日本ではあまり紹介されない海外のエネルギー業界最新ニュース。EnergyShift編集部が厳選してお送りする。
フェロー諸島で潮汐発電の可能性
デンマーク領のフェロー諸島では、潮汐発電がベースロードとして商業運転可能と報告されている。フェロー諸島の電力会社であるSEVの年次報告書の中で、博士課程の研究者ヘルマ・マリア・トロンハイム氏が指摘している。
年次報告書では、フェロー諸島における電力需要は暖房や運輸部門を含め2017年の350GWhから2030年には600GWhに増加する予測があり、これを100%再エネでまかなうビジョンを示している。そのための電源として、150MW~200MWの潮汐発電が期待できるということだ。フェロー諸島の主要な18の島の間には、潮汐の時間の差があり、さまざまな場所に設置することでベースロードとして運用できるという。
現在、SEVとスウェーデンの海洋エネルギー開発会社であるMinestoはDeep GreenとよばれるMinestoの特許技術により、2基の系統連系タービンによるパイロットプロジェクトを立ち上げている。このプロジェクトは、EUのHorizon2020 Programとスウェーデン政府の両方から資金援助を受けている。
レドックスフロー蓄電池併設のメガソーラー
英国のredT energyとカナダのAvalon Batteryが2020年3月に合併し、レドックスフロー蓄電池のメーカーInvinity Energy Systemsを設立した。
Invinityがターゲットとしているのは、MWを超える太陽光発電所に併設する蓄電池だ。すでに、米国アイオワ州の1MWの太陽光発電所に設置した1MWhの蓄電池、中国青海省のGW級の太陽光発電所の一部に設置された2MWhの蓄電池のプロジェクトが進行しているという。
同社の蓄電池VS3-022は、220kWhの蓄電容量と76kWの出力を持ち、エネルギー効率の年間劣化は0.1%未満。25年の寿命で2万回の充放電が行えるという。価格は未定だが、リチウムイオン蓄電池よりも安く、450ドル/kWhと推定されるという。
また、一部の専門家によると、リチウムイオン蓄電池の代替として、2028年には35億ポンド(約4,580億円)の市場規模が見込まれるという。
A redox flow battery for MW-sized solar-plus-storage - pv magazine 2020/4/29
マイケル・ムーア監督の新作映画は「企業に売られた環境保護」がテーマ
『ボウリング・フォー・コロンバイン』や『華氏119』などのドキュメンタリー映画で知られるマイケル・ムーア氏がエグゼクティブ・プロデューサーの新作映画『Planet of the Humans』が公開されている。監督はジェフ・ギブズ氏。
この映画の宣伝コピーでは「太陽光発電や風力発電が私たちを救うという環境保護運動が、いかにウォールストリートの企業理念に敗れてきたか、厳しい目で見た」というもの。
また、アル・ゴア元米副大統領、シエラクラブ、ゴールドマン・サックス、バラク・オバマ前米大統領らによる再エネへの取り組みを批難し、「資本主義による環境運動の乗っ取りが完了した」と主張する。そして、環境運動のコントロールを億万長者から取り戻さなければならないという。
この映画についてPV Magazineは、映画で指摘されている、太陽光発電と風力発電には広い土地が必要であること、風力発電にはコンクリートやグラスファイバーが大量に必要であり、太陽光パネル用のシリコン精製には大量の電気が使われていることは事実だとし、バイオマスエネルギーに対する批判は正しいかもしれないとしている。その上で、この映画では太陽光発電の効率向上や価格低下を無視していると指摘している。
また、「この映画の製作者が、風力や太陽光などの自然エネルギーが解決策だと信じていないとしたら、彼らは何を信じているのだろうか?(他のエネルギーへの支持がない)」とも指摘。この映画は人口増加そのものを問題にしていることは確かだが、最終的に非資本主義的な、牧歌的な代替案しか示さず、ラストシーンは殺伐としたものになっているということだ。
映画『Planet of the Humans』はYoutubeで全編公開中。
ドイツ連立政権内で対立する、エネルギーと気候変動対策
ドイツの連立政権内で、エネルギーと気候変動対策で、政党間の対立が起きている。
メルケル首相が所属する中道保守のキリスト教民主・社会同盟(CDU・ CSU)のメンバーは、首相が提起した2030年のEU気候変動目標(EU climate target)の承認について懸念を表明しているという。「新型コロナウイルス危機の観点から、目標の引き上げが適切であるかどうか、問われている」とCDU ・ CSUの議会グループの副リーダーであるゲオルグ・ニュスライン氏はHandelsblatt紙に語った。また、ドイツは工業国であり、「CO2が集約されるような生産工程(工業)の大規模な移転」のリスクをとることなしに、55%を超える温室効果ガス排出削減を達成することはできないと彼は警告している。CDU・CSUはEU気候変動目標が引き上げられた場合、加盟国間の温室効果ガス削減の新たな配分を要求する文書を採択する予定。
一方、連立を組むドイツ社会民主党(SPD)のメンバーは、新型コロナウイルス危機からの回復と野心的なエネルギーおよび気候政策を組み合わせることを求めている。SPDのヨハン・サーサフ氏とベルント・ウェストファール氏によると、CDU・CSUの政策は「持続可能なエネルギー転換を妨げており」、ドイツ経済を傷つけているため、「古い技術」を手放すべきだという。国は再生可能エネルギーを2030年までに電力消費の65%にする必要があるが、陸上風力に対する住宅地の距離規制によって止まっているというのが彼らの主張だ。
メルケル首相は、EUの2030年の温室効果ガス削減目標を50~55%に引き上げることを支持している。ドイツの現在の2030年の削減目標は、1990年比約57%削減だが、EUの努力配分制度は豊かな国の削減責任を求めるため、この目標をさらに引き上げる可能性が高い。
German govt coalition members at odds over energy and climate ambitions - Clean Tech Wire 2020/5/5
Climeonが台湾で地熱発電モジュールを受注
スウェーデンの地熱発電技術企業Climeonは、台湾にある関係会社Baseload Power Taiwanから地熱発電モジュールを受注した。台湾初の地熱発電所となる見込み。年内に地熱発電モジュールを納入する予定。受注金額は、コンサルティング料を含め4,100万スウェーデンクローネ(約4億4,280万円)。
Climenonの地熱発電モジュールは、バイナリー式で150kWの出力があり、これを組み合わせることでMWクラスの発電設備にすることができる。また、直列し、熱の段階的利用も可能となっている。
主に、100℃前後の熱を利用し、新たな熱源が発見されれば追加での設置も可能となっている。
Climeon wins first order within geothermal in Taiwan - Climeon Press Release 2020/5/5
(Text:本橋 恵一)