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再エネへの世界投資、スタートアップにも拡大 風力よりも太陽光に集中、公的支援も拡大が続く

2021年11月08日

民間からのVC支援は小幅減少もすそ野が広がる

民間からのエネルギー研究開発は2020年に2%減少した。これは新型コロナウイルスの影響と見られている。民間企業の収益が打撃を受けているからだ。それでも、予想よりも減少幅は少なかったという。


IEA World Energy Investment 2021より 民間の研究開発投資 セクター別

1億5千万ドルを超える大型案件を除くと、2012年から2018年までの水準を大きく上回る。さらにより小規模のVCを含めると2019年から17%急増している。IEAではこうした小規模の案件は「明確な短期的価値を持ち、多額の先行開発や資本を必要としない技術の提案は市場の創出と拡大のために非常に重要だ」としている。

2021年に入るとVCへの投資はさらに拡大している。米国・欧州のエネルギー貯蔵(バッテリー・ストレージ)と水素関連のスタートアップが拡大を牽引している。


IEA World Energy Investment 2021より ベンチャーへの研究開発投資

ベンチャー投資拡大の二つのトレンド

IEAの分析によると、こうしたベンチャーへの投資拡大には二つのトレンドがあるという。

ひとつは、クリーンテックは旧来のセクターの混乱から新しいテクノロジー自体が「資本の避難所」になっていること。テスラに投資が集まるのも新しいテクノロジーのためだ。

もうひとつは、(こちらがより重要だが)投資家は、実際にエネルギーシフトが起こっており、短期的には政府の積極的な政策と、企業の旺盛な需要が起こっていると確信しているためだ。

そして、「2020年はクリーンテック企業への投資の機運が高まった年として記憶されるだろう」という。こうした「リスク」ある新興企業の研究開発に資金が集まることは、脱炭素という新しい技術が必要な分野では非常に重要な進展になる。

2020年全体でのVC投資を見てみると、前半は落ち込んだが、後半は盛り返し、2021年もその上昇は続いている、ということになる。

そしてIEAは「企業のVCへの投資増大は、旧来システムへの支出削減とは相対的であり、クリーンテックのイノベーションが健全であることを示す兆候だ」としている。


IEA ブログ「Ten years of clean energy start-ups」より 先進国のベンチャー投資額 セクター・シード別

2010年のクリーンテックバブルとの違い

実は投資家には苦い思い出がある。2010年の「クリーンテックバブル」の思い出だ。石油価格が上昇し、2011年には1バレル110米ドルを超え、太陽光などの再エネ関連VCに資金が集まった。特に再エネを推し進めようとしたオバマ政権下のアメリカでこの「バブル」は起こった。

2010年の資金が集まったセクターは、太陽光、エネルギー効率の向上、バイオ、輸送分野が多かった。しかし、これらの技術開発には、当時の計画よりも時間と資金が必要だった。結果として、投資に対する十分なリターンはこのときは起こらなかった(このとき生き残った会社のひとつがテスラだ)。

2020年のクリーンテックへの投資は10年前と比較してさまざまな面で異なる、とIEAは2021年7月のブログで書いている。

2020年の投資対象は、輸送、重工業向けの電化、CCUS(炭素回収・貯留・利用)、水素、バイオに多く関連しているという。公的支援の増大とグローバル金融機関からの投資も当時との違いが表れているという。特に国際金融公社やUK Climate Investments、EU、米国などの投資法人は、インド、ミャンマー、アラブのスタートアップに投資している。こうした国境を越えた投資は、資金調達に力強さを与えている。

石油メジャーも再エネVCへの投資が広がっている

一方、大きな動きとして石油メジャーのクリーンテックへの投資もある。10月6日のロイターは、化石燃料からの脱却を加速させるため、石油メジャーがクリーンテックへ投資している例を紹介している。それによると、米国の油田サービス会社であるハリバートンはクリーンテック8社と協力して10万ドルの社内インキュベーションに投資している。イタリアの石油大手ENIも水素関連技術のスタートアップに資金支援を決めた。そうした例が多くなってきている。

記事の中でコンサルタント会社Value Scope社のマネージャーは、インキュベーターや新技術への投資は「リスクを分散するため」であり、新しい収益源を育てるためだとコメントしている。

世界が注目する一番資金が集まりそうな太陽光関連の新技術。日本の支援拡大も・・・次ページ

小森岳史
小森岳史

EnergyShift編集部 気候変動、環境活動、サステナビリティ、科学技術等を担当。

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