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ラテンアメリカのコロナショックからの回復はグリーンでなければならない IRENAとラテンアメリカ・エネルギー機構がウェビナーを開催

ラテンアメリカのコロナショックからの回復はグリーンでなければならない IRENAとラテンアメリカ・エネルギー機構がウェビナーを開催

2020年08月31日

ラテンアメリカでも、コロナウイルスの経済的打撃は深刻だ。各国が経済的回復を模索する中、IRENA(国際再生可能エネルギー機関)とラテンアメリカ・エネルギー機構(OLADE)はウェビナーを共同開催し、グリーンリカバリーがいかに地域の経済復興に役立つのかを議論した。

ラテンアメリカの再生可能エネルギー市場は、世界で最もダイナミック

2020年8月19日(EST)、ラテンアメリカ・エネルギー機構(OLADE)と国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は共同で、ウェビナーを行った。このウェビナーは、ラテンアメリカ・カリブ海地域におけるエネルギー転換をどのように加速させるのかが主要な議題で、パナマ、ウルグアイ、世界風力エネルギー協会(GWEC)、IRENA、OLADEの代表者に加え、COP26の地域アンバサダー(ラテンアメリカ、カリブ地域)であるFiona Clouder氏も議論に加わった。

ラテンアメリカはコロナウイルスの影響を大きく受けており、石油市場の変動も続き、地域経済が大きな打撃を受けている。各国指導者はこの打撃からの復興を模索し続けているが、まだ明らかな道筋は見つけられていない。

ラテンアメリカは、世界で最もダイナミックな再生可能エネルギー市場の一つになっている。2010年から2015年の間に、1,200億ドルあまりの再生可能エネルギーへの投資が行われている。ラテンアメリカのいくつかの国は世界の再生可能エネルギー市場のトップ10に入っている。現在、この地域には約200GWの再生可能エネルギー容量が設置されており、電力容量の半分以上、一次エネルギー全体の4分の1を占めている。

しかし、それでもこの地域のポテンシャルはまだ十分に開拓されていない。
IRENAによると、地域のポテンシャルの90%以上は未開拓のままであり、地域の投資ニーズは現在から今世紀半ばまでの間には年間で450億ドルになると推定されている(現在の計画や政策より10%以上増加)。

OLADEの主導による地域イニシアチブ(2019年12月発表)は、2030年までに電力容量の再生可能エネルギーは少なくとも70%に到達するという地域の目標を設定している。

ウェビナーの様子(IRENAウェブサイトより)

ラテンアメリカの回復はグリーンで持続可能なものでなければならない

COP26の地域アンバサダーFiona Clouder 氏は「この地域の復興はグリーンで持続可能なものでなければならず、再生可能エネルギーに支えられていなければならない」と指摘した。
「変化し続ける世界においては、グリーンな復興と持続可能な未来の構築がさらに重要になります。ラテンアメリカの国々は、ビジョン、野心、天然資源を持っています。低炭素経済への移行の一環として再生可能エネルギーを利用し、低炭素経済への移行を図るのに適した立場にあるのです。COP26は、ベストプラクティスを共有するためのよい機会になるでしょう」と述べた。

IRENAのガウリ・シン事務局次長は、「増加した投資を誘致することは、短期的にも長期的にも地域に強いリターンを提供するだろう。ラテンアメリカはコロナウイルスによる経済的負担を抱えており、世界経済フォーラムは、この地域の経済が2020年には縮小することを示唆しています。ラテンアメリカとカリブ海地域における再生可能エネルギーの転換を加速させることは、2050年までに地域全体で300万人以上の雇用を創出することになります。IRENAのエネルギー転換シナリオは、この地域に、転換に投資した1ドルにつき3ドルから8ドルの経済的リターンを生み出す可能性を示唆しています」と述べた。

パナマ、ウルグアイの政策担当者も同調

パナマのグアダルーペ・ゴンザレス エネルギー長官は、(再エネへの転換が)パナマに経済利益をもたらすことを強調した。「パナマは再生可能エネルギー導入のための5つの重要な柱を中心とした『エネルギー移行アジェンダ2030』を策定している。低炭素技術の導入だけでなく、エネルギーへのアクセスの改善、雇用創出、エネルギー分野における女性の役割、再生可能エネルギーに関する能力構築、エネルギー消費者のエンパワーメントなどの社会的側面についても議論している」と述べた。

ウルグアイの国家エネルギー局長であるフィッツジェラルド・カンテロ氏は、2019年に再生可能エネルギー発電の98%に達した電力部門を皮切りに、自国が経済の脱炭素化に向けた道筋をたどっていることを強調した。「ウルグアイの変動する電力、特に風力エネルギーによる発電は、電力の国境を越えた取引を支援し、e-モビリティの利用を促進し、輸送、産業、国際貿易のためのグリーン水素の潜在的な生産に利用できる電力の余剰を残している」と述べた。

ウェビナーではその他に、コロナウイルス・パンデミック後の経済回復支援のために設計された各地域のエネルギー政策措置が議論された。より柔軟な電力グリッドの開発、エネルギー効率化ソリューション、電気自動車展開のための充電、エネルギー貯蔵、水力発電、グリーン水素、長期的なエネルギーと気候の持続可能性に費やすべき一貫した技術投資等について議論が交わされた。

(Text:小森岳史)

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小森岳史
小森岳史

EnergyShift編集部 気候変動、環境活動、サステナビリティ、科学技術等を担当。

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