日本では、固定価格買い取り制度(FIT)の支援のもと、バイオマス発電の普及拡大を目指しており、2020年3月時点で500万kWが稼働済みだ。政府は2030年のCO246%削減の実現に向け、バイオマス発電を800万kWまで増やす方針を掲げている。
だが、燃料高騰のあおりを受け、パーム油を燃料としたバイオマス発電所が今春よりすべて稼働休止に追い込まれており、燃料調達の持続可能性すら危ぶまれるバイオマス発電への疑念は深まりつつある。
稼働を休止したのは8発電所で、合計出力は13万5,460kW。旅行大手のHISグループのHIS SUPER電力は、今年1月に稼働を開始したHIS角田バイオマスパーク(宮城県、出力4万1,100kW)を運転開始後まもなく停止した。また、茨城県にバイオマス発電所2ヶ所(合計出力約3.7万kW)を保有する新電力のエナリスなども稼働停止に追い込まれている。
燃料のパーム油は主にマレーシア産だ。だが、大豆や菜種油含めた食用油の需要が世界各地で急増する一方、新型コロナウイルスの感染拡大により、マレーシアの農業労働力が不足した結果、需給がひっ迫。パーム油価格は2020年10月に800米ドルを超え、現在は1,200米ドル以上にまで急騰。2017年時点と比較して値上がり率は150%に達した。
マレーシアのパーム油の輸入価格推移
出典:環境・エネルギー事業支援協会(旧バイオマス発電協会)
燃料価格の高騰を受け、FITに基づく売電価格では採算が合わず、HISは2021年10月期の第3四半期決算において、約80億円の営業損失を抱えた。
燃料価格の高騰影響を受けるのは、パーム油だけではない。
木質バイオマス発電も、コロナ禍で輸入木材が不足し、木材全体の価格が高騰する「ウッドショック」の影響を受ける。木質バイオマスの業界団体である日本木質バイオマスエネルギー協会は、「建築用材のような極端な値上がりは想定していないが、予断を許さない状況」だという。
輸入燃料に依存する限り、輸送に伴うCO2は増え続ける・・・次ページ
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