レノバ 再エネメジャーを目指す脱炭素企業 -シリーズ・脱炭素企業を分析する(9) | EnergyShift

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レノバ 再エネメジャーを目指す脱炭素企業 -シリーズ・脱炭素企業を分析する(9)

レノバ 再エネメジャーを目指す脱炭素企業 -シリーズ・脱炭素企業を分析する(9)

「脱炭素企業分析」、第9回は、日本発の再エネメジャーを目指すレノバだ。太陽光発電で成長してきたが、現在はバイオマス発電や地熱発電の開発に取り組み、将来の洋上風力発電への参入を通じて、アジアへの展開を目指している。

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再エネメジャーを目指すレノバ、直近の株価と業績は

2020年10月ごろから急上昇し、2021年1月にピーク。その後、少し下がったものの、4月下旬から再び上昇。

上昇の要因としては菅首相のカーボンニュートラル宣言、4月の気候サミットで日本が2030年46%削減にコミットしたことがストレートに反映されている。

7月12日、経済産業省の審議会で発電原価のデータが発表され、原子力に比べると太陽光が一番安い、ということで太陽光をドンドン造ろうという雰囲気になり、レノバに限らず再エネ企業の株価は上がっている

ただし、レノバへの評価というのは業績よりも、将来の洋上風力に対する期待が非常に大きい。現在のメインは太陽光発電だが、そこから風力・バイオマス・地熱にシフトしていけるかどうかが短中期的課題となる。

マルチ電源を標榜するレノバは太陽光だけではなく、風力、地熱、バイオマスにも取り組んでいる。小売電気事業に参入せず、電源側に特化していることもレノバの特徴。

その上で海外展開も視野に入れて、アジアの再エネリーディングカンパニーを目指す。

おそらく、レノバが事業モデルとしているのはデンマークのオーステッドではないだろうか。オーステッドはもともと石油会社だったが、現在は再エネの世界的なメジャーの1つといってよく、日本でも洋上風力案件に参画している。

売上だが、2021年3月期で205.53億円、利益は115億円。グラフを見てみると順調に成長しているのがわかる。

2021年3月期の通期グラフがないのは、会計基準をIFRSに変更して、同じグラフにしていない為で、売上高は順調に右肩上がりで伸びている。

レノバは2000年創業 沿革をたどる

2000年創業。当時は環境エネルギー分野のコンサルティング会社で、社名はリサイクルワン。プラスチックや容器包装リサイクルに取り組み、実際にリサイクルの事業会社も作っている。

固定価格買取制度の始まった2012年、再エネ事業に参入、2013年には社名をレノバに変更した。2014年、かつてDDI(現KDDI)の創業に参画し、風力発電事業の経験を持つ、現取締役会長の千本倖生氏が参画したことも、重要なポイント。現在のCOOも、かつて千本氏が経営に関わっていたイーアクセスの出身。

2016年には、リサイクル関連事業をフランス系の企業ヴェオリア・ジャパンに譲渡し、再エネに特化した。2021年に運開した苅田バイオマス発電所の運営も、ヴェオリア・ジャパンが担っている。

2017年、秋田県と由利本荘市に洋上風力協力要請、2020年、ベトナム、クアンチ風力(陸上)に参画決定と、現状は順調に事業を拡大させているといえる。

事業展開

今後の事業展開だが、レノバとしては、グラフに示したように、太陽光発電は維持しつつも、バイオマス、洋上風力、地熱、海外転換へのシフトをしていく方向で、現在はその途中にある。

レノバの現在の事業規模は合計で1.8GW=1,800MW。運転中が約400MW、建設中・建設準備中が約500MW、開発中が約900MWとなっている。

これから開発していくべき案件が多くあるが、確実にこなしていくことができれば、成長が期待できるといえるだろう。

レノバの発電事業はFIT太陽光が支えてきた

レノバの成長をこれまで支えてきたのは、FITによる太陽光発電案件である。

写真は、レノバ最大の太陽光発電である80.8MWの岩手県軽米東ソーラー。ただし、こうした太陽光発電は、FITが実質終了することで、開発はスローダウンしていく。PPAなどによる拡大ではなく、風力発電など他の再エネへにシフトしていくということだ。

