脱炭素実現に向けてエネルギーはすべてゼロエミッション化を 東京大学 松村敏弘教授 インタビュー(中編)  | EnergyShift

脱炭素を面白く

EnergyShift(エナジーシフト)
EnergyShift(エナジーシフト)

脱炭素実現に向けてエネルギーはすべてゼロエミッション化を 東京大学 松村敏弘教授 インタビュー(中編) 

脱炭素実現に向けてエネルギーはすべてゼロエミッション化を 東京大学 松村敏弘教授 インタビュー(中編) 

2021年05月18日

第6次エネルギー基本計画をめぐって、経済産業省の総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会の委員である、東京大学社会科学研究所の松村敏弘教授におうかがいするインタビュー、中編をお届する。前編では、エネルギーミックスを決めるのは消費者の選択である、ということだった。中編では、2050年カーボンゼロに向けて、考えておくべきことについて語る。(全3回)

前編はこちら

2050年カーボンゼロを具体化する基本計画へ

― 再エネ支援の他にも、エネルギー基本計画にはさまざまなエネルギー政策が盛り込まれることになります。どのような政策に力を入れるべきでしょうか。

松村氏:基本計画を超えて、2050年カーボンゼロに強くコミットすることが必要です。その上で、具体性を持った政策が基本計画で議論されればいいと思います。

2050年カーボンゼロに向けて、従来は技術革新に期待する、難しいけれども技術が開発されれば可能になる、といった議論をしてきました。しかし、明確にカーボンゼロをコミットしたのであれば、イノベーションに期待して夢を語って煙に巻くのではなく、不確実性が高いところで、今ある技術でどこまでできるのか、ある確率でイノベーションによってどこまで達成できるのか、そういった点を明確にしていくことが必要です。コミットメントから基本計画が導かれる、あるいはコミットメントにそった方向が示されるべきです。

ゼロエミッション化は重要な政策の柱ですが、ゼロエミッションではない電源、産業は生き残れないということではありません。あくまでネットゼロなので、個別のものをそれぞれ完全にゼロにしていくのではなく、どうしても排出が残る分野ではマイナスエミッションと組み合わせて全体としてゼロにしていくことを考えることになります。

例えば、CCUS(CO2回収利用・貯留)付きの火力発電所でもCO2の回収漏れがわずかにあればゼロエミッションではありません。しかし、バイオマス発電にCCUSを組み合わせてカーボンマイナスにしていくことを組み合わせ、CO2をキャンセル(オフセット)していくこともできます。

あるいは、電力以外の分野でCO2排出をゼロにできないものがあれば、植林や大気中からの炭素回収でキャンセルし、ネットゼロにすることもできます。


東京大学社会科学研究所 松村敏弘 教授(撮影は2020年4月)

― CO2のキャンセルが必要な分野がある、ということに対しては、逆に電気はカーボンゼロにしやすい分野だといえます。電化の推進ということも優先されるべきでしょうか。

松村氏:電化プラス電源のゼロエミッション化は脱炭素化のメインシナリオです。

とはいえ、電気以外が合理的に脱炭素化されることも必要です。ガスや液体燃料もゼロエミッション化されるべきです。

エネルギーは基本的にゼロエミ化されるべきですが、燃料を電気に置き換えて減らしたとしても、都市ガスが必要なところも残ります。こうした分野に対し、典型的なものとしては、ゼロエミッション水素とこれを基に製造された燃料が期待されています。

一里塚として2030年にどうするか、という点では、経済産業省の「2050年に向けたガス事業の在り方研究会」が将来の姿を描く上で途中経過として明確に低炭素化を示しました。最終的には、植林でごまかすのではなく、ガス産業もかなりの確率で達成できるゼロエミを目指すということです。

植林には期待していますが、不可避的に残ってしまう分野での排出をオフセットするために使われるべきで、電力・都市ガスなどのエネルギー産業がはじめからこれを当てにしてイノベーションのための投資を怠るのは問題外で、そのような企業・産業は早晩消費者・投資家の支持を失うと思います。

成功したイノベーションで安価なゼロエミを

― 過度なイノベーションへの期待については、問題があるのではないでしょうか。

松村氏:例えば、CCUSについてはとても期待しています。とはいえ、まともなコストで実用化できるかどうか、その点については大きなハードルがあると思います。

ゼロエミ水素についても同様です。

将来のカーボンニュートラルにおいては、CCUS火力の割合や、グリーン水素の都市ガス導入の割合が重要だと考えています。

もちろん低コストのカーボンゼロのエネルギーが高い割合となり、CCUSは限定的な役割になるかもしれませんし、調整力電源としても別の方法も検討されるべきでしょう。

ただ、繰り返しになりますが、こうした技術に不確実性があるからこそ、エネルギーミックスのような数字にこだわるべきではないということです。イノベーションに成功し、最も安価にゼロエミッションを達成できるものが高い割合で使われるのが理想で、その割合を政府が決める必要はありません

(明日5月19日公開の後編へ続く 前編はこちら

(Interview &Text:本橋恵一、小森岳史、Photo:岩田勇介)

松村 敏弘
松村 敏弘

東京大学社会科学研究所教授。博士(経済学、東京大学)。大阪大学助手、東京工業大学助教授を経て現職。専門は産業組織、公共経済学。1998年より電力改革の仕事に携わり、現在は経済産業省の調達価格等算定委員会、基本政策分科会、制度設計専門会合等の多数の委員会の委員を務める。

この記事を読んだ方がよく読んでいる記事

エネルギーの最新記事