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洋上風力発電に潜むリスクとは 洋上風力発電開発に特化した保険商品を東京海上日動、損保ジャパンなどが提供する理由

洋上風力発電に潜むリスクとは 洋上風力発電開発に特化した保険商品を東京海上日動、損保ジャパンなどが提供する理由

EnergyShift編集部
2021/04/13

風力発電、それも洋上風力発電に特化した保険商品が損保ジャパン、東京海上日動という日本大手の保険会社から相次いで提供がはじまった。海の上という特殊事情が洋上風力発電開発にはからむからだ。

東京海上日動が洋上風力発電に特化した保険を提供開始

3月10日、東京海上日動火災保険会社は、国内の洋上風力発電事業者向けに「洋上風力発電向けパッケージ保険」の開発を発表、4月からの提供をはじめた。

ベースになっているのは「船舶保険」だが、設備の操業中だけでなく、設備の工事中の損害や、遅延による損害までを包括的に補償しているのが特徴だ。また、発電事業者だけでなく、タービンメーカーやプロジェクト建設請負、工事関係者も保険内容に含まれる。

それだけではない。洋上風力設備特有の事故、たとえばO&M(オペレーション・メンテナンス)時の設備修理時の船舶手配、全損時の撤去費用、台風や津波等の自然災害リスクにも対応する。

これらの計算モデルは、海洋開発、たとえば海洋上の石油ガス開発事業などでの独自の補償形式である「ノック=フォー=ノック(K4K、自損自弁、または責任等分の考え方)」や、洋上風力発電に特化したマリン・ワランティ・サーベイ(MWS)など、特殊な方法が使われる。マリン・ワランティ・サーベイとは、再保険会社に再保険を引き受ける仕組みで、引き受け先の再保険会社が第三者機関となるMWSを指定してそこが審査・検査をおこなう。

損保ジャパンはリスク評価で東京大学と提携

損保ジャパンも、2020年7月から洋上風力発電事業者向けの建設から事業運営までセットになった「ONE SONPO WINDサービス」を提供している。こちらはリスク評価に東京大学と共同研究をしており、国内外の研究機関の持つ波浪データ、事故データ、損保ジャパンが持つ自然災害と構造物のリスク分析を独自に融合し、開発したものだ。浮体式洋上風力発電設備にも対応としている。

損保ジャパンの提供するサービスは2段階となっている。リスク把握と評価、保険設計支援(SOMPOリスクマネジメント+東京大学)をはじめに行い、実際の包括保険は保険設計後に損保ジャパンがおこなう。

定量的リスク評価イメージ

定量的リスク評価イメージ
損保ジャパンプレスリリースより

洋上風力発電ならではのリスクとは

どちらにも共通するのは、洋上風力発電に特有の事情だ。

まず、洋上風力発電はそのプロジェクトがどうしても大型化する。ひとつのプロジェクトで数千億円はざらだ。また、大型プロジェクトでないと、かえって後々のコスト的に厳しいものになる。

また、海洋特有の問題が、海底ケーブルだ。海洋石油ガス開発のように、タンカーで行き来するというものではない。海底ケーブルの長さ、深さは開発地固有のものなので、個別に見ていくしかない。ケーブル自体の損害だけでなく、修理・交換のコストもその十倍以上かかる時もある。

そして、日本特有の問題として、台風の多さ、季節性の自然変動があげられる。これは、開発工事の最中だけでなく、運用時のO&M時にも同じリスクがある。

ほかにも洋上へと部材を持っていくときの港湾利用のスケジューリング、保管、組立場所などにも独特の問題がある(タービンの組立などは港湾でおこなわれることが多い)。

アメリカ最大の保険会社、トラベラーズの洋上風力担当者もプロジェクトの場所、レイアウト、サプライヤー、設置、運営など、保証の対象となりうる範囲が陸上風力発電に比べてはるかに多く、規模や複雑さもケタ違いだという。また、O&Mにヘリコプターが必要になるなど、メンテナンスのアクセス確保だけをとっても独特で、保険会社は長期的な視野が必要になってくるということだ。


風力発電の部材(羽根部分)を運搬する様子

一気に成長する日本の洋上風力発電とリスク管理

しかし、現在の日本のカーボンニュートラルには洋上風力発電の推進が欠かせない。4月9日に明らかになった経済産業省の2兆円基金の分配事業にも洋上風力の低コスト化が採択されている。2030年までに1,000万kW、40年までに3,000万〜4,500万kWの導入を目指している。

日本風力発電協会の予測では、2030年の洋上風力発電の直接投資は5〜6兆円規模、経済波及効果は13〜15兆円になるとしている(どちらも2030年までの累計)。

ここにきて、一気に洋上風力発電界隈が活気を帯びてきた。保険会社の新商品開発も成長が見込まれる洋上風力発電だからこそだ。日本特有のリスクも織り込みながら、洋上風力の発展に寄与できる存在へと成長が期待される。

(Text:小森岳史)

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