シリコンバレーのACES革命最前線   最終回 Connected ~ スマホのような自動車 ~ | EnergyShift

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シリコンバレーのACES革命最前線   最終回 Connected  ~ スマホのような自動車 ~

シリコンバレーのACES革命最前線   最終回 Connected ~ スマホのような自動車 ~

2020/03/09

自動車業界は大きく変わろうとしている。自動車大国アメリカでは、ACES(自動化(Automated)、接続(Connected)、電化(Electrified)、共有(Shared))と呼ばれるトレンドが社会を変えようとしている。最終回である今回は「Connected」に着目する。テスラの実車からコネクティッドの現在と可能性を、アークエルテクノロジーズの宮脇良二氏がリポートする。

コネクティッドの概念は広い

本連載の最終回では、「コネクティッド」について解説したい。コネクティッドの概念は広く、車がネットにつながるという事に加え、車同士がコミュニケーションする、車が信号等の道路設備とコミュニケーションするといった概念までイメージされて語られることが多い。現時点でのシリコンバレーでは、車自体のコネクティッドがイノベーションの中心である。

そして、そのイノベーションの最先端はテスラである。今回はテスラModel3の機能を解説する事で、コネクティッドの理解を深めていく。

日本仕様のテスラModel3(筆者撮影)

コネクティッドカーとは? −ソフトウェア中心か、ハードウェア中心か−

日本の自動車メーカーも各社コネクティッドサービスを出し、車とオンラインとのつながりを懸命にアピールしている。しかし、車自体のコネクティッド、つまりコネクティッドカーにはまだ遠い印象である。特に明確な定義はないものの、筆者の感覚では、コネクティッドカーか否かは車内のフロントディスプレイを見ればわかる。

(左)テスラModel3のフロントディスプレイ(右)日産リーフのフロントディスプレイ(筆者撮影)

一目瞭然であろう。テスラには余計なボタンがなく、すべてフロントタブレットの中に集約されているのに対し、日産リーフは普通のガソリン車以上に様々なボタンが並んでいる。

言い方を変えると、テスラはソフトウェア中心に車を作っているのに対し、日産はハードウェア中心に車を作っていることが良く分かる。重要な点は、ソフトウェア中心に作られた車は、スマホのように頻繁にその機能をアップデートすることが可能となるということだ。

テスラは驚くほど多くの機能がタブレットの中に格納されており、例えば、ワイパーの設定やミラーの設定などもタブレットから制御する。ソフトウェアアップデートにより、ワイパー設定の方法が自動車購入後に変わったりするのである。これがコネクティッドカーなのである。

(左)トランクと充電口の開け閉め画面 (右)ミラーやハンドルの設定画面(筆者撮影)

間違いなく、ハードウェア中心に作られている車に長年乗っている人間が、テスラに乗ると戸惑う。多くのドライバーが、運転中にタブレットをいじるのは危ないと感じるだろう。だが、乗りはじめて少し時間が経つと、こちらの方が分かりやすくていいと感じ出すのだ。そう、ガラケーからスマホになり、そちらの方が良くなっていたのと同じ感覚だ。

とにかく便利なのは、ナビが常に最新化されているということである。昨今、多くのドライバーが自分の車のナビと並行してスマホのグーグルマップを立ち上げて運転しているが、そういったことはテスラでは必要ない。ナビの行き先設定は音声認識で行う。これがコネクティッドなのだ。

ソフトウェアアップデート:OTA(Over the Air)

コネクティッドカー最大の特徴はOTAにあるといってもいいだろう。OTA(Over the Air)とはソフトウェアの更新を通信経由で行う技術で、スマートフォンのOSやアプリのアップデートに用いられている。テスラも同様であり、適宜ソフトウェアのマイナーアップデートが繰り返され、機能改善や追加が行われる。

アップデートはオートパイロットや自動駐車のような、自動車の機能に関わるものから、ゲームのようなエンターテイメントまで、あらゆる機能で行われ、常に車が最新化されていくのである。

ソフトウェアアップデートの画面 (筆者撮影)

少し前の話題として、テスラの創業者であるイーロンマスクのツイッターに、ユーザーが「エアコンをつけて買い物中に犬を車の中においておく際に、ちゃんとエアコンをつけている事を表示しておきたい」という内容をツイートしたことがある。

アメリカでは、熱中症等から犬を保護する理由で、犬が置いてきぼりにされていると窓ガラスを割るといった事がある。それを避ける機能がないか、という要望であったが、要望を受けたテスラはすぐにソフトウェアアップデートを行い、「ドッグモード」という簡単な機能が追加された。シンプルな機能であるものの、こういったユーザーの要望を素早く取り入れる対応の良さが、テスラの魅力を高めていることは間違いない。

話題のドッグモード(筆者撮影)

スマホによる管理はスマートホームの車版

コネクティッドカーは、当然のことながらスマートフォンともしっかり連動している。車の位置や充電状態を確認することはもちろん車内の温度や鍵の管理までモバイルから可能である。つまり、スマートホームの車版なのである。
専用アプリなので通知機能がついており、スーパーチャージャーで充電している時などは、充電終了前に通知してくれるので、とても助かる。

テスラのスマホアプリの画面 (筆者撮影)

簡単ではあるが、以上がテスラModel3のコネクティッド機能に関する解説だ。コネクティッドカーの雰囲気を掴んで頂いたのではないだろうか。一度、是非乗車いただき、これらの機能を体で感じていただくことを強くオススメする。

自動車はネクスト・イノベーションの中心になる

これで4回にわたるシリコンバレーにおけるACESの解説を終了したい。
日本にいてはなかなか感じないが、シリコンバレーにいると自動車が次のイノベーションの中心になる事を日々感じる。と同時に、日本の基幹産業である自動車産業に対する危機感を強く持つ。

筆者は今、中国の深圳を中心に中国における自動車の進化を追っているが、中国の自動車の進化も目を見張るものがある。中国のほとんどの自動車メーカーがEVを製造し、自動運転やコネクティッドに挑戦している。ライドシェアはすでに日常である。

イノベーションのジレンマに陥っている日本の自動車産業が、見事にその地位を継続・拡大する事を祈りつつ、本稿を締めたい。これまでお読み頂き、ありがとうございました。

宮脇良二
宮脇良二

一橋大学大学院国際企業戦略研究科修了。アクセンチュア株式会社(1998年4月-2018年6月)、1998年4月アンダーセンコンサルティング入社(現アクセンチュア)。2009年9月パートナーに昇進(現マネジングディレクター)し、2010年9月電力・ガス事業部門統括に就任。 アークエルテクノロジーズ株式会社を2018年8月、代表取締役として立ち上げる。九州・アジア経営塾指導パートナー(2011年〜現在)、スタンフォード大学客員研究員(2018年9月〜)。電力・ガス、新電力、エネルギー関連テクノロジー企業、スマートシティ関連企業を中心に活動を広げる。専門はIT・デジタル戦略、営業・マーケティング戦略、組織風土改革、大規模プロジェクトマネジメント。

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