新電力の1つであるグリーンピープルズパワー代表取締役の竹村英明氏が、今回の価格高騰の原因としてどのような問題があったのか、独自の視点から指摘する。

1. 天然ガス在庫不足も需給逼迫も関係がない

2020年12月26日から2021年1月27日まで、日本の卸電力市場(JEPX)は「異常な高騰」を連日続けていた。

市場での電気は発電原価ベースで取引される事が前提となっている。その額は5円/kWhくらいからせいぜい35円/kWhくらい。通常は最高値で15円/kWhくらいで、平均価格8円/kWhあたりで推移している。その最高値が1月6日には100円/kWhに達した。さらに1月12日には200円/kWhを超え、1月15日には最高値251円/kWhをつけた。この日の平均価格は154円/kWhだった。

電気の市場高騰とは通常は「スパイク」という。せいぜい1、2時間程度高値が続くことを指し、グラフの形がスパイクのように尖ることがその名の由来だ。

しかし、今回の「異常高騰」は朝6時から夜8時頃まで、ずっと最高値が続いた。もはやスパイクではない。高値貼りつき状態だった。ときどきお昼に大幅に下がる日があったが、これは晴れた日だ。太陽光発電が昼間の電気を補っていたことを示している。市場高騰を和らげる役目を、相当に太陽光発電は果たした。

この異常な市場価格高騰の原因を多くのメディアは、冬の寒波到来による需給逼迫とか、天然ガス(LNG)の在庫不足などと説明している。しかし、実は需給逼迫もしていないし、天然ガスも足りている。電力・ガス取引監視委員会が示す資料でも、需給逼迫と認められるのは1月8日の1日のみである。1ヶ月にわたって市場価格が最高値に貼り付く現象とは相関がない。天然ガスの在庫量の推移も公開され、確かに12月後半に在庫が減っているとしているが、在庫が増えてきた1月13日あたりの価格高騰の説明にはならない。

2. 旧一般電気事業者による売り入札の大幅減

この市場価格高騰の真の原因は、東京電力、関西電力など旧一般電気事業者(以下「旧一電」)のJEPXへの電気売り惜しみである。

旧一電はグロスビディングを含めJEPXに市場の7割くらいの電気を供給している。グロスビディングは売り入札と買い入札を同時に行うことで、旧一電の発電部門の電気を、小売部門が買うというオペレーションである。

12月26日に、旧一電はこのグロスビディングを含め2億kWhの電気の販売をストップする。正確には旧一電とJERA(中部電力と東京電力合弁の発電会社)で、新電力側にカウントされている電源開発も含めると3.5億kWhもの電気が減らされた。

昨日まであった大量の電気がなくなり新電力の多くは電気を買えなくなった。

小売電気事業者は毎日、翌日の需要計画と供給計画の提出を義務付けられており、自社契約の発電所で不足する電気を市場調達している。その調達場所から電気が消えたのだ。調達できないとインバランスを発生させることになる。インバランスを発生させると、OCCTO(電力広域的運営推進機関)からも経産省からも厳しく咎められる。

このとき買い入札がJEPXの約定価格を下回った新電力は、翌日の電気が全てインバランスになる状態となり、新電力はこぞって前日の約定価格より高値の買い入札を行った。これが市場価格を釣り上げた原因ということも報道されている。

ただし、この中で999円の買い入札を毎日行っていた会社があることは報道されていない。旧一電がJEPXに投入した電気を買い戻したい時は、999円/kWhの買い入札を行うことになっているのだ。しかも他の新電力よりも量が圧倒的に多い。これが価格上昇を引っ張ったのではないか、ということはまだ指摘されていない。どういう意図があったのか不明だが、旧一電はこんな状態を1ヶ月間続けたのだ。なんらかのミスだったのなら、1日で改善されただろう。

旧一電によるJEPXへの売り入札大幅減
スポット市場の入札・約定量の変遷(2020年12月1日〜2021年1月25日)


2021年1月25日電力・ガス取引監視等委員会「スポット市場価格の動向について」にグリーンピープルズパワー加筆

3. インバランス料金制度の無限ループ

今回の価格高騰ではっきりしたのは、インバランス制度が破綻しているということだ。

インバランスとは、新電力が前日出した需要計画・発電計画と当日の需給のズレである。ぴったり一致させることは難しく、毎日数%のズレが生じる。これがインバランスで余剰もあれば不足もある。

ところが今回は、提出した計画量全部がインバランスになることもあった。旧一電が売り入札を劇的に減らしたため、電気を買えない新電力が続出した。市場に入った電気の量で約定するので、約定価格を下回る買い入札を入れた新電力はすべてインバランスになる。それを避けようと翌日は高値の買い札を入れる。これが旧一電の999円/kWh高値買いとつながって市場価格高騰の無限ループを作り出した。

無限ループを止めたのは、経産省が出したインバランス料金の上限価格を暫定的に200円/kWhにするという通達である。あっぱれ! と言いたいところだが、これは以前から議論されていて、2022年から新制度として実施される予定だったという。実は無限ループを知っていたのではないのか?

