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RE100 FUJITSU(1) ICTでゼロエミッション・富士通は脱炭素社会の実現に挑む

2020年02月08日

2018年7月にRE100を宣言した富士通は、ICTを活用して、自らCO2ゼロエミッションに挑むとともに、そこで得た技術やノウハウを社会や顧客に提供することで、脱炭素社会の実現を目指している。気候危機に立ち向かう最新の取り組みを、富士通サステナビリティ推進本部 環境統括部 環境リファレンス部部長 山崎誠也氏に聞いた。(全2回)

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富士通が気候危機に立ち向かう理由

われわれは1935年の創業以来、「自然と共生するものづくり」という方針のもと、地球環境保全を経営の最重要項目のひとつに位置づけてきました。ICT企業として持てるテクノロジーと創造力をいかし、社会の持続可能な発展に貢献する。この方針のもと、1993年から3年ごとに環境行動計画を策定し、低炭素に向けた活動を進めてきました。

2009年には脱炭素社会の実現を目指す企業ネットワーク、日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP:Japan Climate Leaders’ Partnership)へ参加し、低炭素から脱炭素へと大きく舵を切ってきました。

2016年には「産業革命以前からの平均気温上昇を2℃未満に抑え、1.5℃以内とすることを目指す」パリ協定が発効されました。この2℃ないし1.5℃目標を達成するには、CO2排出が実質ゼロとなる世界を構築しなければならず、脱炭素社会への大転換が求められたわけです。

すでにグローバル市場では脱炭素へのさまざまな変化が生まれており、CO2排出規制の強化や炭素税などカーボンプライシング適用国の拡大、炭素税の高騰などが予測されています。 またESG(環境・社会・ガバナンス)投資の拡大も進み、マーケットルールにも大きな影響を与えています。

富士通グループは世界180カ国以上で事業を展開し、約13万人の社員がいます。電力消費量は約16億kWh(2018年度実績)にのぼります。グローバルICT企業として、果たすべき役割があるのではないか。実現すべき未来の姿とは何か。これらを改めて考えた上で、2050年までの中長期環境ビジョン「FUJITSU Climate and Energy Vision」を2017年に策定したわけです。 このビジョンは「自ら:富士通グループのCO2ゼロエミッションの実現」「緩和:脱炭素社会への貢献」「適応:気候変動による社会の適応策への貢献」の3つの柱からなります。

CO2を出さないことが企業価値になる

自らが率先して脱炭素を実現するために、2050年までの期間を3つのフェーズにわけ、CO2排出量をゼロにするシナリオを設定しています。

2020年までのフェーズ1では、日本国内では既存の省エネ技術を横展開するとともに、AIなどを活用した新たな省エネ技術の検証、低炭素エネルギーの利用を進める。海外ではヨーロッパを中心に再生可能エネルギーの積極的な拡大を進めていきます。

フェーズ2(2030年まで)は、排出削減を加速させるため、A IやZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化の普及拡大などに取り組みます。また、日本でも安価で利便性の高い再エネが増えていることが期待できるため、地域性や経済性を考慮し、戦略的な導入を拡大します。2030年のCO2排出量の削減目標は33%(2013年度比)に設定しています。

フェーズ3(2030年以降)は、革新的な省エネ技術の展開・深化と脱炭素化を見据えて、カーボンクレジットによるオフセットで補いつつ、再エネ導入を加速させる。その結果、2050年までにゼロエミッションを達成する計画です。

この「FUJITSU Climate and Energy Vision」の策定に引き続き、2018年7月にはRE100に加盟しました。2030年までに再エネ比率40%以上、2050年に100%にする目標を掲げています。

世界中の企業が今、RE100を次々と宣言し、脱炭素社会の実現に向けて行動を起こしています。これからはCO2を出さないことを価値とする新たなビジネスモデルの推進が必要です。

私たちは、ICTでお客さまや社会、バリューチェーンの脱炭素に貢献するとともに、気候変動への適応策を支援することで損失と被害の最小化を可能にすると考えています。

そのためにも自らがゼロエミッションに挑み、その中で得た技術やノウハウを事業として提供することで、脱炭素社会の実現に貢献していきたいと考えています。

新規ビジネスの創出とは、地球環境の課題を克服するだけでなく、イノベーションを生み出すチャンスだと捉えているわけです。

事業構造改革によって、CO2排出量が減少

脱炭素に大きく舵を切った2009年からの10年間を改めて振り返ってみると、弊社の事業構造そのものが大きく変わった時期でもありました。かつては半導体や電子部品、PC、携帯端末事業などの事業が、CO2排出量の多くを占めていました。
しかし、ビジネスモデルの変革により、富士通グループの事業から発生するCO2排出量は減少しています。