洋上風力発電の開発は、まだまだ時間がかかる。写真は、秋田県由利本荘市に計画している洋上風力の完成予想図である。

中期的に拡大させていく案件が、バイオマス発電だ。

写真は2021年に運開したばかりの、福岡県にある苅田バイオマス発電所。出力は75MWで燃料は国産木質ペレット、未利用材、パームヤシ殻を用いる。

懸念されるのは、パームヤシ殻の環境負荷だ。パームヤシのプランテーションはインドネシアなどで熱帯雨林破壊の原因とされている。認証を取得したものを使用できればいいが、そうでなければ持続可能な電源とはいえなくなる。それでなくとも、燃料の輸送にあたってCO2を排出しており、カーボンニュートラルではないという指摘がある。


南阿蘇湯の谷地熱プロジェクト(建設中)

日本は地熱資源については豊富だ。そうしたことから、地熱発電にも参入している。写真は、南阿蘇湯の谷地熱における噴気試験の様子。発電に必要となる蒸気の量や特性を確認するためのもので、試験が順調に完了、発電に必要な蒸気量が十分確認出来れば資源開発の段階を終え、いよいよ地熱発電所の建設に向けた関係者間の協議に移っていく。

太陽光発電と比較すると、他の再エネは開発のリードタイムが長い。地熱発電は、試掘の結果、蒸気が出てきて初めて発電所を作れるかどうかの調査をすることができる。バイオマスも燃料の調達からはじめないといけない。

つまり、今迄の太陽光のようにキャッシュにするのに時間が短かった案件から、キャッシュにするまで時間が長い案件に変わっていく。事業のタイムスケールも変わってくるという局面をどう乗り切るのか、この点が非常に大きな課題となる。

レノバの強みは「案件開発+ファイナンス」

レノバの強みは案件開発+ファイナンス。

地域においてプロジェクトを計画し、推進していくにあたって、どういうところにどういう人がいるかを把握し、どういった場所でどういった発電所を作ればいいか、こうした点を理解していることが、強みとなっている。

その上で、どのようなプロジェクトを組成していけば、利潤を大きくすることができるのか、こうした点についての知見も豊富だ。

この二つをうまく組み合わせて現実にしていくところにレノバという会社の特長があるといっていいだろう。

また、事業を単独で進めるということは想定しておらず、他企業とのパートナーシップを重視している。先のバイオマス発電所も九州電力の子会社などとの共同事業となっている。いろいろな会社と共同事業体を作り、あるいは匿名組合などを組成していくことで、事業を形作っていく。

横だけのつながりだけではなく、発電所の建設などの際は縦のつながりなども非常に柔軟に対応し、施工業者たちとの良好な関係を築いている。

こうした中、懸念材料は、バイオマス発電の持続可能性と、開発案件のシフトチェンジにおけるキャッシュフローだろう。

また、今後の課題は知名度と地域貢献だといえる。

レノバ自身の知名度は高いとはいえない。そうした会社が地域社会に入っていって、発電事業に取り組み、同時に地域貢献をしていくのか、そうしたことをきちんと考えておくことも必要だろう。

いろんな課題もあり、強みもあるが非常に今後が楽しみな企業、それがレノバだ。

(Text:MASA)

もとさん(本橋恵一)
もとさん(本橋恵一)

環境エネルギージャーナリスト エネルギー専門誌「エネルギーフォーラム」記者として、電力自由化、原子力、気候変動、再生可能エネルギー、エネルギー政策などを取材。 その後フリーランスとして活動した後、現在はEnergy Shift編集マネージャー。 著書に「電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本」(秀和システム)など https://www.shuwasystem.co.jp/book/9784798064949.html

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