電力各社は石油の追加調達に向け取り組むが、「石油供給各社の内航船不足などにより希望数量の調達に至っていない」(北陸電力)状況だ。関西電力は「海外からの直接調達を実施する」とするが、燃料制約は年明け以降も続く見通しである。
12月14日の小委員会において、委員のひとりである松村敏弘 東京大学社会科学研究所教授は、「LNGの燃料制約は11月に起こったため、(電力不足に対して)それほど差し迫ったものだと思われなかったかもしれない。しかし、12月、1月に燃料制約が起きるとすると安定供給は本当に大丈夫なのか。しかも、(発電コストが高い)石油火力であるだけに、電力の市場価格に与える影響は甚大になるかもしれない」と述べたうえで、「こんなことが簡単に起こる電力構造で大丈夫なのか、注視する必要がある」と指摘した。
石油火力は1970年代以前に建設されたものが多く老朽化が進む。脱炭素の流れや燃料コスト高、さらに内航船をはじめとする石油サプライチェーンの脆弱化により、石油火力の廃止は避けられない状況にある。実際、2025年度までに廃止される火力発電1,885万kWのうち、石油火力が1,140万kWと6割を占める。
火力供給力の増減見通し
出典:経済産業省
その一方で、石油火力ほど、供給途絶といった電力危機に対応できる電源はない。この冬を無事、乗り越えられたとしても、2023年1、2月も東京エリアなどで電力の需給がひっ迫する可能性がすでに指摘されている。脱炭素と安定供給をどのように確保していくのか、議論を重ねてゆく必要がある。
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