2018年度末の富士通グループのCO2排出量は92.3万トンと2013年度比で30.3%減少しました。またグリーン電力の購入や太陽光発電の導入などにより、再エネ利用量は約183GWh/年、全体の電力使用量に占める割合は8.6%になっています。

さらにサプライチェーンにおけるCO2排出量削減の取り組みも進め、2次サプライヤー4万6,000社以上に削減活動の実施を依頼しています。

AIなどを活用し、データセンターの空調消費電力を29%削減

一般的な脱炭素に向けたプロセスは、まず電化を進める。電化のあとに、その電気使用量を下げる省エネをやり、再エネ導入を図っていくというものです。われわれは今の段階で、すでにCO2排出量の80%近くが電気由来となっています。

弊社のデータセンター事業もAIやIoT市場の急速な拡大にともなって成長しています。当然ですが、消費電力量も増加傾向です。この流れは世界同時的に進んでおり、データセンターの使用電力量はすでに世界全体の約2%を占めるとされ、消費電力量の増加はますます進む見込みです。そのため、電力コストの上昇のみならず、気候変動リスクの観点からもデータセンターの省電力化が求められています。

私たちはデータセンター事業などのビジネス成長を追求しながら、それ以上に電力消費量を抑え込む省エネに取り組まなければいけません。

データセンター全体の電力量の約半分を占めるのが空調設備です。空調設備の電力削減はまったなしの状態です。そこで、サーバや空調機器などに温湿度センサーを設置してデータを収集し、AIでデータセンター内の温度変化を予測することで、空調を自動で最適制御する技術を開発しました。トライアルを実施したデータセンターでは、消費電力を29%削減できました。2019年度から弊社のデータセンターに順次導入していく予定です。

ただし、省電力化だけではCO2ゼロエミッション達成には到底およばず、やはり再エネ転換が必要になります。

ヨーロッパ拠点ではRE100を達成

富士通グループの国内外売上比率は、2018年度時点で国内約64%、海外約36%です。エネルギー消費量もおおむね売上比率と同じで、国内60%、海外40%といったところです。われわれのRE100への基本方針は、国や地域に応じて、最適な、経済合理性のあるオプションを選択し、再エネを導入していくというものです。

ヨーロッパでは再エネマーケットが成熟し、再エネ発電単価も、再エネ環境価値(証書)も安いため、電力会社による100%再エネ電力メニューや証書などの組み合わせによって、再エネ比率100%を達成しています。アメリカも経済合理性のある形で再エネ調達ができるようになり、再エネ比率は50%近くになりました。

単純に証書を購入するのではなく、オンサイト太陽光発電などを導入することで、再エネの導入・拡大にも取り組み、2020年度までに再エネ使用量を2017年度比20%以上拡大させる予定です。

次の10年が脱炭素実現に向けたラストチャンス

これまで継続的に脱炭素化に取り組んできましたが、国際世論が突きつけてきたものは、CO2削減のさらなる加速でした。COPや国連など国際会議では、破壊的な異常気象を受け、2030年までの次の10年間で削減速度を加速できなければ、「1.5℃どころか、2℃目標さえ実現できず、気候危機に人類は負けてしまう」という強い危機感が共有されつつあります。

2050年を考えるとして、その直前の10年間だけをドラスティックに取り組んだとしても、それまでの対策が不十分であればその間に累積排出量はどんどん増えてしまいます。削減効果が出るまでに時間もかかり、ゼロエミッション達成はかなり厳しくなります。

したがって、私たちも、2030年までの次の10年間における対策が、脱炭素実現に向けたラストチャンスだという危機感を持っています。この10年こそがキータームなのです。

とりわけ、富士通グループの電力消費量の多くを占める日本では再エネ比率がごくわずかです。2030年を見据えて、ここ日本においても、安価で利便性の高い再エネが普及できるような仕組みを作らなければいけない。そこで近年はICTによるCO2削減対策のソリューション提供や技術開発を強化しています。

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山崎誠也
山崎誠也

1996年に富士通株式会社入社。入社後、携帯電話システムの開発に従事し、第三世代携帯電話システムの基地局制御装置の設計・開発を担当。2004年に環境本部に異動し、環境コミュニケーションの推進や、環境経営の企画立案を担当。富士通グループ環境行動計画の立案のほか、グリーンICTプロジェクトの立ち上げや環境ソリューションの企画・ビジネス推進を行う。現在は、富士通グループ中長期環境ビジョンで掲げた2050年ゼロエミッション、およびRE100の達成に向けてGHG削減や再生可能エネルギーの利用拡大に向けた企画やリファレンスモデル構築を推進。技術士(環境部門)

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