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ドイツの再生可能エネルギー 急増を支えるのは、GEの最新火力発電

ドイツの再生可能エネルギー 急増を支えるのは、GEの最新火力発電

2021/02/22

再生可能エネルギー中心の社会に転換していくにあたって、変動するエネルギーと需給安定をどのようにつなげていくのかが大きな課題だ。先進的な再エネ大量導入を進めるドイツも例外ではなく、需要と供給の間にギャップがある。これを埋めていく手段の1つとして、GEの最新火力発電技術が使われるという。日本サスティナブル・エナジー代表取締役の大野嘉久氏が、なぜドイツが導入するのか、その背景や求められる技術水準について、解説する。

再エネを利用するための天然ガス火力とは

菅義偉首相が所信表明演説で「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」という目標を掲げたので「2050年には再生可能エネルギーだけの社会が完成する」と思う人がいるかもしれないが、太陽光や風力の直接利用だけで社会が成り立つ日は2050年にも、その後も永遠にやってこない

言うまでもないが、それは必要な時に必要なだけの太陽光や風力を自由に起こせるようにはならないからである。

仮に技術が発展して大規模な光や風を起こせるようになっても、人工光や人工風で発電したエネルギーが、それら人工光や人工風をつくるためのエネルギーを上回ることはありえないし、気象予測が高度に発達して太陽光や風力を100%正確に予測できるようになったとしても、人間がその予測に合わせてエネルギーを消費することもありえない

そこで、電力貯蔵などを中心として再生可能エネルギーを上手に使う技術の開発が世界で進められているが、このたびドイツで再生可能エネルギーの利用を大きく前進させる天然ガス火力発電所の建設が発表された。

ドイツで顕在化するエネルギーの南北問題 再エネ発電は北部、工業地帯は南西部

IEA(国際エネルギー機関)によると、ドイツではほとんどの風力発電設備が北部に建設されているのに対し、電力需要は都市部や工業地帯のある南部と西部に集中していて、需給の不均衡が問題となっている。

北部では風力に加えて太陽光も急増したことで電力系統の混雑が深刻となり、需要地に送電できる量が大幅に減少した。一方で、その北部は突発的な再生可能エネルギーの供給過多に直面している。

この問題は本来、北部と南部をつなぐ系統を拡充すれば緩和に向かうが、南北高圧電線は反対運動が起きて費用のかさむ地下式への変更を余儀なくされた結果、建設が進んでいない。

こうした設備の課題に加えて、ドイツでは電力市場が地域で分かれていないという制度的な問題もあり、さらに2022年には南部と北西部における原子力発電所の商業運転を終了させる予定となっている。このほか、石炭火力も2038年までに全廃することが決まっている。

このようにドイツは将来的に原子力発電所と石炭火力発電所が減少に向かうなか、「北部の再生可能エネルギー過多」「南部の電力不足」「南北連携容量の不足」という3つの問題を今すぐ解決しなければならない状況にある。

さらに政府は総エネルギー・ミックスにおける再生可能エネルギーの比率を2030年までに65%にまで高める「エネルギー改革(Energiewende)」という長期政策を掲げている。したがって今後はさらに多くの再生可能エネルギー設備を受け入れなければならないという状況にあり、電力業界には系統崩壊の危機が迫っている。

ドイツ ベルンブルグの風力発電所
ドイツ ベルンブルグの風力発電所

系統安定化に大きく貢献するGEの航空機用ガスタービン火力発電所

そこでドイツの送電事業社Amprion、TransnetBWそしてTenneTの3社(旧西ドイツ地域の送電事業に相当)はそれぞれ系統安定化を目的とした300MWの発電所を建設することとなり、2022年10月までに運開することが決定している。これらは系統安定化だけのための発電所であり、つくった電力は消費されるために市場で売りに出されることはない。

時期や曜日や時間を問わず、いつでも迅速な立ち上がりや停止などに対応できるような過酷な使用条件が課せられる本プラントの主なスペックは、下記のとおりとなっている。

  • 稼働開始から30分以内に最大出力まで出せること
  • 38時間以上、連続して稼働できること
  • 12時間以内に再稼働が可能なこと
  • 年間あたり500時間以上、稼働が可能なこと
  • 2022年10月1日までに稼働を開始できること

そして前掲した3社のうちAmprionによる建設分をこのたびドイツ最大手の電力会社RWEが落札したが、そこは米複合産業大手ゼネラル・エレクトリック(GE)の新型火力発電所「LM2500XPRESS」を導入する世界で最初の事例となる。

このLM2500XPRESSではこれまで2,500基以上が販売され世界で最も信頼性が高いとされる航空機用ガスタービン「LM2500」を転用しているが、95%を完成させた状態で工場から出荷されるため、わずか20人の人員で13日間にて据え付けを完成させられる。さらに、このLM2500XPRESSは機器を接続すると自動的に認識され使えるようになるということを意味する「plug-and-play(プラグ・アンド・プレイ)」という思想で設計されており、接続箇所は従来のものと比べて80%も少なくなっている。ガスタービンはもちろん化石燃料だが、本件は古くから使われている火力に最新技術を活用して再生可能エネルギーの導入増に役立てる上でのよき事例となるであろう。

GE LM2500XPRESS power plant(CREDIT: GE)
GE LM2500XPRESS power plant(CREDIT: GE)

新しい火力技術は原発の再稼働が進まない日本でも活用が期待される

このLM2500XPRESS初号機はドイツとなったが、こうした系統安定化用ガス火力発電所は他国でも需要が見込めるし、もちろん日本でも活躍できるだろう。なぜなら日本ではこれまで揚水発電所が需給逼迫を解決する有効な手段として多く使われてきたが、その揚水発電所はあくまでも原子力発電所とセットで運用してこそ真価を発揮する。

というのも、出力の調整が難しい原発は需要が大幅に下がる深夜に供給過多となってしまうため、夜の電力を使って揚水発電所の水を汲み上げ、そして需給が逼迫する日中にそれを放出する、という使い方が一般的であった。

しかし福島第一原発事故の後は原発の再稼働が進まず、高コストの火力発電所でつくった電力などで揚水発電所の水を汲み上げざるを得なくなっている。そうなると経済性が大幅に悪化するため、原発が少ない時代には、こうしたLM2500XPRESSのような系統安定化用ガス火力発電所が大きな役割を担うことになるのではなかろうか。

GE LM2500XPRESSの紹介ビデオ

系統運用では依然として東西ドイツの溝

なお本件は当初、旧東ドイツ地域の送電事業を担う50Hertzも含めた4社のドイツ全体で進められていたが、最終的に50Hertzが外れて旧西ドイツ地域の3社だけとなった。1989年11月9日にベルリンの壁が崩壊してから既に31年が経過しているが、系統運用では依然として東西の溝が根深く残っている事も浮かび上がったと言えるかもしれない。

大野嘉久
大野嘉久

経済産業省、NEDO、総合電機メーカー、石油化学品メーカーなどを経て国連・世界銀行のエネルギー組織GVEPの日本代表となったのち、日本サスティナブル・エナジー株式会社 代表取締役、認定NPO法人 ファーストアクセス( http://www.hydro-net.org/ )理事長、一般財団法人 日本エネルギー経済研究所元客員研究員。東大院卒。

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