経済産業省は企業が安価な再生可能エネルギーを調達できるよう、これまで直接購入できなかった再エネ価値の企業取引を2021年11月から解禁する。市場整備に向けた議論が進むなか、「再エネ価値があまりに安価になると、再エネの新規投資を阻害する」との意見が浮上した。再エネ価値はいくらが適正なのか議論を呼びそうだ。
経産省は7月16日、総合資源エネルギー調査会の部会のひとつ、制度検討作業部会(第54回)を開き、企業が再エネ価値を取引市場から直接購入できるよう、新たに創設する「再エネ価値取引市場」について議論した。
再エネ価値の直接購入解禁は、梶山経済産業大臣の肝いり施策のひとつでもある。
太陽光発電や風力発電などの再エネでつくった電気を一定の価格で買い取るFIT制度由来の再エネ価値は、900億kWhを超える供給量がある。しかし、「2020年直近では20〜30億kWhしか購入されておらず、ほとんどが売れ残っている」(事務局)状況だ。
その原因のひとつが、1kWhあたり1.3円という最低価格の高さだ。欧米は0.1〜0.2円だ。10倍もの金額差がある。しかも、再エネ価値は大手電力会社や新電力を介してしか買えず、手数料がさらに上乗せされ、企業に届くころには1.3円が2円以上になっているという。
そこで、梶山大臣は直接購入解禁とともに、再エネ価値の価格についても「大幅な改定」を指示。欧米並みの0.1〜0.2円に引き下げられる見込みだ。
しかし、16日の部会で複数の出席者から「0.1円などあまりに安価になると、再エネの新規投資を阻害する」という意見が相次いだ。
たとえば、企業の再エネ導入の取り組みとして、オンサイトあるいは、オフサイトPPA(電力購入契約)が注目されている。しかし、再エネ価値があまりに低くなり、それだけで脱炭素が実現できることになれば、手間ひま、費用がかかるPPAなど誰も取り組まなくなる。
「技術開発や省エネへの投資にも影響を及ぼす」「再エネ主力電源化に水を差す」との厳しい意見も出た。
企業の直接購入は今年11月からはじまることが決定済みで、部会では9月中にも価格など具体策をとりまとめる予定だ。だが、適正な再エネ価値とはいくらなのか。今後、議論を呼びそうだ。
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