市場価格はJEPXの約定価格である。インバランス料金は約定できなかった時の罰金みたいなものだ。実は両者にそんなに差はない。

東電エリアでは±1.46円/kWhだと東電のホームページに出ている。みんながインバランスを恐れず、買い入札の最低値0.01円の札を入れていたら今回のような痛手はなかった。インバランスを出すなという指導が、価格高騰を招いたのだと断定するのは言い過ぎだろうか。無限ループを知っていて、なおかつその指導をしていたとすれば責任は重い。

4. もらい事故のFIT特定卸供給

もう一つ、なんとも納得のいかないのがFIT特定卸供給を受けている新電力への処遇である。FITというのは2012年に始まった固定価格買取制度である。再生可能エネルギーの電気を一定期間一定価格で買い取る。買取価格は発電種別や設置年度によって異なるが、初期の太陽光発電は40円/kWh(税抜き)で買い取られた。買い取るのは小売電気事業者だが、市場価格との差額は費用負担調整機関(GIO)から補填される。補填の原資は消費者から集められる再生可能エネルギー賦課金だ。

2017年3月までは小売電気事業者が直接FIT発電所と契約できたが、同年4月から「送配電買取」となり、小売電気事業者は直接契約ができなくなった。その代わり、発電事業者との契約があれば、送配電事業者が買い取ったFIT電気を、特定の小売電気事業者に卸供給するという「特定卸供給」の制度ができた。

高い買取価格で買い取ってからGIOによる補填まで数ヶ月かかるので、資金繰りが大変な新電力各社には朗報と受け止められた。問題は卸供給を受ける時の価格で、これがJEPXの市場価格と決められた。今回に当てはめると、FIT発電事業者から電気を40円/kWhで買った送配電事業者が、最高値では251円/kWhで新電力に卸供給したことになる。

送配電事業者に意図はなくとも、211円/kWhの利鞘が入ることになり、仮に1日100万kWhだったら2億1,100万円になる。送配電事業者は何の努力もせず、新電力側には何の落ち度もなく、しかしマジックのような資金移動が行われた。この総額は詳細な根拠数字が求められるが、ざっと2,000億円にのぼるのではないかと推測する。

5. JEPXと需給調整は実は直結していない

ここまでJEPXの市場価格高騰の原因と問題点を分析してきたが、ここで最も大きな問題を指摘したい。JEPXは送電線とは直結していないということだ。電気は発電所で作られて送電線に入り、電気を必要とするユーザーに届けられている。間にJEPXという関所があるわけではない。旧一電(と電源開発)は3.5億kWhもの電気を売り入札から外し、需給逼迫した自分たちの電気として使ったと主張するかもしれないが、送電線の先は旧一電ユーザーも新電力ユーザーも混在している。区別することは不可能で、市場では電気を買えなかった新電力ユーザーにも流れていく。

JEPXで需給調整しようというのは、ザルで水をすくうのと一緒で、3.5億kWhの電気を旧一電だけが使おうとしてもできない。相当量が送電網からザーザーと新電力に流れていく。もしそのことに気づかず、需給調整できていると考えていたとしたら、これは本当に危険な状態だ。新電力の電気を3.5億kWh減らしたと思っても、新電力ユーザーは送電網から供給されており減っていない。結果として、日本の総需要に対し電気が3.5億kWh足りない状態になるからだ。まかり間違うと「全国大停電」を起こしかねない。

この問題は、まだどこからも指摘されていないが、このようなオペレーションは、デマンドレスポンス(DR)やバーチャルパワープラント(VPP)などの制度を完備し、コントロールが可能にしてから行うべきである。

旧一電がJEPXへの電気を減らしても日本の総需要は減らない


グリーンピープルズパワー株式会社作成

6. 大停電を招かないためには早急の制度改革が必要

以上、今回のJEPX市場価格高騰について幾つかの問題を提起したが、大停電を起こさないためには早急な対策が必要だと思う。まとめると以下の5つになる。

1)旧一電によるJEPXへの売り入札は一定量を義務化すること(グロスビディングとは別に)。
2)JEPXの入札制度を改善し、約定価格未満でもインバランスとはしないで、送配電からの補填を可能にする。
3)2022年度とされている新インバランス料金制度の前倒し実施。
4)FIT特定卸供給の卸供給単価をFIT価格か市場価格の時限的選択制とする。
5)JEPXを使った需給調整の禁止。

ちなみに当社(グリーンピープルズパワー)も、数千万円の損害を被った。しかし、ユーザーに損害を転嫁することはできないと判断し、損害を埋めるべく緊急増資を行っている。再エネ100%の電気供給できる仕組み造りにチャレンジしつつ、いち早くこれだけの状況分析が行えた会社を残したい! と思われたら、ぜひ増資にご協力いただきたい。

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竹村英明
竹村英明

1951年広島生まれ。国会議員秘書や国際環境保護団体グリーンピースを経験。環境エネルギー政策研究所、飯田市での地域エネルギー事業、エナジーグリーンでの環境価値取引事業の後、2014年に市民電力連絡会設立。2015年再エネ発電会社であるイージーパワー(株)設立、代表取締役。2017年電力小売のグリーンピープルズパワー(株)設立、代表取締役。2019年に小売電気事業登録。 グリーンピープルズパワーのホームページ  https://www.greenpeople.co.jp ブログは「竹村英明のあきらめない!」 https://blog.goo.ne.jp/h-take888

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