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IEA報告書を読み解く 今後5年間で再エネの容量は50%増。―それでもCO2排出削減には不十分

IEA報告書を読み解く 今後5年間で再エネの容量は50%増。―それでもCO2排出削減には不十分

EnergyShift編集部
2019/11/13

IEA報告書を読み解く 今後5年間で再エネの容量は50%増。―それでもCO2排出削減には不十分

2019年10月17日、世界エネルギー機関(International Energy Agency:IEA)は、報告書「再生可能エネルギー2019」を公表した。これによると、世界の再生可能エネルギーの総発電容量は2024年までに50%増加し、これをけん引するのが、屋根上型を中心とする分散型の太陽光発電だという。

だが、それでもなお、パリ協定などに対応した持続可能に向けての目標を下回っており、各国の政策が問われるという。

成長する太陽光発電市場

IEAによると、2019年から2024年の間に世界の再生可能エネルギーの発電容量は50%増加するという予測だ。2018年には2,502GWだったものが、さらに1,220GW増えるということになる。これにより再エネの電力量のシェアは、現在の26%から30%に拡大する。
増加する再エネのうち、60%を占めるのが太陽光発電だ。5年間に700GW近く増加するという(図1)。

図1:太陽光発電は自然エネルギーが容量拡大する中で大きく回復する(IEAの報告書から日本語仮訳はEnergyShift)

さらに報告書によると、太陽光発電のうちでも注目されるのは、事業用の太陽光発電ではなく、分散型の太陽光発電だと指摘されており、これが300GWを超えている。具体的には、住宅や事業所の屋根上に設置するタイプだ。日本ではすでに住宅用太陽光発電など屋根上設置型が普及しているが、これが世界的に拡大するということである。

とりわけ、中国における急成長が大きく、2013年~2018年の約50GWに対し、およそ3倍の150GWが今後5年間で増加する見込みだ。一方、こうした中にあって、日本では屋根上型の太陽光発電の増加は減速すると予測されている(図2)。

図2:分散型太陽光発電が2倍以上の拡大(IEAの報告書から 日本語仮訳はEnergyShift)

屋根上型の太陽光発電が増加する要因は、電気料金の節約のために事業所の設置が加速するということが、大きな要因だとしている。とはいえ、住宅用太陽光発電も2倍の伸びを示し、主な市場はオーストラリア、ベルギー、カリフォルニア、オランダ、オーストラリアだという。ここでもやはり、電気料金よりも太陽光発電の方が安いことが大きな要因となっている。

このように、屋根上型の太陽光発電の普及が進むが、それでもなお、利用可能な屋根の6%しか利用していないという計算だ。IEAの試算では、利用可能な屋根のポテンシャルは、9,000GWを超える。

洋上風力発電の大きな可能性

太陽光発電と比較すると陸上風力発電の開発は停滞気味だ。2015年以降、年間50GWから60GWという安定した開発が続く見通しだ。これは、中国と北米での開発が停滞していることが大きな要因となっている。

一方で洋上風力の成長は注目されるという。風力発電全体に占める割合こそ10%程度だが、5年間に43GW増加し、65GWに達する見込みだ。さらに今後20年間の潜在成長率は大きいと指摘する。IEAはこの報告書とは別に、洋上風力に関する報告書の公表を予定しているが、そこでは世界の数十万kmに及ぶ海岸線と風況の分析を行っているという。

一方、水力発電については、5年間で9%、121GWの増加にとどまる見通しだ。主に中国、インド、ブラジルで増加する。また、3つの大規模プロジェクト(中国2件とエチオピア)が全体の4分の1を占める。

パリ協定の目標には届かない開発ペース

太陽光発電を中心に増加する再生可能エネルギーだが、パリ協定の平均気温上昇2℃未満といった目標に合致するような持続可能な地球を目指すには、まだまだ不足しており、開発ペースを上げる必要がある。

IEAの試算では、政策措置や規制緩和、途上国への投資リスクの低減、風力発電と太陽光発電のシステムの統合の3つの課題を克服することによって、320GWの上積みが可能だとしている(図3)。

図3:今後5年間で再生可能エネルギーは成長加速する可能性がある(IEAの報告書から 日本語仮訳はEnergyShift)

また、屋根上型太陽光発電の急増については適切な管理が必要だ。というのも、電力の自家消費が増加することで、送配電網などの電力システムに対する投資が不足する可能性があるからだ。そのため、すべての需要家に公平に負担してもらうような政策が求められる。

また、再エネの普及が進まない分野としては、運輸部門がある。バイオマス燃料の普及が進んでいるが、それでも全体の5%に満たない。電車や電気自動車などで使われる再エネは運輸部門の再エネの10%程度となっている。今後は、航空や海運での再エネ利用も課題となってくる。

その一方、自動車の大型化が進み、とりわけSUVのシェアは2倍となり、CO2排出増加の大きな理由となっている。しかし、電気自動車への投資も進んでおり、バイオマス燃料への投資の2倍以上となっている。

電力の脱炭素化は重要なステップであるが、同時に、運輸、建物、エネルギー多消費産業の構造転換も切迫しているという。

これでも保守的なIEAの報告書

以上が、IEAが公表した「再生可能エネルギー2019」の概要だ。だが、これに付け加えるなら、IEAの立場は保守的なもので、2050年の時点でもなお、化石燃料が使用されており、こうした中で電力の再エネ化が大きく進むことが想定されている。

逆に言えば、保守的なIEAですら、現状の再エネの開発が不足していると指摘している、ということでもある。パリ協定の2℃未満の目標達成には、なお世界的な再エネ導入の加速が必要ということだ。

また、最近の気候変動枠組み条約の国際交渉(いわゆるCOP)では、平均気温上昇1.5℃未満を前提とした議論になる傾向にある。また、これに合わせて昨年10月にはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の特別報告書が公表され、2℃未満と1.5℃未満では大きな違いがあり、1.5℃未満に抑制するためには2050年には実質CO2排出をゼロにすることが求められていた。

IEAではまだ、1.5℃未満に対応したシナリオを公表していないが、内部での検討は始まっているという。

(執筆:EnergyShift編集部 本橋恵一)

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